ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!

アイイロモンペ

文字の大きさ
441 / 848
第十五章 ウサギに乗った女王様

第440話 冒険者管理局で目にしたのは…

しおりを挟む
 ヴァイオレットお姉さんの仕事を決めるため、最初に連れて来たのは冒険者管理局。
 管理局長をしている父ちゃんを紹介し、父ちゃんにここへ来た目的を告げると。

「辺境の開拓に行ったのに、大人達が全然働かなかったのか。
 そりゃ、災難だったな。
 この仕事で良ければ、俺は歓迎するよ。
 納得するまで、自由に見学して行ってくれ。」

 ヴァイオレットお姉さんの事情を聞いて父ちゃんは、そんな声を掛けていたよ。
 と言う訳で、父ちゃんから冒険者管理局の仕事のあらましを聞いた後、管理局を色々と見て回る事になったの。

 先ずは、冒険者登録の受付をしている一階のロビーを見学に行ったよ。

「おい、冒険者を名乗るには登録が必要だと聞いたんだが。
 ここでするんだろう、とっととその登録ってもんをしてもらうじゃねえか。
 ったくよ、冒険者ってのは勝手に名乗ってりゃ良いもんじゃねえのか。
 面倒くせえったらありゃしないぜ。」

 どうやら、おのぼりさんらしきガラの悪いニイチャンが、カウンターで受付のお姉さんに凄んでいたよ。
 脅せば、細かい事は言わずにすぐ登録してくれると思っているのかね。

 そんなニイチャンに、受付のお姉さんは。

「冒険者登録のお申込みですね。
 それでは、こちらの書面を良くお読みの上、申請書の所定の欄を記入してご提出いただけますか。
 なお、今、お申込みいただくと、明日からの冒険者研修の履修が可能です。
 冒険者研修は一週間のカリキュラムとなっております。
 研修の全過程を修了することで、冒険者登録が可能となります。」

 ニイチャンの横柄な態度など気にする様子もなく、笑顔を浮かべたまま冒険者登録の申請用紙を差し出していたよ。

「何だと! 一週間の研修だと?
 そんな、煩わしいことをやってられるか!
 つべこべ抜かさずに、さっさと冒険者登録をしやがれ!」

「冒険者登録には法の定めに従い研修が必須となっております。
 研修を履修してない方を登録することは出来ません。」

 ニイチャンの無茶な要求にも、お姉さんは笑顔を絶やさずに応答していたよ。
 すると…。

「このアマぁ、大人しく聞いていれば調子に乗りやがって!
 何が法の定めだ!
 一々、法に従ってたら冒険者稼業が成り立たねえだろが!
 冒険者ってのは、オメエみてえにうるさい事言う奴を力でねじ伏せるもんなんだよ。
 痛い目に遭いたくなければ、サッサと登録しやがれ。」

 激昂したニイチャンはお姉さんの胸倉を掴むと、こぶしを振り上げて恫喝したんだ。
 そして、次の瞬間。

「痛ててぇ、こら放せ、放しやがれ!」

 お姉さんは胸倉を掴まれた手を捻り上げると。
 そのまま力任せに、ニイチャンをカウンターに押さえ込んだよ。

「あなたのしたことは、れっきとした公務執行妨害です。
 あなたがヘッポコで良かったですね。
 もし私を殴っていたら、暴行罪も加わって数年の強制労働刑でしたよ。
 冒険者管理局への公務執行妨害は、特例で一月の矯正措置となっております。
 一月の間、十分反省して、真人間になってくださいね。」

 お姉さんは、ニイチャンをカウンターに押さえ付けたまま、宣告したの。
 この間、お姉さんは終始笑顔を絶やすことは無かったよ。

「凄い…。
 あの方、あんな無法者の恫喝に全く怯みませんでした。
 しかも、自分より体格の良い殿方を難無く制圧してしまって…。」

 受付のお姉さんの対応を見て、しきりに感心しているヴァイオレットお姉さん。

「凄いでしょう。
 冒険者管理局は、無法者が常に訪ねて来るからね。
 あの程度の護身術はみんな嗜んでいるんだよ。
 バイオレットお姉さんもここに就職したらあのくらいできるようになるよ。」

「えっ…。」

 冒険者管理局の仕事にはあのくらいは必須だと言うと、ヴァイオレットお姉さんは絶句したよ。
 就職を決めるまでは、『生命の欠片』でレベルを底上げすることは教えないからね。
 絶句するのも無理はないかも。

「お姉さん、ならず者の対応お疲れさま。
 丁度、冒険者研修施設を見学に行くから、おいら達が預かってくよ。」

「あっ、陛下、いらっしゃいませ。
 よろしいのですか?
 陛下にお願いするのは気が引けるのですが…。」

 おいらはお姉さんを労うと同時に、ならず者を預かると申し出たの。
 そんなのよくある事なんだけど。
 面識のないヴァイオレットお姉さんの目を気にしたのか、お姉さんは遠慮してたんだ。

