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偽りの勝利
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永き時の中で風化し、老朽化したビルを倒壊させたかのようにゆっくりと崩れ落ちる蟒蛇の頭部。海面を叩きつけるように大きな水飛沫を上げながら、周囲の海域に大きな波を立てる。
キングの思っていた以上に、エイヴリーのクラフトしたレールガンが効いていたのだろうか。見た目以上に、蟒蛇の身体にダメージを蓄積させ、その意識を刈り取る程の一撃だったのか。
「ッ・・・!?倒した・・・?それとも意識を飛ばしただけか・・・?」
困惑するキングとは反対に、圧倒的な大きさと繊細な魔力で大いに彼等を苦しめた巨大なレイドボスを倒せたことに、船員達は歓喜の声をあげ、迫る波に備え各々の仕事へと取り掛かっている。
しかし、どうにも腑に落ちないといった様子のキング。そしてそれは、他の海賊船内でも同じだった。エイヴリーやロバーツ、直接間近で戦っていたシャーロットや、蟒蛇に押し負け撤退していたヴェインもまた、これで終わりという呆気ない結果を、まだ飲み込めずにいた。
「あのでっけぇ首を、根本から吹き飛ばしてやるつもりだったんだがな・・・。エネルギーの充填もクラフトも申し分ない出来だ。あれくらいのもんなら、風穴くれぇは空けられるだけの威力は、十分過ぎる程あった・・・」
「しかし結果は見ての通り・・・。ある程度体表は焼け焦げてはいるが、突き破るまでには至っていない。レールガンの威力を相殺させるだけの防御壁を、衝突の瞬間に展開したということだろう」
完璧な状態と言って良いほど、万全の状態で放ったレールガンによる一撃を防がれ、自信を挫かれたエイヴリーの元へ、一部始終を見ていた幹部のアルマンが近づき、彼なりの見解を述べる。
「魔物風情がここまで器用なことが出来るとは・・・。少々興味深いが、野生の本能的なものなのかも知れないし、中には知性を持つ魔物も少なくない。あそこまで大きく育ったのだから、知性を持っていたとしても不思議ではあないが・・・」
アルマンの言う、知性を持った魔物にも色々な種類がいる。生まれつき人語を話す魔物や、殺害した人間の所有物を漁り、食料や薬物を使うことで経験という形で知識をつけていくモノなど、経緯は様々だ。
そういった知識を得た魔物達は、用途を分かった上で魔法を攻撃の為だけではなく、防御に使ったり相手を騙すために使用したりと、まるで人間と同じように様々な用途を見出し、独自の武器へとスキルを成長・変化させていくことがある。
そしてそれは、長寿の魔物であればあるほど知識を豊富に溜め込み、人間を凌駕する魔力で想像を絶するような魔法や技を習得するケースが多い。
手に追えなくなった魔物は、レイド対象の魔物と定められ、人間達や様々な種族の者達の有志を集い、討伐隊が結成されたり、このレースのようにお祭りごとの一部に組み込まれることもある。
「そんな奴が、こうもあっさりとやられるかぁ?」
「それは・・・その個体によるのでは?知性の有無が体力に影響するとは思えない。いや・・・スキルの成長や魔力の使い方から、ステータスに影響する能力を身につけることもあるのか?」
再び一人で考え初めてしまったアルマン。魔法やスキルの使い分けや、新たな技への昇格が可能とあらば、自身のステータスを向上させる、所謂バフ効果を持つスキルを使えるのも不思議ではない。
蟒蛇の頭部が沈み暫く経つと、他の場所に見られた蟒蛇の長い身体の数々も、徐々に動きを止めていき海に引き摺り込まれるように沈んでいく。各所で戦っていた海賊達も、蟒蛇が姿を消したことでレイド戦が終了したものと思っているようだった。
「やはり先頭グループのエイヴリーやキングに、大分削られていたようだな」
「これじゃぁ挽回は無理か・・・。仕方ねぇ、参加出来ただけでも儲けものか・・・」
蟒蛇の身体を攻撃していた海賊達が、それぞれ船を動かし始め前方にいるキングやロバーツ等の方へと前進していく。キング暗殺計画を目論んでいたロバーツ等の船は呆気に取られ、歩みを止めてしまっていた。
「お・・・終わったのか?」
「どうするんだ、ロバーツ。これでは・・・」
「分かってる。よもやここまでエイヴリーの兵器が強力だったとは・・・。今、行くしかないのか?まだデイヴィスも来ていないのに・・・」
思った以上にエイヴリー海賊団の兵器が強力で、想定していたよりも大分速く戦闘が終了してしまったことで、計画が崩れてしまったロバーツ。そもそもこれではキングの隙を突くというのも不可能であり、然程魔力の消費も稼げていない。
デイヴィスが到着するまでに、キングの船団とやり合い、彼等を疲弊させるしかないのか。それで政府側についている海賊達が、果たして動いてくれるだろうか。これでは単なる海賊同士の抗争に過ぎない。
そうなれば戦力の差は明らか。対人戦において、キング等の攻撃を凌ぎ切ることなどロバーツ達には不可能だ。一度攻撃の意思を見せて仕舞えば、海の藻屑に変わるのは、あっという間のことだろう。
ロバーツやフィリップス、アーチャーやモーティマーの船団が動きを止める中、キングのシー・ギャングもまた状況を整理しているのか動く気配がない。
