マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第4章 覇気使い四天王。

第151話 アトラスとの攻防。前編

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 高級車のリムジンへ乗り込み、魔界連合へ移動する品川達。

「……」

 だが、誰一人も話すことなく静寂だ。
 黒政だけはルービックキューブで遊びながら暇を潰していた。

「……あの~? 名前を聞いてもいいですか?」

 そこで沈黙に耐えれなかったのか、木戸から声を掛けた。
 若い者が率先して行動をしてくれたので品川達の株は上がる。

「魔界連合十三総長、三番総長の村井黒政」

 気難しいだと思っていた奴がスラスラと名乗り、更には役職まで教えてくれた。
 この仏頂面、顔は見えないが実はお喋りなのでは?と全員の距離が縮まろうとしていた。

「じゃあ村井さん。何故私達に用があったんですか?」

「閻魔会長が、この件に偶然だろうが関わった人物を収集しろという命令を下された。俺は命令に従ったまで、お前等を無事に本部まで送り届ければ仕事は終わり。後はどうにでもなれ」

 一気に距離が遠くなり、一層気まずくなる。

「……あ、南雲がどっかに行ったままや」

 そこで吹雪が突然と南雲の事を思い出した。

「南雲暖人なら、ずっと一緒に乗っている」

「「「「え?」」」」

「本部に着けば分かる」

 そしてここからの会話は一切なくなり、気まずくなる一方だった。
 魔界連合本部へ辿り着くと、周辺は深い霧に包まれていた。

「俺が来た時は霧に包まれてなかったで?」

「緊急措置だ。ここでの戦いが想定された時、被害を増やさない為に発動される霧だ。一度でも霧の中に入れば結界で作られた別世界となり、死人は出ない」

 そう説明しながら黒政はトランクの方へ向かっていた。

「「「「?」」」」

 四人が怪訝な表情で黒政を見ていた。
 黒政はトランクを開けると、そこには……

「むー! むー!」

 縄で拘束され、涙目に何か訴えっている一華と白目を向いて冷凍マグロ状態の南雲がいた。

「ありがたいな、ちゃんと生きてたか。今から出すから暴れるな。そして次から俺に三度言わせるな、いいな?」

 黒政の冗談じゃない警告で一華は必死に頷く。

「これって拉致なんじゃ……」

「おい弁護士、なに目そらしてんねん!」

「いや~まさか、このご時世で刑事を拉致する極道がいるとは思わねぇだろ……それにコイツ等に法律どうこうの話が通じねぇから意味ないだろ?」

 吹雪は思い出した。悪魔には人権ないから法律も効かない、それは魔界連合に所属している人間にも適用されると言われていた事に。

「貴様、まさか忘れていたのか?」

 雅は今思い出した吹雪を見て、突っ込む。

「いや、ちゃんと覚えてたんだよ。うん、魔界連合は法律に適用されねぇから、訴えても勝てないって言ってたよな!」

「なんで俺に向かって言うんだよ」

 何故か知らない品川へ話を向ける吹雪。

「おい貴様、私の目を見て話せ」

「おいアホパーマ、しっかり物のメイド長が呼んでんぞ」

 もはや吹雪を怪しむ目で品川は雅へパスする。

「……」

 黒政を見るが、俺には関係ないと言わんばかりに一華の拘束を解いていた。

「……はい、忘れてました。忙しくて神崎の話は重要な部分だけ聞いてました」

「お前は本当に……」

 雅のウダウダと説教を聞きながら吹雪は頭下げていた。

「ミヤービって性格キツイ人だったんだ。それにアホパーマさんも可哀想……」

 木戸は怒られている吹雪に同情を向ける。が……

「いや、アイツを細かく見てみろ」

 無表情の品川が吹雪の胸辺りに指差しする。木戸も目を細めて注意深く見ると……

「……」

 反省してる振りして、高速操作で携帯を弄っていた。

「教師以外の説教なんて聞かねぇ耳だからな。ウダウダ言われてる間は、大人しくしてやり過ごす奴だ。害はねぇがマナーには良くねぇな」

「品川先生も人のこと言えないですよ」

「確かにな」

 自分に呆れながら煙草を咥えて着火する。

「ねぇ? 品川先生、多分未成年うんぬんって言われるかもしれないけど……」

「ほらよ」

 木戸が何が言いたいのか理解し、品川は煙草一本を差し出した。

「え?」

「セブンスターで良ければ吸えよ。まだ煙草のストックはある」

 木戸は動揺しながらも品川から一本だけ貰う。

「てっきり、法律違反って言われるかと……」

「相手が何かする事に否定はしねぇよ。悪い事するなら悪い事する。それがちゃんと責任取れるなら、俺の仕事じゃねぇ」

「――じゃ火ください」

 品川は片手で蓋を開き、点火させる。
 そして木戸が咥えた煙草の先端まで火種を接近させ、着火させた。

「普段何吸ってんの?」

「メビウスです」

「いいじゃん」

 品川と木戸は煙草雑談をする。

(会長が言う程、コイツ等からは圧が見えない。かと言って油断がある訳でもない……伸び代はあっても脅威ではないな。所詮はお遊びの喧嘩か……特に赤髪とパーマのどっちかが心が潰れるな)

