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メーレンスの旅 王都周辺
第七十七話 センの森、帰還
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「ハァーーーー」
「うるさいぞ」
「だってー」
「ワッハッハ! ワシぁ気にしとらんぞ!」
翌朝。
野営地の撤収作業をしながら盛大にため息をつくヴァルハイト。
「いつも上手くいくとは限らない。冒険者たるもの、それぐらい心得ているだろう」
「まぁねぇ~」
結果、僕たちの涙草採取は問題なく行えたものの。
エドの欲した、水属性の鱗。それを持つ魔物は見付けることが出来なかった。
夜間も特に魔物に襲撃されることなく、各々がしっかりと休めてしまったのだ。
……いや、それ自体はよいことなのだが。
「やはり、懸念したとおり。好戦的な魔物が魔術により東の森へと転移したわけだな」
「まぁ、呪術かけられたポーションを運んでた人、襲うくらいだしね~」
「確かに臆病な魔物を喚んだところで戦力にはなるまい。……考えられているな」
「ちょっと~、感心してる場合じゃないでしょー?」
「っあぁ、すまない」
「ルカ坊は理屈っぽいのぉ」
「癖のようなものだ、気にしないでくれ」
「実は、素直じゃないだけなんだよね~」
「~っ、うるさいぞ」
理屈っぽい……か。なるほど。深く思考することは僕にとっては極々当たり前なのだが、前にヴァルハイトにも言われたように、そういう捉え方もあるのだな。
「まー、それがルカ坊じゃからのぉ」
「たしかに!」
「……何なんだ?」
程々にしておけ、ということだろうか。
僕も二人も、手を動かしながら会話する。
「商業ギルドに寄った方がイイかなー?」
「ふむ……、それも一つの手だな」
冒険者ギルドに持ち込み売られた魔物の素材は、一般の者には商業ギルドを通して流通することだろう。
掃討作戦の時は騎士団がまとめて回収していたし、彼らが持ち込んだのだろうが。
買取の代金は、予算に充てられるのだろうか?
「いや、ワシぁ自分で素材を獲るのもまた一興。そう思って来てみただけじゃ。
メーレンスに来た目的、というほどでもない。また、帰りにでも寄ってみようかの」
「あ、そっか。帰りの方が時間あるし」
「それもそうだな」
水神祭の前に水瓶の様子を見に来たのであれば、自身の用事で寄り道するには期限がある。
が、帰路であれば期限もない。その方が効率的だ。
「……にしても、ルカ坊は魔導門の通行資格はないのかの?
融通を利かせてもらえると、ありがたいんじゃが」
「すまない。僕は、実子ではないんだ」
「! そうじゃったか」
「メーレンスだと、どこに門があるの?」
「王都を中心に東のグランツ領と、南に位置する領の三つだな」
「ほぉほぉ」
過去、今の魔法という概念が確立される前。
魔術師たちはその魔力を多人数で使用する『魔術』という方法を好んで用いた。
その時代の産物である、魔導門。地脈を活用した魔術と言われている。
世界には精霊達の残した魔力が、まるで水脈のように流れる『地脈』があるとされた。
地脈胎動説、受動説、……色々な論調があり、どれが正しいのかは未だ分かっていない。
なぜなら、レヴィ・ファーラントらが活躍した時代。二百年とも三百年前とも言われる時代に、地脈ではなく元々人が持つ魔力を活用した魔法を主流とするよう要請したからだ。
それ以前を記した書物はあったとしても国が厳重に保管し目にする機会はほとんど無く。
リューゲン達の様に、熱心な魔術師たちの間で議論されるばかりだ。
精霊という存在は、伝説上のもの。後世の魔術師にとって、彼らの魔力である地脈もまた、伝説的なもの。
現在では、世界に満ちる魔力は植物や嵐、雷や雨といった自然現象として目にするばかりで、僕たちがその力を借り受けることは無いと考えられている。
土魔法で大地を操る、水魔法で渦を作る、など物体を操作する際は世界の魔力にこちらから干渉しているとされる。
つまるところ、現代においては魔導門の原理はよく分かっていないが、とある血筋にしか反応せず。多くの魔力──具体的には四属性を備えないと発動しないもの、という認識だ。
(……?)