そして、キングやエイヴリーの予想通り、これで終わりなどではなかった。寧ろここまでは前座に過ぎない。蟒蛇との本当の戦いはこれからだったのだから・・・。
キングの思っていた以上に、エイヴリーのクラフトしたレールガンが効いていたのだろうか。見た目以上に、蟒蛇の身体にダメージを蓄積させ、その意識を刈り取る程の一撃だったのか。
「ッ・・・!?倒した・・・?それとも意識を飛ばしただけか・・・?」
困惑するキングとは反対に、圧倒的な大きさと繊細な魔力で大いに彼等を苦しめた巨大なレイドボスを倒せたことに、船員達は歓喜の声をあげ、迫る波に備え各々の仕事へと取り掛かっている。
しかし、どうにも腑に落ちないといった様子のキング。そしてそれは、他の海賊船内でも同じだった。エイヴリーやロバーツ、直接間近で戦っていたシャーロットや、蟒蛇に押し負け撤退していたヴェインもまた、これで終わりという呆気ない結果を、まだ飲み込めずにいた。
「あのでっけぇ首を、根本から吹き飛ばしてやるつもりだったんだがな・・・。エネルギーの充填もクラフトも申し分ない出来だ。あれくらいのもんなら、風穴くれぇは空けられるだけの威力は、十分過ぎる程あった・・・」
「しかし結果は見ての通り・・・。ある程度体表は焼け焦げてはいるが、突き破るまでには至っていない。レールガンの威力を相殺させるだけの防御壁を、衝突の瞬間に展開したということだろう」
完璧な状態と言って良いほど、万全の状態で放ったレールガンによる一撃を防がれ、自信を挫かれたエイヴリーの元へ、一部始終を見ていた幹部のアルマンが近づき、彼なりの見解を述べる。
「魔物風情がここまで器用なことが出来るとは・・・。少々興味深いが、野生の本能的なものなのかも知れないし、中には知性を持つ魔物も少なくない。あそこまで大きく育ったのだから、知性を持っていたとしても不思議ではあないが・・・」
アルマンの言う、知性を持った魔物にも色々な種類がいる。生まれつき人語を話す魔物や、殺害した人間の所有物を漁り、食料や薬物を使うことで経験という形で知識をつけていくモノなど、経緯は様々だ。
そういった知識を得た魔物達は、用途を分かった上で魔法を攻撃の為だけではなく、防御に使ったり相手を騙すために使用したりと、まるで人間と同じように様々な用途を見出し、独自の武器へとスキルを成長・変化させていくことがある。
そしてそれは、長寿の魔物であればあるほど知識を豊富に溜め込み、人間を凌駕する魔力で想像を絶するような魔法や技を習得するケースが多い。
手に追えなくなった魔物は、レイド対象の魔物と定められ、人間達や様々な種族の者達の有志を集い、討伐隊が結成されたり、このレースのようにお祭りごとの一部に組み込まれることもある。
「そんな奴が、こうもあっさりとやられるかぁ?」
「それは・・・その個体によるのでは?知性の有無が体力に影響するとは思えない。いや・・・スキルの成長や魔力の使い方から、ステータスに影響する能力を身につけることもあるのか?」
再び一人で考え初めてしまったアルマン。魔法やスキルの使い分けや、新たな技への昇格が可能とあらば、自身のステータスを向上させる、所謂バフ効果を持つスキルを使えるのも不思議ではない。
蟒蛇の頭部が沈み暫く経つと、他の場所に見られた蟒蛇の長い身体の数々も、徐々に動きを止めていき海に引き摺り込まれるように沈んでいく。各所で戦っていた海賊達も、蟒蛇が姿を消したことでレイド戦が終了したものと思っているようだった。
「やはり先頭グループのエイヴリーやキングに、大分削られていたようだな」
「これじゃぁ挽回は無理か・・・。仕方ねぇ、参加出来ただけでも儲けものか・・・」
蟒蛇の身体を攻撃していた海賊達が、それぞれ船を動かし始め前方にいるキングやロバーツ等の方へと前進していく。キング暗殺計画を目論んでいたロバーツ等の船は呆気に取られ、歩みを止めてしまっていた。
「お・・・終わったのか?」
「どうするんだ、ロバーツ。これでは・・・」
「分かってる。よもやここまでエイヴリーの兵器が強力だったとは・・・。今、行くしかないのか?まだデイヴィスも来ていないのに・・・」
思った以上にエイヴリー海賊団の兵器が強力で、想定していたよりも大分速く戦闘が終了してしまったことで、計画が崩れてしまったロバーツ。そもそもこれではキングの隙を突くというのも不可能であり、然程魔力の消費も稼げていない。
デイヴィスが到着するまでに、キングの船団とやり合い、彼等を疲弊させるしかないのか。それで政府側についている海賊達が、果たして動いてくれるだろうか。これでは単なる海賊同士の抗争に過ぎない。
そうなれば戦力の差は明らか。対人戦において、キング等の攻撃を凌ぎ切ることなどロバーツ達には不可能だ。一度攻撃の意思を見せて仕舞えば、海の藻屑に変わるのは、あっという間のことだろう。
ロバーツやフィリップス、アーチャーやモーティマーの船団が動きを止める中、キングのシー・ギャングもまた状況を整理しているのか動く気配がない。
そして、キングやエイヴリーの予想通り、これで終わりなどではなかった。寧ろここまでは前座に過ぎない。蟒蛇との本当の戦いはこれからだったのだから・・・。
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