24 / 59
少年は桃太郎と対峙する15(過去編①)
しおりを挟む
朱丸が村へ入ると、母がいた。
「お帰…⁉︎」
母が朱丸の後ろの男を見て驚愕に震える。
「母…ちゃ…ごめ…なさ…」
首に刀をあてられたまま、涙を浮かべた朱丸。
この男が、桃太郎の子孫で、朱丸を脅し、結界の中に入ったのだと、母は一瞬で理解した。
「あ、朱丸…」
「逃げてみんな! 早く逃げ…」
桃寿郎は、叫ぶ朱丸を突き飛ばした。地面に転がって、顔を上げた時には、桃寿郎が母へ刀をふりかざす所だった。
「母ちゃん!」
刀が母の体を切り裂き、倒れていく。母は苦しそうに呻く。
「その…刀…」
「気が付いた? 破鬼の剣と言って、かつて桃太郎が使っていた刀だ。普通の刀で斬っても、鬼はすぐに治ってしまう。でも、この刀は鬼を退治する特別なものでね。例え致命傷じゃなくても、その傷は長い間ジクジクと痛み、熱を生み苦しみを与える。
ふふ…苦しそうだね。今楽にしてあげるよ」
「母ちゃん!」
朱丸が、母の元へ行こうとする。
「逃げなさい!」
鬼気迫る叫びに、ビクッとたじろぐ。
桃寿郎が母にとどめを刺し、動かなくなった。
「あ…ああ…」
朱丸は力が抜け、へたり込んだ。
逃げまどう村人たち。桃寿郎は、あっという間に鬼たちを殺した。
最後に朱丸の方に逃げてくる、年老いた鬼。村長だった。
「爺ちゃん!」
「朱丸、これを…」
祖父が差し出したのは、あの黒い石だった。
「後悔…しないように…な」
そう言うと、祖父は倒れた。背中には、刀傷があった。
「爺ちゃん! 死なないで! 爺ちゃん!」
祖父はすでに、息をしていなかった。
「最後は君だけだね」
桃寿郎は、朱丸に刀を突き付ける。
「ここまで案内してくれたお礼に、殺すのは最後にしてあげようと思ったんだけど、余計なお世話だったかな?」
「みんな…死んだ…の?」
「そうだね。ここ百年、鬼の目撃情報がなかった。きっとこの村が最後の鬼の村だ。だから、君が最後の生き残りだよ」
桃寿郎はニコリと笑った。
「君を倒せば、桃太郎一族の使命も終わりさ」
油断している桃寿郎は、朱丸を捕らえてはいなかった。隙をみて走りだし、村の入り口、結界のある大木のウロに向かって叫ぶ。
「小太郎助けて! 小太郎‼︎」
「お帰…⁉︎」
母が朱丸の後ろの男を見て驚愕に震える。
「母…ちゃ…ごめ…なさ…」
首に刀をあてられたまま、涙を浮かべた朱丸。
この男が、桃太郎の子孫で、朱丸を脅し、結界の中に入ったのだと、母は一瞬で理解した。
「あ、朱丸…」
「逃げてみんな! 早く逃げ…」
桃寿郎は、叫ぶ朱丸を突き飛ばした。地面に転がって、顔を上げた時には、桃寿郎が母へ刀をふりかざす所だった。
「母ちゃん!」
刀が母の体を切り裂き、倒れていく。母は苦しそうに呻く。
「その…刀…」
「気が付いた? 破鬼の剣と言って、かつて桃太郎が使っていた刀だ。普通の刀で斬っても、鬼はすぐに治ってしまう。でも、この刀は鬼を退治する特別なものでね。例え致命傷じゃなくても、その傷は長い間ジクジクと痛み、熱を生み苦しみを与える。
ふふ…苦しそうだね。今楽にしてあげるよ」
「母ちゃん!」
朱丸が、母の元へ行こうとする。
「逃げなさい!」
鬼気迫る叫びに、ビクッとたじろぐ。
桃寿郎が母にとどめを刺し、動かなくなった。
「あ…ああ…」
朱丸は力が抜け、へたり込んだ。
逃げまどう村人たち。桃寿郎は、あっという間に鬼たちを殺した。
最後に朱丸の方に逃げてくる、年老いた鬼。村長だった。
「爺ちゃん!」
「朱丸、これを…」
祖父が差し出したのは、あの黒い石だった。
「後悔…しないように…な」
