283 / 2,083
闘技祭 決戦編
魔術師としても一流
しおりを挟む
(流石に多くなってきたな。よし、そろそろ魔法を使うか)
レナは両手を構えて自分を取り囲む兵士に視線を向け、決して正体が気付かれないようにしなければならない。剣を使えば剣筋で見抜かれる恐れもあり、ここは素手と魔法で対処を行う。
「槍を構えろ!!迂闊に近づくな!!」
「よし、やれ!!」
「逃がすなっ!!」
円を描くように取り囲んだ兵士達は槍を構えて同時に突き出す。しかし、それを見たレナは得意の「跳躍」で上空へと回避すると、空中で身体を回転させながら兵士の背後に着地する。そして鎧を身に付けた兵士に向けて両手を突き出す。
「ふっ!!」
「ぐああっ!?」
「何だと!?」
「こ、これは……格闘家の発徑か!!」
掌を押し当てた状態で風圧の魔法を叩きつける「衝風」を撃ち込まれた二人の兵士は吹き飛び、その光景を見た兵士を統率する隊長がレナの格闘家の職業の人間が扱える「発徑」の戦技だと勘違いする。実際の発徑は体内に衝撃を送り込む戦技であり、レナの衝風は至近距離から衝撃波を与える複合戦技なので厳密には違うが、どちらの戦技も相手に衝撃を与えるという点では酷似しているので見間違えても仕方がない。
「こ、この!!」
「ふんっ!!」
「うぐぁっ!?」
後ろから斬りかかろうとした兵士をレナは振り返りもせずに蹴り飛ばし、更に近くに存在した兵士から槍を奪い取ると戦技を発動させる。
「回転」
「うおおっ!?」
「ぐあっ!?」
「げふぅっ!?」
槍を回転させて近くにいた兵士達に叩きつけるが、奪い取った木造製の槍は数人の兵士を叩きつけた所で折れてしまい、レナは二つに折れた槍を見て溜息を吐きながら地面に落とす。武器の品質が悪かったという理由もあるが、レナ自身が槍の扱いに長けていないので簡単に折れてしまう。
(どうも槍は苦手だな。剣の方が性に合うんだけどな……我慢我慢)
その気になれば兵士から剣を奪い取る事も容易いが、そんな事をしてしまえば相手を殺しかねず、正体が気付かれてしまう恐れがある。王国の兵士は王妃に従っているが別に彼等に罪があるわけではなく、兵士達はあくまでも自分の職務を全うしているだけなので悪意はない。そのため、レナとしても不用意に殺害するのは避けたかった。
(ここは派手に行きますか……久しぶりの合成魔術だ!!)
両手を重ねてレナは意識を集中させ、初級魔法の「風圧」と支援魔法の「付与強化」を発動させて三日月状の風の刃を放つ。
「はあっ!!」
『ぎゃあああっ!?』
「な、なんだ!?」
「魔法かっ!?」
レナの前方に存在した兵士達は強烈な風圧を受けて吹き飛び、その光景を見ていた観光客達は驚愕する。その一方でレナは今度は後方に存在する兵士達に視線を向け、今度は「風圧」と「火球」を組み合わせた「火炎槍」を放つ。
「ふんっ!!」
「うわぁっ!?」
「あつっ!!熱い!?」
「あぢぃっ!?」
攻撃範囲が狭いので魔法を受けた人数は少なかったが、火炎の槍を受けた兵士達は悲鳴を上げて倒れこみ、必死に自分の身体に纏わりついた炎を振り払う。その様子を確認したレナは拳を握りしめ、技術スキルの「重撃」と初級魔法の「電撃」を組み合わせた一撃を放つ。
「どらぁっ!!」
「ぐぇえっ!?」
「うわぁっ!?」
「ぎゃあっ!?」
大柄の兵士に向けてレナの拳が叩きつけられた瞬間、強烈な衝撃と電撃が兵士に襲い掛かり、そのまま後方に吹き飛んで他の兵士を巻き込む。その光景を確認したレナは一息吐くと、剣無しでも十分に戦える事を確認する。
(久しぶりだな……この感覚。森で暮らしていた頃を思い出すよ)
ウルと共に深淵の森で暮らしていた頃を思い出し、昔は剣の技術が未熟だったので魔法を主体にして魔物と戦っていた事を思い返す。しかし、そんな感慨深げに浸っているレナの元に一筋の光が襲う。
「フレイムランス!!」
「うわっ!?」
声を聞いた瞬間にレナは咄嗟に身体を一歩後退させると、先ほどまで頭部が存在した位置に熱線が通過し、直後に数メートル離れていた壁が爆発する。その衝撃に観光客は悲鳴を上げ、付近に存在した兵士達も慌てて離れた。
(今のは火属性の砲撃魔法……おいおい、こんなに人が居る場所で何を考えているんだ?)