そう言えば、エルダードワーフやハイエルフ? たちのような長寿の種族。彼らの、エド以上に時を重ねた者なら、昔の出来事を知っているのではないだろうか。
「まー、あれって国内を繋ぐだけで、国境はまたげないからね~」
「その方が無難じゃろ。今後、戦になることがあれば……悪い使い方を企む輩もいないとは限らんしのぉ。なぁ、ルカ坊?」
「──そっ、そうだな」
いかん。また考え込んだか。
「大国が築かれた時から続く血脈と、それに近い一族。彼らにしか資格はない。
まぁ、仮に国外へ転移出来たとしても……国内の用事以外で使用するのは稀だっただろうな」
「ってぇことはアレだよな。昔、争いがあったとしたらそれを使って脱出した……とかか?」
「かもね~」
「現代であれば、魔術の利用も推奨していないからな。
義父上や王が、主要の領と王都を行き来する際……ぐらいだろうか」
呪術とは違い、民に全く影響のない安全な魔術なため、使用することへの反発はないようだが。
「まぁ、その方が安全だよねー」
「しかし今回の件で、王都において起動する魔術師──王宮魔術師に翼の会の思想が見られた。
……王都側からはしばらく飛べまい」
恐らく義父上も帰りは陸路だっただろうな。
「たいへんだね~」
「お前が言うな……」
命を狙われた点では、こいつもそう大差ないのではないのか?
気が抜けているというのか、度胸があるというのか。相変わらず変わった奴だ。
「お前さんらもグランツ領に行くんかの?」
「そうだな。王都に次ぐ主要な都市、風光明媚な領。
メーレンスといえば、グランツ領……と言う者もいるくらいだからな」
「ルカちゃんが言うには北東? から回って行こうかと思って」
「ゾルテッツォの麓辺りかの。あそこもまた、よいところじゃな」
「しかしエドが直接領都に行くのであれば……」
「オレたちも一緒に行きたーい!」
「ふむ」
やはりというか、ヴァルハイトも考えは同じのようだ。
まぁ、こいつは炎が綺麗? と思うくらいだ。同じ火属性を持つ者への興味だろうか。
僕も、人間以外の種族やドワーフの王とやらの特性、冒険者として鍛冶師への興味。
エド自身に多くの興味深い点がある。
であれば、まだ行動を共にしたいと思うのが自然だ。
「ほーー? ワシぁ嬉しいが……いいんかの?」
「せっかくの縁だ。それに、エドからは学びを得ることが多くある」
「旅は道連れ!」
「うるさいぞ」
「ワシぁこの後は馬車で街道沿いを行くつもりじゃから、お前さんらにとって面白みに欠けるかもしれんが」
僕たちだけであれば風の魔道具の力を借りて走ることも考えたが、さすがに止めておいた方がいいだろう。
「構わない。冒険者とはいえ、いつもダンジョンに向かう訳ではないからな。それに、……こいつにとってはどこも目新しい」
「そういえばメーレンスに来る前は、ルーシェントにいたと言っておったかの」
「そー!」
「うぅむ、ならば……領都まで同行願おうかのぉ!」
「ヤッター!」
「改めて、よろしく頼む」
当初ソロでの冒険者生活を思い描いていたはずが、何やら賑やかなものとなってきた。
まぁ……魔法に関する、興味深い事例を持つ者ばかりであるから、問題ないだろう。
◇
エドとは翌日午前発の馬車で、グランツ領へと向かう約束をした。
王都で支払った宿泊代は、今夜までのもう一泊分。
無為に過ごすことなく、今後の資金のためにも、涙草の納品依頼を受けていて本当によかったと言える。
僕たちは納品のために、冒険者ギルドへと来ていた。
「報酬ゲット~♪」
「やはり、解放されたばかりでは相場が変わらないのだな」
以前、涙草をゼクトに買取ってもらった際の相場と、納品依頼としての報酬は大差なかった。
恐らく今後、多く買取や納品依頼が他の冒険者により行われれば変化が見られるだろう。
「早めに行けてよかったかも?」
「そうだな」
「じゃぁ、オレのおかげ!」
「………………まぁ」
得意げにされるのはどこか不本意だが、まぁ。そうとも言うな。
「オレ、すごい!」
「うるさいぞ」
こいつはすぐ調子に乗るから、あまり褒めすぎない方がいいというのは学んだ。
「ひとまず王都での用事は済んだ訳だが……、他に見ておきたい場所はないのか?」
念のため確認しておく。
「んーーーー」
「……まぁ、何も。今でなくともいけない訳ではないが……」
「へー? それって、オレとなが~~~いコト一緒に旅する予定ってコト?」
「はぁッ!?」
特に深く考えもせず発言したが、そう返されるとは思わなかった。
「べ、別にそういう意味では……」
「ふーーん?」
そう言われると、……こいつとの旅の終わり。
終着点というものをよく考えずに同行を了承したな。
(ヴァルハイトは……。未だ僕に打ち明けていない、こいつなりの目的があるのだろうか?)