そう言うと、祖父は倒れた。背中には、刀傷があった。
「爺ちゃん! 死なないで! 爺ちゃん!」
祖父はすでに、息をしていなかった。
「最後は君だけだね」
桃寿郎は、朱丸に刀を突き付ける。
「ここまで案内してくれたお礼に、殺すのは最後にしてあげようと思ったんだけど、余計なお世話だったかな?」
「みんな…死んだ…の?」
「そうだね。ここ百年、鬼の目撃情報がなかった。きっとこの村が最後の鬼の村だ。だから、君が最後の生き残りだよ」
桃寿郎はニコリと笑った。
「君を倒せば、桃太郎一族の使命も終わりさ」
油断している桃寿郎は、朱丸を捕らえてはいなかった。隙をみて走りだし、村の入り口、結界のある大木のウロに向かって叫ぶ。
「小太郎助けて! 小太郎‼︎」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
Hip Trap Network[ヒップ トラップ ネットワーク]~楽園23~
志賀雅基
キャラ文芸
◆流行りに敏感なのは悪くない/喩え真っ先に罠に掛かっても◆
惑星警察刑事×テラ連邦軍別室員シリーズPart23[全64話]
ボディジェムなる腕に宝石を埋めるファッションが流行。同時に完全電子マネー社会で偽クレジットが横行する。そこで片腕を奪われる連続殺人が発生、犯人はボディジェムが目的で腕を奪ったと推測したシドとハイファ。予測は的中し『ジェム付属の素子が偽クレジットの要因』とした別室命令で二人は他星系に飛ぶ。そこは巨大な一企業が全てを支配する社会だった。
▼▼▼
【シリーズ中、何処からでもどうぞ】
【全性別対応/BL特有シーンはストーリーに支障なく回避可能です】
【ノベルアップ+にR無指定版/エブリスタにR15版を掲載】
後宮物語〜身代わり宮女は皇帝に溺愛されます⁉︎〜
菰野るり
キャラ文芸
寵愛なんていりません!身代わり宮女は3食昼寝付きで勉強がしたい。
私は北峰で商家を営む白(パイ)家の長女雲泪(ユンルイ)
白(パイ)家第一夫人だった母は私が小さい頃に亡くなり、家では第二夫人の娘である璃華(リーファ)だけが可愛がられている。
妹の後宮入りの用意する為に、両親は金持ちの薬屋へ第五夫人の縁談を準備した。爺さんに嫁ぐ為に生まれてきたんじゃない!逃げ出そうとする私が出会ったのは、後宮入りする予定の御令嬢が逃亡してしまい責任をとって首を吊る直前の宦官だった。
利害が一致したので、わたくし銀蓮(インリェン)として後宮入りをいたします。
雲泪(ユンレイ)の物語は完結しました。続きのお話は、堯舜(ヤオシュン)の物語として別に連載を始めます。近日中に始めますので、是非、お気に入りに登録いただき読みにきてください。お願いします。
未熟な蕾ですが
黒蝶
キャラ文芸
持ち主から不要だと捨てられてしまった式神は、世界を呪うほどの憎悪を抱えていた。
そんなところに現れたのは、とてつもない霊力を持った少女。
これは、拾われた式神と潜在能力に気づいていない少女の話。
…そして、ふたりを取り巻く人々の話。
※この作品は『夜紅の憲兵姫』シリーズの一部になりますが、こちら単体でもお楽しみいただけると思います。
戸惑いの神嫁と花舞う約束 呪い子の幸せな嫁入り
響 蒼華
キャラ文芸
四方を海に囲まれた国・花綵。
長らく閉じられていた国は動乱を経て開かれ、新しき時代を迎えていた。
特権を持つ名家はそれぞれに異能を持ち、特に帝に仕える四つの家は『四家』と称され畏怖されていた。
名家の一つ・玖瑶家。
長女でありながら異能を持たない為に、不遇のうちに暮らしていた紗依。
