鬼の心臓は闇夜に疼く

藤波璃久

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少年は桃太郎と対峙する14(過去編①)

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「朱丸!」
「小太郎?」
朱丸は、山菜を採っていた。
「どうしたの? まだ待ち合わせの時間じゃないよね?」
「大変だ! 桃太郎の子孫って人が来た」
「え⁉︎」
「どうする?」
朱丸は頭を抱えた。
「どうしよう…そうだ。みんなに知らせなきゃ!」
朱丸は自分の村の方へ走り出す。小太郎も後を追った。

霧に包まれた森にたどり着いたところで、突然目の前に長身の美女が現れた。彼女は軍服を着ていた。小太郎はいやな予感がした。
彼女は、朱丸を捕まえた。
「桃寿郎様、捕まえました」
小太郎の後ろから現れた、吉備津桃寿郎。
「よくやったね。椿…」
「はい!」
椿は褒められて、嬉しそうに頬を染めた。
「やだ! 離して!」
「朱丸を離せ!」
小太郎は、椿に向かっていく。
「動くな…」
桃寿郎は抜いた刀を、朱丸に向けた。
「…っ」
小太郎は足を止める。桃寿郎は、朱丸の腕をつかむと、その首筋に刀をあてた。
「ヒッ!」
「朱丸…」
「椿、その子どもを拘束して」
「はっ!」
小太郎は逃げようとするが、椿に捕まった。
「ふむ…」
桃寿郎は、一度刀をしまうと、朱丸の体をガッチリ捕まえたまま、頭や、口の中を触る。
「ん!」
朱丸が嫌そうに首を振った。
「角と牙…小さいけれど、あるね。君は鬼だ」
「やめて…」
「僕はね、鬼を退治しに来たんだ」
桃寿郎は、刀を持ち直す。そして、再び首筋にあてた。
小太郎は唾を飲む。
「あ、あんたはさ、この村にずっといたの?」
「桃寿郎様にむかって、あんたとはなんだ?」
「…う」
椿が拘束を強くし、小太郎は小さく呻く。
「いいよ椿。そんなに強くしたらかわいそうだ。そうだね。僕は東京にいたよ。この村の二つ隣の村に、椿がいた。ここら辺の山に昔鬼がいて、僕の先祖が一部逃がしたらしくてね。定期的に僕の部下を置いていたんだ。で、椿から、鬼らしき子どもがいるって報告受けて、僕が来たってわけ」
桃寿郎が一気に話す。
「大変だったよ。東京からここまでさ…」
疲れたように息を吐いた。
「そ…それで…オイラ…殺す…?」
朱丸が震えた。
「殺さないよ…だって殺したらさ…鬼の村の場所、わからなくなっちゃうでしょ?」
さも、当然というように言い切る。
「それでさ。村…どこにあるの?」
「村なんて…ないよ…。オ、オイラは一人で暮らしてる」
「いや、村はあるはずだ…」
朱丸は、チラッと目を動かす。その方向には、村へ通じるあの木がある。
「なるほど、そっちか」
「⁉︎」
朱丸は「なんで?」という顔をした。
桃寿郎は、刀をあてながら、そちらに歩くように促す。朱丸は渋々指示に従う。
霧の中、大木のウロを見つけた桃寿郎は、嬉々として尋ねた。
「ここか? 結界があるんでしょう?」
朱丸は、首を横に振る。
「ねえ…君さ…あの子、友達でしょ? 痛い目に合わせたくないよね?」
「…小太郎に、何かするの?」
「あの子、小太郎っていうんだ…」
「オイラは、殺されてもいい。でも、家族や小太郎は…」
「へー。小さいのに、覚悟決めてるんだね。でもさ…」
桃寿郎は、後ろを振り向く。椿に拘束された小太郎が見える。
「ねえ…椿…。この子意外に頑固だよ。小太郎くんさ、少しいじめてやって」
「御意」
「何を⁉︎」
朱丸が叫ぶと、小太郎の声が聞こえた。
「…がっ! ぐ…!」
よく見ると、椿の腕が小太郎の首に食い込んでいる。腕を外そうと爪を椿の腕に立てていた。血が滲む。
「…あ…ぐ…」
「やめて! 結界の中に入るから! 小太郎を離してよ!」
朱丸が泣き叫ぶ。桃寿郎は、笑みを浮かべた。
小太郎は解放されると、大きく咳き込んだ。ぐったりとして、椿に寄りかかっている。
「小太郎…」
「ほら、早く…」
桃寿郎に促され、朱丸は結界に足を運んだ。
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