僕には、冒険者としての旅の目的──魔法の研究。あるいは魔術の痕跡を辿り、ひいては両親の軌跡。それを見付けようとしている。
しかし、公爵家の屋敷でこいつが僕に同行を申し出た際……そういえば、明確な理由は言われなかった。
流れに身を任せたのかもしれない。
存外、冒険者というのが性に合っていて、旅の楽しさをまだまだ味わいたかっただけかもしれない。
だが……こいつは意外と、そう単純ではない部分を持ち合わせている。
普段の軽薄さは、それを隠すためのような。あるいは、そうせざるを得ないのか。
「……ふむ」
もしくは僕の、……考え過ぎか?
「あ、まーたどっかいってる」
「~っ、どこにも行っていないぞ」
まぁいい。何かあれば……やりたいことがあれば事前に言えと。そう言ったからな。
いずれ自分から言ってくるだろう。
「今日はなに食べよっカナー♪」
「…………はぁ」
ひとまずは、美しきグランツ領へと想いを馳せることにしよう。
「うるさいぞ」
「だってー」
「ワッハッハ! ワシぁ気にしとらんぞ!」
翌朝。
野営地の撤収作業をしながら盛大にため息をつくヴァルハイト。
「いつも上手くいくとは限らない。冒険者たるもの、それぐらい心得ているだろう」
「まぁねぇ~」
結果、僕たちの涙草採取は問題なく行えたものの。
エドの欲した、水属性の鱗。それを持つ魔物は見付けることが出来なかった。
夜間も特に魔物に襲撃されることなく、各々がしっかりと休めてしまったのだ。
……いや、それ自体はよいことなのだが。
「やはり、懸念したとおり。好戦的な魔物が魔術により東の森へと転移したわけだな」
「まぁ、呪術かけられたポーションを運んでた人、襲うくらいだしね~」
「確かに臆病な魔物を喚んだところで戦力にはなるまい。……考えられているな」
「ちょっと~、感心してる場合じゃないでしょー?」
「っあぁ、すまない」
「ルカ坊は理屈っぽいのぉ」
「癖のようなものだ、気にしないでくれ」
「実は、素直じゃないだけなんだよね~」
「~っ、うるさいぞ」
理屈っぽい……か。なるほど。深く思考することは僕にとっては極々当たり前なのだが、前にヴァルハイトにも言われたように、そういう捉え方もあるのだな。
「まー、それがルカ坊じゃからのぉ」
「たしかに!」
「……何なんだ?」
程々にしておけ、ということだろうか。
僕も二人も、手を動かしながら会話する。
「商業ギルドに寄った方がイイかなー?」
「ふむ……、それも一つの手だな」
冒険者ギルドに持ち込み売られた魔物の素材は、一般の者には商業ギルドを通して流通することだろう。
掃討作戦の時は騎士団がまとめて回収していたし、彼らが持ち込んだのだろうが。
買取の代金は、予算に充てられるのだろうか?
