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恋愛編
17話【off duty】新條 浩平:統計学(藍原編)
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土日をおうちで論文作成に費やした。……なのに!
「ダメだわ! 全っ然わかんないっ!」
データは揃った。何とか関係性を見つけようと思って、パソコンソフトで近似式とか作ってみたけど、……まったく意味がわからない。どう解釈すればいいのかも、そもそもこれが正しいのかも! 何ひとつわからないわ! まったく、医者になったら統計とか解析とかこんなに必要なのに、学生時代には誰も教えてくれないんだからっ! 困った。困ったわ……。
ひとりで部屋で頭を抱えていると、お隣さんの部屋から物音が。……そうか、新條くん、もう退院したのよね。テスト、大丈夫だったのかしら。……そういえば新條くん、理学部だっていってたな。先週のテストは、統計学だって……。ひょっとしたら、こういうの、得意かしら……。
ちょっと悩んだけど、締め切りも近いし、背に腹はかえられない!
ピンポーン。
驚いたような表情で、新條くんが出てきた。
「あ、あの、お休みのところごめんなさい! 実はちょっと、相談があって……」
事情を説明して、持ってきたノートパソコンの画面を見せる。手を借りたいんだけど、どんな助けが必要なのか説明することすらできないくらい、統計の意味が分からない……。新條くんが、目を細めてモニターに顔を近づけた。
「えっと……医学のことは全然わからないですけど、先生のいいたいことはわかりました。……なるほど、多変量解析したいってことですね?」
「た、多変量……?」
ごめん。それすらわからないわ。
「つまり、いくつかパラメータがあって、関係性を調べたいんですよね。あるいは、仮説を検証するのかな。これとこれは関係があると思う、って先生が考えていて、それを証明したいとか?」
「えっと、たぶん、そんな感じ……」
うわあ、あたし、バカ丸出しじゃないの、恥ずかしい。医者なのにこんなのもわからないのかって思われてるわ、きっと。
新條くんが、ニコッと笑った。
「いいですよ。力になれると思います。話、詳しく聞かせてください。うち、散らかってるけどよければ……」
そういって通り道を開けて、それからハッとしたように突然おたおたし始める。
「あっ、うちはまずいですよね、じゃあ藍原先生の部屋……も、まずいか。えっと、今から、喫茶店とか、行きます?」
新條くんが頬を赤くしてる。……ああそうか、気を遣ってくれてるのね。こないだ楓ちゃんと押しかけて、変なことになっちゃったから、今度はそうならないようにって……うふふ、新條くん、可愛い。なんていい子なのかしら。
「じゃあ、駅前のカフェ、どう?」
「あっ、はいっ、着替えてすぐ行きますっ!」
「ダメだわ! 全っ然わかんないっ!」
データは揃った。何とか関係性を見つけようと思って、パソコンソフトで近似式とか作ってみたけど、……まったく意味がわからない。どう解釈すればいいのかも、そもそもこれが正しいのかも! 何ひとつわからないわ! まったく、医者になったら統計とか解析とかこんなに必要なのに、学生時代には誰も教えてくれないんだからっ! 困った。困ったわ……。
ひとりで部屋で頭を抱えていると、お隣さんの部屋から物音が。……そうか、新條くん、もう退院したのよね。テスト、大丈夫だったのかしら。……そういえば新條くん、理学部だっていってたな。先週のテストは、統計学だって……。ひょっとしたら、こういうの、得意かしら……。
ちょっと悩んだけど、締め切りも近いし、背に腹はかえられない!
ピンポーン。
驚いたような表情で、新條くんが出てきた。
「あ、あの、お休みのところごめんなさい! 実はちょっと、相談があって……」
事情を説明して、持ってきたノートパソコンの画面を見せる。手を借りたいんだけど、どんな助けが必要なのか説明することすらできないくらい、統計の意味が分からない……。新條くんが、目を細めてモニターに顔を近づけた。
「えっと……医学のことは全然わからないですけど、先生のいいたいことはわかりました。……なるほど、多変量解析したいってことですね?」
「た、多変量……?」
ごめん。それすらわからないわ。
「つまり、いくつかパラメータがあって、関係性を調べたいんですよね。あるいは、仮説を検証するのかな。これとこれは関係があると思う、って先生が考えていて、それを証明したいとか?」
「えっと、たぶん、そんな感じ……」
うわあ、あたし、バカ丸出しじゃないの、恥ずかしい。医者なのにこんなのもわからないのかって思われてるわ、きっと。
新條くんが、ニコッと笑った。
「いいですよ。力になれると思います。話、詳しく聞かせてください。うち、散らかってるけどよければ……」
そういって通り道を開けて、それからハッとしたように突然おたおたし始める。
「あっ、うちはまずいですよね、じゃあ藍原先生の部屋……も、まずいか。えっと、今から、喫茶店とか、行きます?」
新條くんが頬を赤くしてる。……ああそうか、気を遣ってくれてるのね。こないだ楓ちゃんと押しかけて、変なことになっちゃったから、今度はそうならないようにって……うふふ、新條くん、可愛い。なんていい子なのかしら。
「じゃあ、駅前のカフェ、どう?」
「あっ、はいっ、着替えてすぐ行きますっ!」
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