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暗雲を貫くレールガン
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彼女の言葉を聞いた瞬間、彼の身体は考えるよりも先に動き出した。ドラゴンの身体を数回軽く叩くと、向きを反転させ蟒蛇の元へと急行する。自ら言い出したことだからだろうか、シャーロットも彼の危険な行動に反対することはなかった。
蟒蛇の光弾のカラクリを探りに行った帰りのように、風を切る弾丸となるドラゴン。必要以上に翼を羽ばたかせず、水平に広げて微調整する。そして瞬く間に蟒蛇の首に乗るマクシムの元まで辿り着くと、掠め取るように彼を抱え込み飛び去って行った。
マクシムの生存を確認し、見事救出を果たしたロイク。だがこれで安全が確保された訳ではない。寧ろ、彼等にとっての命の危険はこれからなのだ。エイヴリーの兵器は発射の準備を整え、もう止まることは出来ない。
海面スレスレを飛び、翼で水飛沫を立てながら旋回すると射線上を抜け出す。その最中、シャーロットの能力により海面に接触する蟒蛇の身体が凍結し、周囲の海面を徐々に凍らせていた。
「アンタが近づいたおかげで、もう少しだけ魔物の動きを封じられそうだよ」
「流石はアイスベリーだな。僅かなチャンスも逃さない・・・」
シャーロットはうんざりした表情で、その異名が意図せず勝手に呼ばれていることに腹を立てていた。三人が一匹のドラゴンに乗り、蟒蛇の元から離れると同時に、エイヴリーの戦艦からタイミングよく高出力のエネルギーが射出される。
雷のように一瞬の輝きを放った兵器の攻撃は、動けなくなった蟒蛇の身体に命中し、その頭部に青白い稲光を纏い大声を上げる。鼓膜を震わせる蟒蛇の声に、耳を塞ぐ周囲の海賊達。その中で、一部の者達とエイヴリーだけは浮かない顔をしていた。
これだけ準備に時間をかけたのにも関わらず、思っていた程の結果を得られなかったことで、蟒蛇の身体が如何に優れた防御力を誇っているかが分かった。
それは彼等にとって吉報ではなく、事の重大さを重く受け止めざるを得ない悲報として、周囲に伝染していった。
「レールガンを持ってしても倒せぬか・・・。これは想像以上に苦戦を強いられるやも知れんな・・・」
エイヴリーがレールガンと呼んだその兵器は、とある大陸の海から離れた位置にある、機械文明の発達した国で出会った兵器の名だったのだ。一度目にした物ならそのクラフト能力で全く同じものを作れるエイヴリーのクラス、クラフトマスター。
彼等が海だけに留まらず、さまざまな大陸を渡るのは、そのままエイヴリーの能力の成長にも繋がる。作れる物に制限はなく、彼の覚えられる範囲で無制限にストックすることができる。
能力の性質だけ聞けば何とも便利で、強大な力を誇る能力だが人間の記憶力には限度がある。使われなくなった物や、然程重要ではない物から風化していき、いつの間にか思い出せなくなっていくもの。
故にヘラルトを一味に加えたのは、エイヴリーの英断とも言えるだろう。少年のスケッチによる能力は、実物を再現するのにもってこいの能力と言えるだろう。ただ、エイヴリーの能力で生物を作り出すことは出来ない。
船長達の含みある表情に、各々の海賊船では動揺が広がる。 それは何も、エイヴリーの兵器の効き目が期待通りでなかったことに対してだけではない。彼の能力を知らない者や、このような近代的な兵器を所有していることに対する驚きの方が大きいだろう。
「ん~・・・。もっと吹き飛ばすくらいしてくれんのかと思ったけど、期待外れ感が否めないよねぇ~」
「じゅ・・・十分凄かったように感じますが・・・?」
思っていた成果がなかったことにガッカリするキング。それに対してシー・ギャングの船員は驚きを隠せずにいた。そんな様子を見て呆れたキングは、本来のレールガンならばこの程度では済まないことを知っている。
各方面で顔の利くキングは、兵器の開発建築や輸出入の事業にも携わっている。その為、エイヴリーの作り出した二本の巨大なレールから、すぐにあれがレールガンであることを悟った。故にその威力も範囲も目にしたことがあったため、例え射線上であっても届かぬ範囲を知っていたので、必要以上に離れたりしなかったのだ。
「君はもしかして新人さんかね?本来、あの兵器の威力はもっと絶大で圧巻のものなんだよねぇ。それこそ山を溶かしかねない程によ?それがあの様よ・・・、クラフトが本調子じゃぁねぇのか、それとも・・・」
「それとも・・・?」
キングの言葉に息を飲み込んで、汗を垂らす船員。薄々その要因は感じ取っていた。だが、彼等のボスであるキングの言葉を以って初めて確定事項となるような気がした。
「今回のレイド戦が、生半可なものじゃぁねぇっていう警鐘なんかもなぁ~・・・」
甲板に出て、稲光を身体に纏った蟒蛇の様子を見ながら語らうキングとその部下。しかし、そんな彼の表情を再び変える事態が起こり始める。
レールガンによる高出力の攻撃を受け、一時的に動きを止めていた蟒蛇の頭部は、大きな鳴き声を上げた後に静寂に包まれる。すると、天へ向けて聳え立っていた蟒蛇の頭部はゆっくりと斜めになり、海面へ倒れていったのだ。