異母妹やその母親に虐げられながらも、自分の為に全てを失った母を守り、必死に耐えていた。
かつて小さな不思議な友と交わした約束を密かな支えと思い暮らしていた紗依の日々を変えたのは、突然の縁談だった。
『神無し』と忌まれる名家・北家の当主から、ご長女を『神嫁』として貰い受けたい、という申し出。
父達の思惑により、表向き長女としていた異母妹の代わりに紗依が嫁ぐこととなる。
一人向かった北家にて、紗依は彼女の運命と『再会』することになる……。
漫研部室の片隅でオタク二人がまったり雑談する話
こっこ
キャラ文芸
タイトルの通りです。それ以上でもそれ以下でもないです。
オタクしながら世界救ったりしません。
でも悩んでる同士を救ったりはするかもしれないです。
ようこそロケットベーカリーへ 〜殺し屋パン屋おじさん、初めての恋をする〜
ハマハマ
キャラ文芸
地方都市の片隅、駅前商店街の端っこにロケットベーカリーという名のパン屋があったとさ。
そこの店主はパン作りの腕は可もなく不可もなく、しかしその実態は凄腕の殺し屋なのだ。
そんな彼が生まれて初めて恋をした。
彼女に恋焦がれながらもパンを焼き、そして淡々と殺し屋稼業も継続中。
彼の恋は実るのか。はたまた実らないのか。
どうぞ温かく見守ってやってくださいませ。
※作者はパン屋も殺し屋も未経験。おかしな描写があっても温かいキモチで見守ってやって下さいな。
※さらにサブタイが英語なんですけど英語めちゃくちゃ苦手なんでこちらも温かいキモチでお願いします。
ほたる祭りと2人の怪奇
飴之ゆう
キャラ文芸
竜木野螢と雨瀬信乃は辰野の「ほたる祭り」に参加するため電車で向かっていた。しかし、着いたそこは夕暮れの町、『幽明ヶ原』だった。そこは行き場を失くしたモノ達の"最期の場所"で──。2人は無事、夕暮れの町から脱出することが出来るのか!?
この物語はフィクションです。実在するものを舞台として執筆していますが、実在の人物・団体・組織などとは関係ありません。
合作です。
作 まほら
絵、校正 飴之ゆう(めゆ)
数年前に作成した冊子を再編集したものです。
誤字脱字などありましたら報告いただけると嬉しいです。
その他何かございましたら投稿者(飴之ゆう)まで。
全話編集済み。予約投稿で投稿していきます。
2022年1月9日 完結いたしました。
九尾の狐に嫁入りします~妖狐様は取り換えられた花嫁を溺愛する~
束原ミヤコ
キャラ文芸
八十神薫子(やそがみかおるこ)は、帝都守護職についている鎮守の神と呼ばれる、神の血を引く家に巫女を捧げる八十神家にうまれた。
八十神家にうまれる女は、神癒(しんゆ)――鎮守の神の法力を回復させたり、増大させたりする力を持つ。
けれど薫子はうまれつきそれを持たず、八十神家では役立たずとして、使用人として家に置いて貰っていた。
ある日、鎮守の神の一人である玉藻家の当主、玉藻由良(たまもゆら)から、神癒の巫女を嫁に欲しいという手紙が八十神家に届く。
神癒の力を持つ薫子の妹、咲子は、玉藻由良はいつも仮面を被っており、その顔は仕事中に焼け爛れて無残な化け物のようになっていると、泣いて嫌がる。
薫子は父上に言いつけられて、玉藻の元へと嫁ぐことになる。
何の力も持たないのに、嘘をつくように言われて。
鎮守の神を騙すなど、神を謀るのと同じ。
とてもそんなことはできないと怯えながら玉藻の元へ嫁いだ薫子を、玉藻は「よくきた、俺の花嫁」といって、とても優しく扱ってくれて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる