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恋愛編
18話【off duty】新條 浩平:「デートしてください」(新條編)
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突然藍原先生が来たときにはびっくりした。論文を書きたいのに統計学がわからなくて苦労しているらしい。なんだか、しどろもどろに説明する藍原先生が、とても可愛く見えた。あんなに頭がよくて、外来ではすごく頼もしくて、俺を助けてくれたときなんてドラマに出てくる医者みたいにカッコよかったのに、今はこんなに恥ずかしそうに、何すればいいのかわからない、っていってる。俺、理学部入ってマジよかった。理学部なんて就職先がないとか、親には散々バッシングされたけど、そのおかげで今、藍原先生の役に立てるんだもんな。
おしゃれなカフェでパソコンを開いて、データを見ながら先生の説明を聞く。……なんかちょっと、デートみたいだ。
「……これなら、重回帰分析で、変数を選んで……ああ、出ましたよ。この2つはよく相関してますね」
データの打ち込まれたエクセルの画面を操作して、先生に説明。先生は眉間にしわを寄せながら、ノートに何やら一生懸命書き込んでいる。
「ああ、そうなの! このデータに関連性があれば面白いなって思ってたのよ。これで考察が進むわ。新條くん、ホントありがとう! すごく助かったわ」
「これくらいならいつでもいってください」
キラキラしてる藍原先生を見ると、胸が疼いてしまう。……先生、やっぱり可愛い。白衣着てる先生も大好きだけど、素の先生も……。
「ねえ、何かお礼させてちょうだい。共著に名前を載せてあげたいくらいだわ。バイト料払うとか」
ほんの数時間統計を教えてあげたくらいで、おおげさだなあ。でも……お礼、してくれるんなら……
「……じゃあ今度、デートしてください」
「え」
うわっ、藍原先生が固まった。やっぱりいい過ぎたか。でも先生、病院で俺から告ったの、すっかり忘れてるみたいだし、全然男として意識されてない気がするから、これくらいいわないと……。
「お、俺、病院でいったこと、本当だから……。先生忙しいだろうけど、お礼してくれるんなら……1回くらい先生と、出かけたい」
「あの……えっと、それは……」
ああ、俺、藍原先生のこと、困らせてんな。最悪だ。そりゃそうだよな、俺なんか先生よりずっと年下で、恋愛対象外だよな。
「……やっぱり、無理っすかね。俺、先生のこと好きっていったの、勢いだったかもしれないけど、気持ちは本当なんです。でも、まだ二十歳の大学生だし、先生はもっと大人の人がいいですよね……」
「そ、そういうわけじゃないけど……」
やべえ、自虐的になってきた。
「そりゃそうっすよね、初めて会ったときは俺グロッキーでげろげろ吐いてたし、しぼんだチンコまで見られて、そんな奴、恋愛対象にはならないっすよね」
「そ、それは関係ないわ! だからいったでしょ、誰だって酔っ払ったらチンコはしぼむのよ、気にしないで!」
「しかも、痔まで見られて、ケツまで晒して……」
「そんな気に病まないでよ、あなたのケツ、なかなかいい反応してたじゃない」
「……え」
「……あ」
いい反応って……そうか、前立腺触られてうっかりビクッてなったの、やっぱり先生、気づいてたんだ……。もうサイテーサイアクだ、こんなの絶対脈あるわけない。そうだよな、考えてみたら、満員電車で勃起してるのも見られたし、大橋と楓さんのセックス聞いて勃起してるのも……くそ、なんだよ、どうして付き合ってもいないのに、こんなに勃起してる姿晒す羽目になってんだよ、俺。それだけじゃない、すでにチンコも見られてるし、ケツまでいじられてる。それで先生を好きになるとか、俺、完全に変態野郎じゃんか。
「……すみません、忘れてください。お礼、いらないっす。むしろ、こないだ助けてもらって俺がお礼しなきゃいけないくらいなんで」
席を立とうとした俺の手を、藍原先生が掴んだ。
「ま、待って!」
藍原先生が、頬を赤くして俺にいった。
「ご、ごめんなさい。そんな理由で恋愛対象にならないわけじゃないのよ。チンコ触ったのだってお尻の穴に指入れたのだって、全部仕事だから! そんなこと、あたしは全然気にしないわよ。でもあたし、その、患者さんと、お付き合いとかは、ちょっと……」
「患者と付き合う医者なんて、たくさんいるよ」
「それはそうかもしれないけど、あたしは、分けたいのよ」
「じゃあ俺、もう藍原先生の外来には行かないよ。それならいいでしょ? 先生の患者でなくなればいいんでしょ? 第一、俺たちお隣さんだし。一緒に部屋飲みもしたし、先生、俺に梨届けに来てくれたじゃん。ああいうの、患者さんにはしないんじゃないの?」
「う……」
「患者さんに、統計教えてもらったり、しないよね?」
「うう……」
「ねえ先生。お礼のデートだから。1回きりでいいから。それ以上はしつこくしないから……」
藍原先生はすごく長い時間かけて悩んだあげくに、小さくうなずいた。