「いや、ワシぁ自分で素材を獲るのもまた一興。そう思って来てみただけじゃ。
メーレンスに来た目的、というほどでもない。また、帰りにでも寄ってみようかの」
「あ、そっか。帰りの方が時間あるし」
「それもそうだな」
水神祭の前に水瓶の様子を見に来たのであれば、自身の用事で寄り道するには期限がある。
が、帰路であれば期限もない。その方が効率的だ。
「……にしても、ルカ坊は魔導門の通行資格はないのかの?
融通を利かせてもらえると、ありがたいんじゃが」
「すまない。僕は、実子ではないんだ」
「! そうじゃったか」
「メーレンスだと、どこに門があるの?」
「王都を中心に東のグランツ領と、南に位置する領の三つだな」
「ほぉほぉ」
過去、今の魔法という概念が確立される前。
魔術師たちはその魔力を多人数で使用する『魔術』という方法を好んで用いた。
その時代の産物である、魔導門。地脈を活用した魔術と言われている。
世界には精霊達の残した魔力が、まるで水脈のように流れる『地脈』があるとされた。
地脈胎動説、受動説、……色々な論調があり、どれが正しいのかは未だ分かっていない。
なぜなら、レヴィ・ファーラントらが活躍した時代。二百年とも三百年前とも言われる時代に、地脈ではなく元々人が持つ魔力を活用した魔法を主流とするよう要請したからだ。
それ以前を記した書物はあったとしても国が厳重に保管し目にする機会はほとんど無く。
リューゲン達の様に、熱心な魔術師たちの間で議論されるばかりだ。
精霊という存在は、伝説上のもの。後世の魔術師にとって、彼らの魔力である地脈もまた、伝説的なもの。
現在では、世界に満ちる魔力は植物や嵐、雷や雨といった自然現象として目にするばかりで、僕たちがその力を借り受けることは無いと考えられている。
土魔法で大地を操る、水魔法で渦を作る、など物体を操作する際は世界の魔力にこちらから干渉しているとされる。
つまるところ、現代においては魔導門の原理はよく分かっていないが、とある血筋にしか反応せず。多くの魔力──具体的には四属性を備えないと発動しないもの、という認識だ。
(……?)
そう言えば、エルダードワーフやハイエルフ? たちのような長寿の種族。彼らの、エド以上に時を重ねた者なら、昔の出来事を知っているのではないだろうか。
「まー、あれって国内を繋ぐだけで、国境はまたげないからね~」
「その方が無難じゃろ。今後、戦になることがあれば……悪い使い方を企む輩もいないとは限らんしのぉ。なぁ、ルカ坊?」
「──そっ、そうだな」
いかん。また考え込んだか。
「大国が築かれた時から続く血脈と、それに近い一族。彼らにしか資格はない。
まぁ、仮に国外へ転移出来たとしても……国内の用事以外で使用するのは稀だっただろうな」
「ってぇことはアレだよな。昔、争いがあったとしたらそれを使って脱出した……とかか?」
「かもね~」
「現代であれば、魔術の利用も推奨していないからな。
義父上や王が、主要の領と王都を行き来する際……ぐらいだろうか」
呪術とは違い、民に全く影響のない安全な魔術なため、使用することへの反発はないようだが。
「まぁ、その方が安全だよねー」
「しかし今回の件で、王都において起動する魔術師──王宮魔術師に翼の会の思想が見られた。
……王都側からはしばらく飛べまい」
恐らく義父上も帰りは陸路だっただろうな。
「たいへんだね~」
「お前が言うな……」
命を狙われた点では、こいつもそう大差ないのではないのか?
