不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
284 / 2,090
闘技祭 決戦編

神器 〈ロッド〉

しおりを挟む
「おい、聞いているのか!!その杖を下ろせ……うわっ!?」
「近寄るな」


砲撃魔法を発動させた兵士に対して隊長が近づいた瞬間、兵士は杖を構えて隊長の顔面に構える。その光景に周囲の人間が驚きの声を上げ、レナも様子を伺う。


「ま、待て……落ち着け!!冷静になるんだ……俺は警備隊長だぞ!?」
「ふんっ……碌に警備も行えない無能が偉そうに抜かすな」
「そ、その声!!お前は……い、いや貴方様は!?」
「もういい、黙れ……アイスランス」


隊長は顔を兜で覆い隠している兵士の声を聞いて表情を変えた瞬間、兵士は水属性の砲撃魔法を発動させ、隊長の身体に冷気が襲い掛かる。その光景を目撃した観光客は悲鳴を上げ、兵士達も混乱する。


「きゃあああっ!?」
「や、やりやがった……!!」
「貴様!!隊長に何てことを!!」
「こいつを取り押さえろ!!」


見物していた観光客も慌ててその場を立ち去り、兵士達は隊長に攻撃を仕掛けた兵士に武器を構えるが、攻撃を仕掛けた本人は杖を確認しながら凍り付いた隊長に視線を向けて溜息を吐き出す。


「ふむ……神器というから期待してみたが、やはり私の力量では完全に使いこなせいか……これはどちらかというとスイの方が扱えるだろうな」
「……神器?」


兵士の呟きを耳にしたレナは「神器」という言葉を聞いて視線を鋭くさせ、七つの宝石が取り付けられた杖を握りしめる兵士と向かい合う。神器とは異世界から訪れた勇者が残した強力な魔道具であり、その力は聖剣には及ばずとも驚異的な魔道具である事は間違いなく、レナが普段は異空間に預けている「チェーン」も神器の一つである。


「おっと、流石に目立ち過ぎたかな……そろそろ終わらせるぞ」
「…………」


杖を自分に向けて構えてくる兵士に対し、レナは何処かで聞き覚えのある声だと気付く。そしてシズネを取り戻すために王妃の元へ訪れた際、彼女の傍で仕えていた青年を思い出す。


(確かシズネの話によると常に王妃の傍に仕えている奴の名前が「リク」とか言ってたけど……もしかしてこいつか?)


姿は兵士に変装しているが、声に関してはレナが王妃と初めて顔を合わせた時にも居合わせていた青年の声と同じであり、試しにレナはかまをかける。


「……王妃の犬か」
「何っ……!?」


王妃という単語をレナが口にした瞬間、兵士が一瞬だけ動揺したのを見逃さず、レナは相手の正体を「リク」と呼ばれる王妃の側近だと確信する。しかし、相手の名前が分かっただけで肝心のリクが何者なのかは分からず、シズネも常に王妃の傍で仕えている人間という情報しか持っていなかった。


『王妃に仕えている子供達はバルトロス王国の有力貴族達の跡取りで間違いないわ。だけど、子供の頃から親元を離れて王妃に育てられているから彼等の情報は殆ど出回っていないの。私も何度か顔を合わせた事はあるけど、それぞれがどんな力を持っているのかはまでは分からない』
『王妃が貴族の子供達を育てた理由は第一に有力貴族を絶対に逆らえないようにするためよ。大切な跡取りを預けた貴族達は王妃に歯向かう事は出来ない。そして第二の理由は王妃が自分を守護する存在を一から作り上げるためよ』
『貴族の子供とはいえ、王妃の傍に仕える子供達は一流の武芸者から戦闘指導を受けているはずよ。断定は出来ないけど、王国内でも相当な実力者に育っているでしょうね』


シズネの言葉を思い返し、レナは自分が相対した「アマネ」と呼ばれる少女を思い出す。彼女の場合は「未来視」と呼ばれる近い将来を見通す事が出来る能力を利用して待ち伏せや奇襲をレナに仕掛けており、もしもアイリスから情報を得ていなければレナも対応出来なかった可能性も高い。そして王妃の傍仕えを許されているリクという青年は年齢的には他の側近よりも一番上である事は間違いなく、他の者よりも王妃に仕えている期間が長い可能性が高い。


(能力が分からない敵ほど厄介な相手はいないな……こういう時にアイリスと交信出来たら情報も分かるのに)


仕方がない事とはいえ、レナはアイリスと交信出来ない事に内心溜息を吐く。いつもならばどんな問題に直面しようとアイリスと交信する事で最善の答えを導き出していたが、今回ばかりは彼女には頼れない。そのため、自分の力で状況を打開するためにレナはリクに攻撃を仕掛ける。


(まだ正体がばれていないようだけど、どうせ証拠を残さなければいいか……ここでぶっ倒す!!)


レナは右手に意識を集中させ、久方ぶりに「氷装剣」を発動させて氷塊の長剣を作り出す。その光景を目にした兵士達は驚愕の表情を浮かべ、リクも感心した風に呟く。


「へえ……氷の剣を作り出すとはね。君の正体が掴めてきたよ」
「ああ、そうかい!!」


氷塊の長剣を握りしめながらレナはリクに向けて駆け出し、相手が攻撃に移る前に攻撃を仕掛ける。しかし、そんなレナの動作を予測していたようにリクは杖を構えた。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。