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未知の生命体との遭遇

169あっけない戦い

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 ロボの宇宙船の中では、
サトイとロボにコーA.Iによる討論会となっている。

 五人の子供達はヨイを除いて、
異質体同士の討論にかなりの関心を持っている様子である。

 異質体同士の討論中に、ロボの宇宙船は輸送艦の屋上に着いたが、
電波発信解明の本質から離れた討論においては結論を出せない様子で、
子供たちも誰一人下船する事ができずにいた。

 三体の異質体同士の討論まとめは、
何故か業を煮やした態度のレイちゃんが出した。

「要するに、
生物兵器から発せられた電波は、内容のある救助要請弾丸の類ではなくて、
現状報告として、内容のないただの活動しているだけの状況を送った。でしょう」

「そうです。変化の部分はなく、同じ波長の電波でしたので、
間違いないでしょう。」
と、コーA.Iの声が宇宙船内に響いた。

「ではここから先は、母様達の管轄だわ。
コーA.I、状況を知らせて、対策するように連絡してあげて。」
と、キズナは討論会を打ち切った。

 戦略運営室では、
鹿島とトーマス元帥に運営委員四人が集まっていた。

「兵物兵器は、活動している状況を送った。
との連絡を受けたので、みんなの感想を知りたい。」
と、珍しくカジマ提督が口火を切った。

「別に珍しいことではないでしょう。」
と、マーガレットは当然だろうとの発言をした。

「珍しくもないとは?」
「ほかの場所に探査に向かわせたなら、報告も大事だが、
まずは常に安否確認でしょう。
おそらく、タローなるものは、連絡方法ができなかったので、
一方通行の連絡方法しかなかった、だけでしょう。

「では、所在地確認も含まれているのでは?」
と、テテサ教皇は顔を曇らせた。

「直ぐに、閣下達は砂漠に移動して、電波を出し続けてください!」
と、マーガレットは立ち上がった。
「そんなことをしては、甲羅飛行物体を、呼び寄せてしまうのでは?」
と、
マティーレは身震いするかのように震えだした。

「どうせ奴らは来る。
なら、閣下たちは砂漠地帯で、迎え撃ってください。」
とマーガレットはきつい顔を鹿島に向けた。

 鹿島とトーマス元帥は顔を見合わせて、
二人は別の席に移動するとパソコン画面に見入った。

「最初の接触時には、モモハラ草原いるエルフ種族の第六師団よりも、人種がいいだろう。」
「では、オトロシ州にいる、第二師団を使いますか?」

「ポールの第七師団は砂漠戦が得意だから、
ポール司令官を使いましょう。」
「ポール司令官はモーゴー州平京で、
チベルトガイア教州知事と会談中ですし、
モーゴー州の運営を、一時チベルトガイア教州知事に預けますか?」
「だね。」

 第七師団の野営地の外側には、
多くの避雷針を乗せたキャタピラ付き丸太杭うち機械が並んでいる。

 黒い雲の下では、
「稲妻!」と鹿島が叫ぶと、
最初の頃よりいくらか太くなった稲妻は、避雷針に向かっていった。

「隊長!映像で見たときは、かなり雷柱は多かったが、
一本だけですか?」
「おまえな~。めちゃ疲れるのだよ。」
と言って、鹿島は回復薬を飲みながら、息も絶え絶えに返事している。
「怪物も疲れるのだ?」
「誰が怪物だ。」
「周りには、隊長しかいませんが?」
「言っていろ。」
「生物兵器の中の赤い微粒子達も出てこないが、疲れるのでしょうか?」
「俺と同じ状態で、ぶっ倒れているよ。」
「たった一本の雷柱しか出ないけど、
一日何度ぐらいできるのでしょうか?」