首から上を吹き飛ばすには至らなかったが、それでも十分過ぎる程のダメージが入ったということなのだろうか。レールガンの威力とその結果に表情を曇らせていたキングの顔は、驚きのものへと変わる。
蟒蛇の光弾のカラクリを探りに行った帰りのように、風を切る弾丸となるドラゴン。必要以上に翼を羽ばたかせず、水平に広げて微調整する。そして瞬く間に蟒蛇の首に乗るマクシムの元まで辿り着くと、掠め取るように彼を抱え込み飛び去って行った。
マクシムの生存を確認し、見事救出を果たしたロイク。だがこれで安全が確保された訳ではない。寧ろ、彼等にとっての命の危険はこれからなのだ。エイヴリーの兵器は発射の準備を整え、もう止まることは出来ない。
海面スレスレを飛び、翼で水飛沫を立てながら旋回すると射線上を抜け出す。その最中、シャーロットの能力により海面に接触する蟒蛇の身体が凍結し、周囲の海面を徐々に凍らせていた。
「アンタが近づいたおかげで、もう少しだけ魔物の動きを封じられそうだよ」
「流石はアイスベリーだな。僅かなチャンスも逃さない・・・」
シャーロットはうんざりした表情で、その異名が意図せず勝手に呼ばれていることに腹を立てていた。三人が一匹のドラゴンに乗り、蟒蛇の元から離れると同時に、エイヴリーの戦艦からタイミングよく高出力のエネルギーが射出される。
雷のように一瞬の輝きを放った兵器の攻撃は、動けなくなった蟒蛇の身体に命中し、その頭部に青白い稲光を纏い大声を上げる。鼓膜を震わせる蟒蛇の声に、耳を塞ぐ周囲の海賊達。その中で、一部の者達とエイヴリーだけは浮かない顔をしていた。
これだけ準備に時間をかけたのにも関わらず、思っていた程の結果を得られなかったことで、蟒蛇の身体が如何に優れた防御力を誇っているかが分かった。
それは彼等にとって吉報ではなく、事の重大さを重く受け止めざるを得ない悲報として、周囲に伝染していった。
「レールガンを持ってしても倒せぬか・・・。これは想像以上に苦戦を強いられるやも知れんな・・・」
エイヴリーがレールガンと呼んだその兵器は、とある大陸の海から離れた位置にある、機械文明の発達した国で出会った兵器の名だったのだ。一度目にした物ならそのクラフト能力で全く同じものを作れるエイヴリーのクラス、クラフトマスター。
彼等が海だけに留まらず、さまざまな大陸を渡るのは、そのままエイヴリーの能力の成長にも繋がる。作れる物に制限はなく、彼の覚えられる範囲で無制限にストックすることができる。
能力の性質だけ聞けば何とも便利で、強大な力を誇る能力だが人間の記憶力には限度がある。使われなくなった物や、然程重要ではない物から風化していき、いつの間にか思い出せなくなっていくもの。
故にヘラルトを一味に加えたのは、エイヴリーの英断とも言えるだろう。少年のスケッチによる能力は、実物を再現するのにもってこいの能力と言えるだろう。ただ、エイヴリーの能力で生物を作り出すことは出来ない。
船長達の含みある表情に、各々の海賊船では動揺が広がる。 それは何も、エイヴリーの兵器の効き目が期待通りでなかったことに対してだけではない。彼の能力を知らない者や、このような近代的な兵器を所有していることに対する驚きの方が大きいだろう。
「ん~・・・。もっと吹き飛ばすくらいしてくれんのかと思ったけど、期待外れ感が否めないよねぇ~」
「じゅ・・・十分凄かったように感じますが・・・?」
思っていた成果がなかったことにガッカリするキング。それに対してシー・ギャングの船員は驚きを隠せずにいた。そんな様子を見て呆れたキングは、本来のレールガンならばこの程度では済まないことを知っている。
各方面で顔の利くキングは、兵器の開発建築や輸出入の事業にも携わっている。その為、エイヴリーの作り出した二本の巨大なレールから、すぐにあれがレールガンであることを悟った。故にその威力も範囲も目にしたことがあったため、例え射線上であっても届かぬ範囲を知っていたので、必要以上に離れたりしなかったのだ。
「君はもしかして新人さんかね?本来、あの兵器の威力はもっと絶大で圧巻のものなんだよねぇ。それこそ山を溶かしかねない程によ?それがあの様よ・・・、クラフトが本調子じゃぁねぇのか、それとも・・・」
「それとも・・・?」
キングの言葉に息を飲み込んで、汗を垂らす船員。薄々その要因は感じ取っていた。だが、彼等のボスであるキングの言葉を以って初めて確定事項となるような気がした。
「今回のレイド戦が、生半可なものじゃぁねぇっていう警鐘なんかもなぁ~・・・」
甲板に出て、稲光を身体に纏った蟒蛇の様子を見ながら語らうキングとその部下。しかし、そんな彼の表情を再び変える事態が起こり始める。
レールガンによる高出力の攻撃を受け、一時的に動きを止めていた蟒蛇の頭部は、大きな鳴き声を上げた後に静寂に包まれる。すると、天へ向けて聳え立っていた蟒蛇の頭部はゆっくりと斜めになり、海面へ倒れていったのだ。
首から上を吹き飛ばすには至らなかったが、それでも十分過ぎる程のダメージが入ったということなのだろうか。レールガンの威力とその結果に表情を曇らせていたキングの顔は、驚きのものへと変わる。
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