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決着サルス戦

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 サルスにインフェルノを無詠唱で放った。

 サルスが振り返り、手をかざして叫ぶ。オレが放ったインフェルノが打ち消される。

 「カノンか。待っていたぜ! だが不意打ちには弱い魔法だな。」

 「バカが! お前が打ち消すのは想定内だ! 」

 オレの方を向いたサルスをエマが斬りかかり、ミトが矢を連続で3本放つ。オレも時間差でサルスに突っ込む。

 これなら避けられないだろう。

 エマの斬撃をサルスが受けるがそこにはミトの矢が迫っている。サルスは躱さざるをえない。お前が後に避けることを読んでいたさ。

 「叢雲斬り<むらくもぎり>!! 」

 オレが今使える最大火力の技だ。草薙の剣から代償を求められるだろうがしょうがない。こいつは今やらないとやられる。

 手応えはある。だが、サルスが笑った。

 サルスは手をエマとミトに向けて連続で魔法を放つ。、魔法が二人に向かって大きく爆発した。爆発で二人の姿が見えないが、これくらいの火力であれば死ぬことはないだろう。

 「さすがだカノン、ここまでの力だとは思わなかった。さすがは教会の一番の脅威だな。この化物が。」

 サルスは後に飛び、膝をつく。人間であれば即死する傷は与えたはずだ。胸から血を流しているのが見える。

 「魔人に化物とは言われたくない。」

 「ふん。だが二人はもう立てまい。サシで決着をつけようぜカノン! 」

 笑いながらサルスが斬りかかってくる。

 サルスの斬りは早いがさっきよりもオレが早くなっているのかなんとか対応できる。

 「カノン、お前はい込まれるほど強くなる。もっと力を見せてみろ! 俺が叩き潰してやる! 」

 魔法を織り交ぜながら攻撃に転じる。

 サルスに攻撃を当てることは出来るが、致命傷は与えられない。長引けばまずい。魔人の体力は無限と言っていいほどある。俺も少しずつ疲れてきた。

 お互いの剣が当たる金属音が響き渡る。

 二人とも同じタイミングで距離を取った。

 「お互い手詰まりだな。最大火力でやり合うっていうのはどうだ。」

 「ああ。決着をつけよう! サルス! 」

 「来いカノン! 」

 今だっ!

 「ライカ! 頼む力を貸してくれ! 」

 俺は叫んだ。サルスは叫び声に気づくが俺に向かって斬りかかる動きは止まらない。

 サルスの横からフェンリルに変化したライカが飛びかかる。サルスが振り上げた腕を噛みちぎった。

 「終わりだサルス! くらえ! 叢雲斬り<むらくもぎり> 」

 草薙の剣が光りサルスの首が飛ぶ。サルスの首がなくなった胴体が崩れ落ちた。

 これで終わりだ。

 「クソッ負けたぜカノン。お前との戦いは面白かった。」

 バカな。首と胴体がバラバラになっているのに話せるだと。どうなってやがる。

 「そう驚くな。カノン、お前の勝ちだ。俺はじきに死ぬさ。」

 首だけになったサルスが口から血を吐く。

 もう人間の生命力なんかじゃない。なんという力を教会は人間に使っているんだ。

 「最後に、なにかアルスに伝えることはないか。」

 「なにもない。俺は完全にカノンに負けたんだ。いやフェンリルや二人の女に負けた。俺は一人だったから負けたのか。」

 俺はなんと言葉をかけていいか分からなかった。

 「そうか。来世では信頼できる仲間ができるといいな。」

 「ああ。お前が羨ましいよカノン。さらばだ。」

 サルスの体が爆発した。

 ミトとエマは起き上がりこっちに向かってくる。

 「やったわね。カノン、ライカ。それにしてもライカは大きくなったわね。」

 確かにライカは以前より巨大化している。村で出会ったフェンリルくらいのサイズはあるようだ。

 「ああ、危なかったな。皆の勝利だ。教皇は大丈夫そうか。」

 「うん。回復して傷は癒せたけど、まだ気絶している。」

 「そうか。起きるまでオレたちも休もう。なんとしても魔法具を借りるんだ。」

 ミトとエマが座って休んで間、俺は二人に了承を得て草薙の剣に黒龍の魔石を食わせた。

 『これはまた極上の魔石だな。相棒。』

 「そうだな。クサナギがいなければ負けていたからな褒美だ。」

 『そうかい。だが魔石が最近少ないぜ。もっとくれないと相棒の大事なものをもらわないといけなくなる。』

 「大事な物? それはなんだ。」

 『それはその時が来てからのお楽しみだ。』

 「そうか。」

 草薙の剣と脳内で話をしていると、教皇が起きたみたいだ。

 「教皇、大丈夫ですか。」

 「ああ。キミたちは帝国の騎士だな。それでチャーチル教の男はどうなった。」

 「無事に倒しました。残念ですが、護衛の人たちは誰も助けられず。」

 「そうか…わかった。ひとまず感謝する。もう少しキミたちの到着が遅ければ殺されていたんだ。行きていることを神に感謝しなければならない。」

 オレたちは黙って頷いた。

 「教皇、このままでは何度でもチャーチル教に襲われます。魔法具を帝国に貸してくれませんか。」

 「そうだな。自分たちで守りきれると思っていたが無理みたいだ。もうウィル教には戦える人員はほとんどおらん。そうしよう。その代わりと言ってはなんだが、帝国から戦闘人員を貸してほしい。」

 「分かりました。ルノガー将軍に伝えます。」

 指笛でクロスケを呼び、紙に書いてクロスケの脚に結ぶ。クロスケが教会の割れた窓ガラスから空に飛びたった。

 「ウィル教も変わらないといけない時期が来たようだな。カラスなどの力を借りるとは。」

 「あまり偉そうな事を言えませんが、変わらぬ者は滅びます。それは人間であり動物であり教会で有り一緒でしょう。」

 教皇が声を上げて笑った。

 「たしかにそうだな。よし、チャーチル教のことを教えてくれ。最近明らかに動きが過激化している。なにか企んでいるのだろう。ウィル教は帝国と同盟を結ぶぞ。チャーチル教を倒す手助けをさせてほしい。」

 ウィル教会と同盟は嬉しい限りだ。共に戦ってくれる仲間が多いに越したことはない。
 チャーチル教が魔王の復活を企んでいること。そのために魔法具を狙っていること。その時期は近いことを説明した。

 ウィル教の教皇から【神の腕輪】を受け取り、神殿を出た。死体の処理を手伝おうかと提案したが丁重に断られた。教会の人間は教会で埋葬したいと言われた。

 次は東のエルフの街か。エルフは人間を嫌っているが、なんとか手に入れないと今回のようなことがまた起きてしまう。
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