 すると。 

「なら、俺が預かっていくよ。
 管理局にはいつも世話になっているからな。
 そのくらいは、幾らでも協力するぜ。」

「あら、タロウ君も居たのね。
 それじゃ、お願いしちゃおうかな。
 そうだ、お礼にタロウ君にサービスしてあげる。
 今晩、泊まりに行くからシフォンお姉さまによろしくと伝えといて。」

 お姉さんと面識のあるタロウが代わりに与ると告げると、今度は遠慮しなかったよ。
 お姉さんは嬉しそうに、今晩お礼に行くと言ってたの。

「おい、そう言うのは要らないから。
 マジ、やめてくれ!」

「遠慮しなくても良いって。
 シフォンお姉さまと一緒に、朝までタップリご奉仕してあげるから楽しみにしておいてね。
 タロウ君、一月も留守しているから、順番待ちが大変な事になってるわよ。
 明日から覚悟しておいた方が良いと思う。
 私は、今晩、抜け駆けさせてもらうね。」

 お礼の順番待ち? タロウ、何かみんなに感謝されることでもしたのかな?
 でも、タロウはあんまり嬉しそうじゃないよ。
 それに、会話を聞いていたヴァイオレットお姉さんは、タロウを冷ややかな目で見てた。
 まるで汚らわしいものを目にしたような感じで少し引いてたし。

 何でそんな目で見ているのか、おいらには分からなかったけど…。

「流石に、これを見れば百年の恋も冷めるのじゃ。
 タロウの爛れた私生活を窺わせるには、十分な会話じゃったからな。」

 オランはその理由が分かっているようで、然も有りなんと頷いていたよ。

       **********

 次においら達は、冒険者管理局で狼藉を働いた男を連れて冒険者研修施設へ向かったの。
 
「ここが、冒険者研修施設ですか?
 大きな建物がたくさん並んでいますが…。」

「ああ、これね。
 殆どが、研修期間中の寄宿舎なんだ。」

 ヴァイオレットお姉さんが驚くのも無理ないよ。
 この施設、建て増し、建て増しで最初に比べて建物が大分増えているの。

 元々は、一時に男女五十人ずつ受け入れる計画で男子棟と女子棟を一棟ずつと食堂棟を造ったんだけど。
 冒険者研修を受ける人が想定以上に増えたもんだから。
 結局、男女二棟ずつ建て増して、今では各百五十人ずつ受け入れられるようになってるの。

 加えて、軽犯罪者の矯正もここですることになったものだから、軽犯罪者向けの寄宿舎も建てたんだけど。
 これも、騎士や冒険管理局による取り締まりを強めた結果、すぐにいっぱいになっちゃって。
 大部屋雑魚寝の牢獄みたいな建物が五つも建っているよ。最大千人収容できるんだって。
 それを聞いた時、おいら、思ったよ。どんだけ、無法者が多いんだって。

 収容人数の拡大に併せて、食堂も男女別にしたよ。
 冒険者研修を受けに来た女性に食堂でちょっかいを掛けるけしからん輩が増えたので分けることにしたの。
 元々、冒険者志望の女性に不埒な真似をする男共が居ると拙いから宿舎を分けたのだけど。
 夜がダメだとなると、食事時に女性に絡むしょうもない奴らが現れたの。

 その代わりと言ったら何だけど。
 男性用の食堂は思いっ切り広くして、矯正を命じられた軽犯罪者と一緒に使うことにしたよ。
 一緒にしておけば話をする機会もあるだろうし、どんな罪を犯せばここに送られるかが分かるでしょう。
 冒険者研修を受けに来た男共に、何をしたらヤバいのか分からせる良い機会になるんじゃないかと思ってね。

 冒険者になろうと田舎から出て来た連中って、小さな村でお山の大将になってた輩が多いんだ。
 なまじ腕っ節に自信があるものだから、町で弱い者を強請って楽して生きようなんて甘い考えで出て来るの。
 そんな連中に限って根性無しで、冒険者研修を耐えられずに挫折する者が多いのだけど。
 軽犯罪を犯して送られてきた者からの話で、無許可での帯剣や強請り集りも厳しく取り締まられると分かると。
 そんな連中も、王都に残ってならず者になるのを諦めるようになったよ。
 心を入れ替えて大人しく里に帰るか、『誠心誠意』説得されて辺境の街道整備に加わるかになったんだ。

 男の研修受講者と矯正措置を受けている犯罪者を食堂で一緒にした効果は出ているみたいだよ。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

処理中です...