「……わかったわ。お礼がしたいっていったのはあたしだもの。行きたいところ、考えておいて? 論文が終わってからじゃないと時間ないから、11月に入ってからになるわよ」
やった、許可が下りた! 藍原先生とデート。どこがいいかな、大人っぽく映画館? いや、ダメだ、映画なんて黙って隣に座って見るだけだから、つまらない。……遊園地。子供っぽいといわれようが、藍原先生とたくさんおしゃべりして、あわよくばスキンシップできるのは、遊園地しかない。丸一日使って、藍原先生と、遊園地デートだ。
おしゃれなカフェでパソコンを開いて、データを見ながら先生の説明を聞く。……なんかちょっと、デートみたいだ。
「……これなら、重回帰分析で、変数を選んで……ああ、出ましたよ。この2つはよく相関してますね」
データの打ち込まれたエクセルの画面を操作して、先生に説明。先生は眉間にしわを寄せながら、ノートに何やら一生懸命書き込んでいる。
「ああ、そうなの! このデータに関連性があれば面白いなって思ってたのよ。これで考察が進むわ。新條くん、ホントありがとう! すごく助かったわ」
「これくらいならいつでもいってください」
キラキラしてる藍原先生を見ると、胸が疼いてしまう。……先生、やっぱり可愛い。白衣着てる先生も大好きだけど、素の先生も……。
「ねえ、何かお礼させてちょうだい。共著に名前を載せてあげたいくらいだわ。バイト料払うとか」
ほんの数時間統計を教えてあげたくらいで、おおげさだなあ。でも……お礼、してくれるんなら……
「……じゃあ今度、デートしてください」
「え」
うわっ、藍原先生が固まった。やっぱりいい過ぎたか。でも先生、病院で俺から告ったの、すっかり忘れてるみたいだし、全然男として意識されてない気がするから、これくらいいわないと……。
「お、俺、病院でいったこと、本当だから……。先生忙しいだろうけど、お礼してくれるんなら……1回くらい先生と、出かけたい」
「あの……えっと、それは……」
ああ、俺、藍原先生のこと、困らせてんな。最悪だ。そりゃそうだよな、俺なんか先生よりずっと年下で、恋愛対象外だよな。
「……やっぱり、無理っすかね。俺、先生のこと好きっていったの、勢いだったかもしれないけど、気持ちは本当なんです。でも、まだ二十歳の大学生だし、先生はもっと大人の人がいいですよね……」
「そ、そういうわけじゃないけど……」
やべえ、自虐的になってきた。
「そりゃそうっすよね、初めて会ったときは俺グロッキーでげろげろ吐いてたし、しぼんだチンコまで見られて、そんな奴、恋愛対象にはならないっすよね」
「そ、それは関係ないわ! だからいったでしょ、誰だって酔っ払ったらチンコはしぼむのよ、気にしないで!」
「しかも、痔まで見られて、ケツまで晒して……」
「そんな気に病まないでよ、あなたのケツ、なかなかいい反応してたじゃない」
「……え」
「……あ」
いい反応って……そうか、前立腺触られてうっかりビクッてなったの、やっぱり先生、気づいてたんだ……。もうサイテーサイアクだ、こんなの絶対脈あるわけない。そうだよな、考えてみたら、満員電車で勃起してるのも見られたし、大橋と楓さんのセックス聞いて勃起してるのも……くそ、なんだよ、どうして付き合ってもいないのに、こんなに勃起してる姿晒す羽目になってんだよ、俺。それだけじゃない、すでにチンコも見られてるし、ケツまでいじられてる。それで先生を好きになるとか、俺、完全に変態野郎じゃんか。
「……すみません、忘れてください。お礼、いらないっす。むしろ、こないだ助けてもらって俺がお礼しなきゃいけないくらいなんで」
席を立とうとした俺の手を、藍原先生が掴んだ。
「ま、待って!」
藍原先生が、頬を赤くして俺にいった。
「ご、ごめんなさい。そんな理由で恋愛対象にならないわけじゃないのよ。チンコ触ったのだってお尻の穴に指入れたのだって、全部仕事だから! そんなこと、あたしは全然気にしないわよ。でもあたし、その、患者さんと、お付き合いとかは、ちょっと……」
「患者と付き合う医者なんて、たくさんいるよ」
「それはそうかもしれないけど、あたしは、分けたいのよ」
「じゃあ俺、もう藍原先生の外来には行かないよ。それならいいでしょ? 先生の患者でなくなればいいんでしょ? 第一、俺たちお隣さんだし。一緒に部屋飲みもしたし、先生、俺に梨届けに来てくれたじゃん。ああいうの、患者さんにはしないんじゃないの?」
「う……」
「患者さんに、統計教えてもらったり、しないよね?」
「うう……」
「ねえ先生。お礼のデートだから。1回きりでいいから。それ以上はしつこくしないから……」
藍原先生はすごく長い時間かけて悩んだあげくに、小さくうなずいた。
「……わかったわ。お礼がしたいっていったのはあたしだもの。行きたいところ、考えておいて? 論文が終わってからじゃないと時間ないから、11月に入ってからになるわよ」
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