気が抜けているというのか、度胸があるというのか。相変わらず変わった奴だ。
「お前さんらもグランツ領に行くんかの?」
「そうだな。王都に次ぐ主要な都市、風光明媚な領。
メーレンスといえば、グランツ領……と言う者もいるくらいだからな」
「ルカちゃんが言うには北東? から回って行こうかと思って」
「ゾルテッツォの麓辺りかの。あそこもまた、よいところじゃな」
「しかしエドが直接領都に行くのであれば……」
「オレたちも一緒に行きたーい!」
「ふむ」
やはりというか、ヴァルハイトも考えは同じのようだ。
まぁ、こいつは炎が綺麗? と思うくらいだ。同じ火属性を持つ者への興味だろうか。
僕も、人間以外の種族やドワーフの王とやらの特性、冒険者として鍛冶師への興味。
エド自身に多くの興味深い点がある。
であれば、まだ行動を共にしたいと思うのが自然だ。
「ほーー? ワシぁ嬉しいが……いいんかの?」
「せっかくの縁だ。それに、エドからは学びを得ることが多くある」
「旅は道連れ!」
「うるさいぞ」
「ワシぁこの後は馬車で街道沿いを行くつもりじゃから、お前さんらにとって面白みに欠けるかもしれんが」
僕たちだけであれば風の魔道具の力を借りて走ることも考えたが、さすがに止めておいた方がいいだろう。
「構わない。冒険者とはいえ、いつもダンジョンに向かう訳ではないからな。それに、……こいつにとってはどこも目新しい」
「そういえばメーレンスに来る前は、ルーシェントにいたと言っておったかの」
「そー!」
「うぅむ、ならば……領都まで同行願おうかのぉ!」
「ヤッター!」
「改めて、よろしく頼む」
当初ソロでの冒険者生活を思い描いていたはずが、何やら賑やかなものとなってきた。
まぁ……魔法に関する、興味深い事例を持つ者ばかりであるから、問題ないだろう。
◇
エドとは翌日午前発の馬車で、グランツ領へと向かう約束をした。
王都で支払った宿泊代は、今夜までのもう一泊分。
無為に過ごすことなく、今後の資金のためにも、涙草の納品依頼を受けていて本当によかったと言える。
僕たちは納品のために、冒険者ギルドへと来ていた。
「報酬ゲット~♪」
「やはり、解放されたばかりでは相場が変わらないのだな」
以前、涙草をゼクトに買取ってもらった際の相場と、納品依頼としての報酬は大差なかった。
恐らく今後、多く買取や納品依頼が他の冒険者により行われれば変化が見られるだろう。
「早めに行けてよかったかも?」
「そうだな」
「じゃぁ、オレのおかげ!」
「………………まぁ」
得意げにされるのはどこか不本意だが、まぁ。そうとも言うな。
「オレ、すごい!」
「うるさいぞ」
こいつはすぐ調子に乗るから、あまり褒めすぎない方がいいというのは学んだ。
「ひとまず王都での用事は済んだ訳だが……、他に見ておきたい場所はないのか?」
念のため確認しておく。
「んーーーー」
「……まぁ、何も。今でなくともいけない訳ではないが……」
「へー? それって、オレとなが~~~いコト一緒に旅する予定ってコト?」
「はぁッ!?」
特に深く考えもせず発言したが、そう返されるとは思わなかった。
「べ、別にそういう意味では……」
「ふーーん?」
そう言われると、……こいつとの旅の終わり。
終着点というものをよく考えずに同行を了承したな。
(ヴァルハイトは……。未だ僕に打ち明けていない、こいつなりの目的があるのだろうか?)
僕には、冒険者としての旅の目的──魔法の研究。あるいは魔術の痕跡を辿り、ひいては両親の軌跡。それを見付けようとしている。
しかし、公爵家の屋敷でこいつが僕に同行を申し出た際……そういえば、明確な理由は言われなかった。
流れに身を任せたのかもしれない。
存外、冒険者というのが性に合っていて、旅の楽しさをまだまだ味わいたかっただけかもしれない。
だが……こいつは意外と、そう単純ではない部分を持ち合わせている。
普段の軽薄さは、それを隠すためのような。あるいは、そうせざるを得ないのか。
「……ふむ」
もしくは僕の、……考え過ぎか?
「あ、まーたどっかいってる」
「~っ、どこにも行っていないぞ」
まぁいい。何かあれば……やりたいことがあれば事前に言えと。そう言ったからな。
いずれ自分から言ってくるだろう。
「今日はなに食べよっカナー♪」
「…………はぁ」
ひとまずは、美しきグランツ領へと想いを馳せることにしよう。
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