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一刀両断

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次に話を振られたのは、風刺漫画家としてテレビにもよく出る どく みつゆ氏であった。
民自党の阿倍史政権時代には、執拗に風刺の域を超えた、バッシング漫画やコメントを発していたらしい。

で、今回も、何かを言葉にしたいのを堪えたような表情で、白いフリップ。
当然、ワシを「風刺」したらしき一コマ漫画。

そこには、アドルフ・ヒトラーの格好をしチョビ髭を生やしたワシが熱弁を振るい、それに若者達?が、一斉に右手を挙げて支持している。
そんな絵であった。
スタジオはパネリストらも含めどっと湧くが。
反面コメント欄は冷ややかな空気が細かく
見なくても充満しているのがわかった。
『何番煎じだよ(呆れ)』
『こいついっつもヒトラーに例えてるな』
『阿倍史総理の時散々見たし』
『気づけよ、とっくに才能枯渇してんだよ』

ワシはと言えばハル共々苦笑を浮かべるしか無かった。
大きくため息をつき、口を開く。
「どくみつゆ…先生とお呼びすれば良いのかな?
この風刺漫画、は、なにがどうで、いかなる論理ロジックで面白いのであろうか。
私もこの令和の様々な漫画は読む。が、この類のものがなにぶん初めてなもので。」
「う…そ…れは。」
初めて言語と呼べるものを発するどく。
「いやいや、説明できるであろう?
自分で描いたものであれば、いかなる仕掛けで面白いと感じさせるものなのか。」
「こ、これは、風刺で現状に不満をもつネット右翼…ネトウヨ達がぁー思考停止してアンタを…。」
「ああ、すまぬすまぬ。ようわかった。
私が1930年代のヒトラー同様、社会に不満持つ貧困層に対し他民族へのヘイトスピーチを叫ぶ事で、一種受け皿となり歴史上最悪クラスの独裁国家形成につなげた。
その歴史的事実に準えたいと言う話であろう?」
「ま、まあそう言う事だな。」
「で、何がそう面白いのだ?」
「は?」
「いやいやいや笑
お主はプロの漫画家。
つまりなにがしか描いたものがエンタメにならないと、この場合風刺として成立していないと、本来お払い箱になる身であろう?
ただ自分の認識や感想を絵にするだけなら稚児でも出来る。
TVのレギュラーも持つ身で、こんな作品にもなってないものを得意げに晒して、お主は恥ずかしくないのか?」

どくみつゆ「先生」の根拠なく人を見下し、不貞腐れたようないつもの表情が決定的に歪む。
『ノッブ火の玉ストレートで草』
『効いてる効いてるwww』
『どくざまぁ!!』
コメント欄の流れが加速する。

「…かなり昔の事であるし、私も掘り返すか迷ったが、お主に関しては許し難きことがひとつ。

まぁ私もルールと人気選手をやっと覚えた程度だが、プロ野球の人気チームG。
そこにY選手という、天才と呼ばれ将来のスターを嘱望された男がいた。
順調にキャリアを積み重ねている様に見えたある日の試合、外野で打球を追い疾走していた彼は、もう一人打球を追っていたS選手と交錯激突してしまう。
そして不運にもY選手は、脚に選手生命に関わる大怪我をしてしまう。
チームやファン、誰もがその悲運を嘆いたのは当然だが…それに罪の意識も加わり、一部ファンからのヘイトも相まって苦しんだのはS選手であった。当然故意ではなく、激しい戦同然のプロスポーツでは時に起こりうることなのだが。

そこで、ウハウハと連載していた野球風刺漫画で、S選手を何度となく事故に絡めたネタにした作品を書いたのが、他ならぬ「ボタ山パッチギ」名義で活動していたお主、どくみつゆ先生と言うわけだ。」
どくの顔はまたさらに歪み、遂には俯いてしまう。

『マジかよ初めて知ったー!Gファンだけど』
『おっさん世代や、マニアックな野球ファンには有名な話だけどな。』
『どくみつゆクズじゃねーか!』
『しかも、前この件のテレビ特集してた時は別名義使って、今の自分と結びつかないよーに逃げてるしよ。』
『いいぞノッブもっとやれ!』

「幸い…と言うべきか、天才Y選手の方は、長期のリハビリに耐え現役復帰を果たした。
むろんあのケガが無ければと惜しむファンも多いが。本人の野球選手としての無念もあろう。だがとにかく彼はGチームのOBとして、今にいたるも社会的評価を勝ち得ている。

一方、事故の数年後引退したS選手の、所謂十字架は消えなかった。
一般企業に勤めても、『私があの時のSです。』と言って営業しろと言われる始末で…幸にも結婚して新たな人生を始めた様だが、完全に傷が癒えたかは我々には知りようがない。
…さて、S元選手の深い苦悩に、当時相応の読者数が居た、お主の度を越した煽り弄り。いや中傷が無関係だと言い切れるかな?」
俯いたままぷるぷる震えるどく。
「もしかしたらS氏も見ておるかもしれん。
そうでなくともここでの言動は広く世に伝わる。
さて、まっとうな人たる想像力があれば一言詫びるべきと考えるが。」

『ノッブ死体蹴りwww』
『どく謝れやwww』
『土下座しろ!』

震えを増す、どくみつゆ。
「はい、一通りご意見出ましたんで次は…」
「うわあああああああああああ」
高上の、強引に場を収めようという介入、どくの部分の画像切り替えが数秒遅かった。
どくみつゆ、こと元「ボタ山パッチギ」先生は、発狂しスタジオ外に走り出ていった。

『大草原』
『ちょwwww敵前逃亡wwww』
『どく川みつゆ児www』
『もう二度とテレビ出れないねえ』

(バカが何やってんだオッサン。
黙ってれば、何もなかったことにして次に行けたのに)
司会高上忍の顔には、明らかにそう書いてあった。
「まーね、黒田くんには、どく先生を怒らせてしまった。その意味を考えて受け止めて欲しいですね、では赤井さんに…。」
「あ、はい。」
白髪混じりの、50代くらい?の男。
確かジャーナリストの肩書きで、日曜朝の報道番組に出ていた…。






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