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アケボノ
ルスツ⑭
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『うおおおおぉぉぉ!すっげえええぇぇぇぇ!』
俺たちを乗せたゴンドラは上に上がっていく。その度に見える景色は変わっていき、そして言葉では表しきれないほどの絶景になっていた。足元には真っ白い世界が広がっていて、スキー客もたまにいる程度。後ろを見たらそびえる羊蹄山と澄んだ空のコラボ。
ゴンドラ内では写真の撮影会が始まっている。
「賀屋、こっちヤバいぞ。」
「どんなん?うお!すっげえ!」
「カレンもこっち見ろって。」
「ちょっと待て…こっち見ろ!はいチーズ!」
カレンが自撮り棒を伸ばして、俺たちがその画角に収まる。傷だらけになった窓から少し覗く羊蹄山をバックに俺たちは写真を撮った。
「由良は今日はスマホ持ってきてるんだな。」
「天気予報見とったら今日は晴れやったから。これは撮らなあかんやろ。あと昨日あんなこと言ってたし。」
俺の頭の中に蘇るのは昨日のイントラの人の言葉。
(あれよりもすごい景色って、これ以上?)
目の前の景色を超えるものを俺は知らない。けど、このゴンドラに乗る人があんなにいるってことは、相当な景色があるってことだ。
「終点見えてきたで。」
白野のその言葉でスマホを直し始める。そして外していたヘルメットやその他諸々を装着して出る準備をする。
ゴンドラから降りると気圧の差を肌で感じた。
「こっちこーい!」
そう言うイントラの人について行くと、そこには今までの絶景の概念が崩れてしまうほどの風景があった。
「………」
誰も何も言わない。が、板をそこにおいて、ストックを雪に突き刺して、手袋を置き、ポケットからスマホを取り出していた。
ちなみにスキー中にスマホを使うのはルールで禁止されている。だから、一応はホテルに置いてきておくことになっている。
でも、そんなルールがあるのに、先生がいないことの確認をせず、スマホを取り出していた。
「俺、今スマホバレてもいいわ。本望や。」
『それな!』
カレンのその言葉に全員が同意した。そしてあちこちに走り回って、写真を撮る。電波塔をバックにした羊蹄山や、崖ギリギリに立って綺麗に見える洞爺湖。澄んだ空。樹氷。そして、
「集合写真撮ろうや。スキー1班の集合写真。」
「ええなそれ。」
「イントラの人にも入ってもらお。」
賀屋が走ってイントラの人を呼びに行って、画角を決める。やはりこれは羊蹄山バックだろう。
「連れてきたで。」
しばらくすると賀屋が帰ってきて、後ろにイントラの人を連れていた。
「誰のスマホで撮る?」
「やっぱり一番画質良い奴のやろ。」
「じゃあ俺のやな。」
疋田が手を挙げるその手に握りしめられていたのは、最近発売されたばっかのスマホだった。
「それで撮ろ。誰か撮ってくれそうな人…Excuse me?Could you please take a photo of us?」
カレンが近くにいた外国人のお兄さんに話しかける。すると撮ってくれるようで、スマホを渡してこっちに戻ってきた。
「ジャアトリマスネー。ハイチーズ!」
微かなシャッター音が聞こえ、そしてお兄さんは手でOKを作った。
『Thank you!』
「Your welcome!」
スマホをカレンに返すと、お兄さんは近くにいたグループの人の所に滑っていった。
「後で送ってな。」
「俺もよろ!」
「頼んだで。」
俺たちももうそろそろ行かないといけない。またここには戻ってくることになるだろうから、また撮ろう。
俺たちを乗せたゴンドラは上に上がっていく。その度に見える景色は変わっていき、そして言葉では表しきれないほどの絶景になっていた。足元には真っ白い世界が広がっていて、スキー客もたまにいる程度。後ろを見たらそびえる羊蹄山と澄んだ空のコラボ。
ゴンドラ内では写真の撮影会が始まっている。
「賀屋、こっちヤバいぞ。」
「どんなん?うお!すっげえ!」
「カレンもこっち見ろって。」
「ちょっと待て…こっち見ろ!はいチーズ!」
カレンが自撮り棒を伸ばして、俺たちがその画角に収まる。傷だらけになった窓から少し覗く羊蹄山をバックに俺たちは写真を撮った。
「由良は今日はスマホ持ってきてるんだな。」
「天気予報見とったら今日は晴れやったから。これは撮らなあかんやろ。あと昨日あんなこと言ってたし。」
俺の頭の中に蘇るのは昨日のイントラの人の言葉。
(あれよりもすごい景色って、これ以上?)
目の前の景色を超えるものを俺は知らない。けど、このゴンドラに乗る人があんなにいるってことは、相当な景色があるってことだ。
「終点見えてきたで。」
白野のその言葉でスマホを直し始める。そして外していたヘルメットやその他諸々を装着して出る準備をする。
ゴンドラから降りると気圧の差を肌で感じた。
「こっちこーい!」
そう言うイントラの人について行くと、そこには今までの絶景の概念が崩れてしまうほどの風景があった。
「………」
誰も何も言わない。が、板をそこにおいて、ストックを雪に突き刺して、手袋を置き、ポケットからスマホを取り出していた。
ちなみにスキー中にスマホを使うのはルールで禁止されている。だから、一応はホテルに置いてきておくことになっている。
でも、そんなルールがあるのに、先生がいないことの確認をせず、スマホを取り出していた。
「俺、今スマホバレてもいいわ。本望や。」
『それな!』
カレンのその言葉に全員が同意した。そしてあちこちに走り回って、写真を撮る。電波塔をバックにした羊蹄山や、崖ギリギリに立って綺麗に見える洞爺湖。澄んだ空。樹氷。そして、
「集合写真撮ろうや。スキー1班の集合写真。」
「ええなそれ。」
「イントラの人にも入ってもらお。」
賀屋が走ってイントラの人を呼びに行って、画角を決める。やはりこれは羊蹄山バックだろう。
「連れてきたで。」
しばらくすると賀屋が帰ってきて、後ろにイントラの人を連れていた。
「誰のスマホで撮る?」
「やっぱり一番画質良い奴のやろ。」
「じゃあ俺のやな。」
疋田が手を挙げるその手に握りしめられていたのは、最近発売されたばっかのスマホだった。
「それで撮ろ。誰か撮ってくれそうな人…Excuse me?Could you please take a photo of us?」
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微かなシャッター音が聞こえ、そしてお兄さんは手でOKを作った。
『Thank you!』
「Your welcome!」
スマホをカレンに返すと、お兄さんは近くにいたグループの人の所に滑っていった。
「後で送ってな。」
「俺もよろ!」
「頼んだで。」
俺たちももうそろそろ行かないといけない。またここには戻ってくることになるだろうから、また撮ろう。
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