 南雲を抱え、品川と吹雪を観察していた黒政がそう思っていた。

「品川くん……」

 拘束を解かれた一華は状態を確認しながら、真っ先に品川へ接近する。

「刑事さん、大丈夫か?」

「えぇ、品川くんも大丈夫?」

「まだ意識はクラクラするが、まだ会話ぐらいならできる」

「そうなの……病院とか行かなくていいの?」

「閻魔さんの話だ。ちゃんと聞いておかねぇと」

「閻魔さん? まさか魔界連合会長の閻魔光?」

「あぁ、そして刑事さんを拐ったのが魔界連合十三総長、三番総長だ」

「え? 普通総長って組長と組員を統括する立場よ。なんで十三人もいるの? それだと覇権争いが……」

「次期会長候補を決める為だ」

 一華が疑問に思っている事を黒政が返答する。

「だから、それって覇権争いなんじゃ?」

「普通の覇権争いなら一番総長で決まりだ。だが悪魔の覇権争いは、十三総長全員が会長を決め、最後会長に承認されれば、晴れて会長だ」

「それって閻魔さんの気分次第じゃねぇか」

「あぁ、子分は親には逆らえねぇ。子分が黒だと言っても、親が白って言えば白になる極道の世界。けれど悪魔が提示する契約は嘘偽りが存在しない」

「――魔王契約書か」

 品川にとっては見に覚えのある物だった。
 半年前に忍が鞍魔と契約した。個人的に、なんだかややこしい契約書を思い出した。

「ウロボロスの件は知ってる。大分無茶したらしいな……」

 黒政はいきなりと品川の右腕を掴み引っ張り、袖を捲る。
 普段気にしていなかった一華と木戸も品川の右腕を見て、驚愕に包まれる。
 生気が感じられない青白い不気味な腕だったからだ。

「幻魔と戦って、右腕一本で良かったな。酷い奴は恐怖に染まった半分の顔で戻ってくるのに……神崎忍と会長に教わったな」

 誰も言ってない事を黒政は当てる。
 品川は表情は変えないが強張り驚愕する。

「会長は話さない。俺達は見ていただけだ……雑談はここまでにして行くぞ、会長が待っている」

「あぁ、そうだった」

(え? こんなにすんなりと合わせてくれるの? 極道会のトップ、それも極道とマフィアさえも震撼させた伝説の極道)

 一華にとってはチャンスでもあり恐怖だった。
 警察にとって魔界連合は何故か逮捕できない存在であり、常人離れした組員、伊波以外は被害は出てこない謎の暴力団というイメージ。

(ここでトップの正体だけでも掴めたら、いつでも暴力団を摘発できる。しかも総長が刑事を拉致したんだから、逮捕と捜査する口実はできた)

 広間へ案内されながら一華は魔界連合をガサ入れする口実ができ、歓喜していた。

「……ここまで来て、最悪な状況にも関わらず捜査しようと思っているのは感心する」

 だが、その思いは先頭歩いている黒政によって見抜かれていた。

「……さあ何のこと?」

 コレは相手の反応を見て、何考えているのか突き止める行為だと思い、一華ははぐらかす。

「覇気は信じても悪魔は信じられないか。確かに、見た目は人間と変わらない特殊能力を持った人間かもしれんな……」

 黒政は立ち止まる。続いていた五人も立ち止まった。

「品川修二は会長に何聞くか質問を纏め、吹雪雅人はこの先の不安とどう戦えるか迷走、木元雅は一刻も早く神崎忍に会いたい、木戸愛菜は悪魔はなんだろう? そして桜草一華、謎の暴力団を摘発する構え……さて、説明してもらおう。この静寂でどうやって反応を見る?」

 一華の心臓は大きく鼓動を繰り返す。
 この男は容赦なく一人の刑事を拉致するイカれた極道、しかも一声だけで判断する事もなければ、心に思っている事がピタリと当てられてしまっていた。
 もしかすると始末されるのではと思っていた。

「俺は振り向きすらせず、お前等の心は読み取れた。それに今ここで始末するのは、俺の仕事に入っていない――俺の仕事は無事に六人を会長の所まで案内する事だ」

 そして黒政は正座で座り込み、襖を開ける。

「会長、覇気使い五人と人間一人を案内してきました」

「ありがとう。礼儀はいらんから入ってくれ」

 座椅子へ座り、猪口で酒を飲みながら待っていた閻魔がいた。

「お許しが出た。入れ」

 品川が先に入り、続々と入って行く。南雲だけは気絶しているので、黒政が鬼塚へ渡した。

「それでは俺は失礼します」

「あぁ、ご苦労。善吉に、たまに帰ってこいって言ってくれ」

起きていれば・・・・・・、そう伝えておきます」

 そして襖をピタリと閉めた。

「さて、揃ったな。現状を話すとすると……まぁまぁ悪い方だ」
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