「そうよ。
たった一本だが、無理すれば、二回出来るかもしれない、
何もできないやつらと違って、
俺と精霊達だけが、翌日は体がだるくなって動けなくなるだけだ。」

ようやく息を整えた鹿島は、ポールの皮肉に答えながらも、
同情を得ようと皮肉を返した。

「俺らは、怪物ではなく、普通の人間ですから。
ただ、運営委員会からの発表で、
俺が宇宙からの到来者だと女房子供達が知ってしまい、
説明するのに苦労しました。」

「お前は、俺の子ども達よりかなり年上の、
二人の子持ちになったのだな~。」
「可愛い子供たちです。」
「のろけていろ。」
「女房がまたかわいい奴です。」
「しるか。知りたくなどない。」
と言って、鹿島はとうとう寝転んでしまった。

 七日目の雷が起きた後に、コーA.Iから鹿島に無線が入り、
「月の裏側から、一個の宇宙船が現れて、この惑星に向かってきます。」

 鹿島は慌てて起き上がり、三本の回復薬と、
わずかながら集まっている赤い微粒子たちと共に飲み込んだ。

「十分後に到着します。」
「速え~。」
と言いながら鹿島がポールに目を向けると、
ポールは緊張の面持ちで黒い空を見つめていた。

 鹿島はポールを見つめながら、
この場に呼んだことを後悔か悔やみなのか、
申し訳ないとの苦渋の顔をした。

 亀の甲羅型の宇宙船が黒い雲を散らしながら、
ゆっくりとした動きで降下してきた。

 亀の甲羅型の宇宙船は四本の足を延ばすと、
引っ込んでいた頭の部分が伸びて口の部分が開くと階段が現れた。

 鹿島はゆっくりと階段に向かって歩き出した。

 階段はエスカレーターになっていた。

 虹色に揺らめく半透明な壁を、
鹿島は緊張しながらも、
肌に粘り着く湿気を感じながらさらに奥へと入っていった。

「久しぶりだったなタロー。」
と言って口裂け怪物は長い舌を出しながら鹿島の肩をつかむと、
顔と口は鹿島の首に向かってきた。

 鹿島の頭の中に、五センチの分厚い百科辞書百冊分と思える情報と、長い舌を出した口裂け怪物の思いがなだれこんでした。

 ほんの短い動作の中ですべてを悟った鹿島は、頭の中が沸騰するぐらいの暑さを感じながらも、

長い舌を出した口裂け怪物の顎をつかむと同時に投げ飛ばした。

「ニイタカヤマ、ノボレ!」
と鹿島は叫んだ。

 残りの口裂け怪物は、何事が起きたのか理解できないのか、
立ち尽くしているだけであった。

 鹿島の傍の壁が開くと同時に、
返し刃先の付いたモリと思える棒が飛んできた。

 鹿島は反射的に、モリと思える棒と、
投げたと思われる怪物の頭をレーザー銃で消し炭にした。

 戦闘開始との暗号電を受けた防護密封姿のポール達第七師団は、
甲羅型の宇宙船に突入してきた。

 第七師団は、
十七匹の怪物を捕獲して甲羅型の宇宙船を制圧し終えた。

「隊長!なんでこんなに、簡単に制圧で来たのですか。」
「俺の方が拍子抜けした。」
「何で突入可能だと判断したのですか?」

「奴らは、戦闘能力を使えないのだ。
いや、自分では使いたくないのだ。
すべての戦いは、支配したものに快楽を与えて、
支配した者たちを使う事しかしたくないのだ。」

「なして?」
「疲れるから。」
「じゃ~。竜巻を起こし、雷を発生させる怪物はいないの?」
「実は、その予備の怪物は、この惑星に居るのだ。」
「何処に?」
「呪いの樹海中に、何千万人もいるのだ。」
「ゾンビウイルスの染色体を、持っている彼らが?」
「だ!」
「あ奴らと接触させていたら、やばかったですね。」
「冷や汗もんだよ。」
「でも隊長はなんでわかったの?例の怪物の力?」
「ガイア女神様から貰ったらしい、接触テレパシーだ。」
「え~。接触すると、思っていることをすべてわかるの?」
と言いながら、ポールは後ずさり始めた。

 鹿島はオデコに手を付けて、「おいで、おいで。」をポールに向けた。


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