レナは燃え盛る壁に視線を向け、魔法で生み出した現象は消失が速いので闘技場が放火する恐れはないが、それでも大勢の人間がいる場所で威力に特化した砲撃魔法が放たれた事に動揺を隠せない。下手をしたら兵士どころか一般人も巻き込んでいたかもしれず、レナは魔法が撃ち抜かれた方向に視線を向ける。
「ふむ……今のを避けるか」
「き、貴様!!何を考えている!?こんな場所で砲撃魔法など……!!」
砲撃魔法を発動させたのはどうやら兵士の一人らしいが、兜を深く被って顔を覆い隠しており、何故かこの兵士だけが魔法使いの扱う杖を握りしめていた。すぐに隊長が無断で魔法を放った兵士に怒声を浴びせるが、相手は気にした風もなくレナに杖先を構える。
レナは両手を構えて自分を取り囲む兵士に視線を向け、決して正体が気付かれないようにしなければならない。剣を使えば剣筋で見抜かれる恐れもあり、ここは素手と魔法で対処を行う。
「槍を構えろ!!迂闊に近づくな!!」
「よし、やれ!!」
「逃がすなっ!!」
円を描くように取り囲んだ兵士達は槍を構えて同時に突き出す。しかし、それを見たレナは得意の「跳躍」で上空へと回避すると、空中で身体を回転させながら兵士の背後に着地する。そして鎧を身に付けた兵士に向けて両手を突き出す。
「ふっ!!」
「ぐああっ!?」
「何だと!?」
「こ、これは……格闘家の発徑か!!」
掌を押し当てた状態で風圧の魔法を叩きつける「衝風」を撃ち込まれた二人の兵士は吹き飛び、その光景を見た兵士を統率する隊長がレナの格闘家の職業の人間が扱える「発徑」の戦技だと勘違いする。実際の発徑は体内に衝撃を送り込む戦技であり、レナの衝風は至近距離から衝撃波を与える複合戦技なので厳密には違うが、どちらの戦技も相手に衝撃を与えるという点では酷似しているので見間違えても仕方がない。
「こ、この!!」
「ふんっ!!」
「うぐぁっ!?」
後ろから斬りかかろうとした兵士をレナは振り返りもせずに蹴り飛ばし、更に近くに存在した兵士から槍を奪い取ると戦技を発動させる。
「回転」
「うおおっ!?」
「ぐあっ!?」
「げふぅっ!?」
槍を回転させて近くにいた兵士達に叩きつけるが、奪い取った木造製の槍は数人の兵士を叩きつけた所で折れてしまい、レナは二つに折れた槍を見て溜息を吐きながら地面に落とす。武器の品質が悪かったという理由もあるが、レナ自身が槍の扱いに長けていないので簡単に折れてしまう。
(どうも槍は苦手だな。剣の方が性に合うんだけどな……我慢我慢)
その気になれば兵士から剣を奪い取る事も容易いが、そんな事をしてしまえば相手を殺しかねず、正体が気付かれてしまう恐れがある。王国の兵士は王妃に従っているが別に彼等に罪があるわけではなく、兵士達はあくまでも自分の職務を全うしているだけなので悪意はない。そのため、レナとしても不用意に殺害するのは避けたかった。
(ここは派手に行きますか……久しぶりの合成魔術だ!!)
両手を重ねてレナは意識を集中させ、初級魔法の「風圧」と支援魔法の「付与強化」を発動させて三日月状の風の刃を放つ。
「はあっ!!」
『ぎゃあああっ!?』
「な、なんだ!?」
「魔法かっ!?」
レナの前方に存在した兵士達は強烈な風圧を受けて吹き飛び、その光景を見ていた観光客達は驚愕する。その一方でレナは今度は後方に存在する兵士達に視線を向け、今度は「風圧」と「火球」を組み合わせた「火炎槍」を放つ。
「ふんっ!!」
「うわぁっ!?」
「あつっ!!熱い!?」
「あぢぃっ!?」
攻撃範囲が狭いので魔法を受けた人数は少なかったが、火炎の槍を受けた兵士達は悲鳴を上げて倒れこみ、必死に自分の身体に纏わりついた炎を振り払う。その様子を確認したレナは拳を握りしめ、技術スキルの「重撃」と初級魔法の「電撃」を組み合わせた一撃を放つ。
「どらぁっ!!」
「ぐぇえっ!?」
「うわぁっ!?」
「ぎゃあっ!?」
大柄の兵士に向けてレナの拳が叩きつけられた瞬間、強烈な衝撃と電撃が兵士に襲い掛かり、そのまま後方に吹き飛んで他の兵士を巻き込む。その光景を確認したレナは一息吐くと、剣無しでも十分に戦える事を確認する。
(久しぶりだな……この感覚。森で暮らしていた頃を思い出すよ)
ウルと共に深淵の森で暮らしていた頃を思い出し、昔は剣の技術が未熟だったので魔法を主体にして魔物と戦っていた事を思い返す。しかし、そんな感慨深げに浸っているレナの元に一筋の光が襲う。
「フレイムランス!!」
「うわっ!?」
声を聞いた瞬間にレナは咄嗟に身体を一歩後退させると、先ほどまで頭部が存在した位置に熱線が通過し、直後に数メートル離れていた壁が爆発する。その衝撃に観光客は悲鳴を上げ、付近に存在した兵士達も慌てて離れた。
(今のは火属性の砲撃魔法……おいおい、こんなに人が居る場所で何を考えているんだ?)
レナは燃え盛る壁に視線を向け、魔法で生み出した現象は消失が速いので闘技場が放火する恐れはないが、それでも大勢の人間がいる場所で威力に特化した砲撃魔法が放たれた事に動揺を隠せない。下手をしたら兵士どころか一般人も巻き込んでいたかもしれず、レナは魔法が撃ち抜かれた方向に視線を向ける。
「ふむ……今のを避けるか」
「き、貴様!!何を考えている!?こんな場所で砲撃魔法など……!!」
砲撃魔法を発動させたのはどうやら兵士の一人らしいが、兜を深く被って顔を覆い隠しており、何故かこの兵士だけが魔法使いの扱う杖を握りしめていた。すぐに隊長が無断で魔法を放った兵士に怒声を浴びせるが、相手は気にした風もなくレナに杖先を構える。
6
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。