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第十二章 婚活と雪女

戦神がいかに絶倫であるか明らかになりました

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「おい、あいつは何を飲ませようとしている?」
チャドウィックがクリスに何か飲み物を勧めようとしてるのを見てアルバートが慌てて側近のオコトに訊いた。

「ナムではないですか。サウスではお茶のようなものです」
「おい、まさかアルコールが含まれているのではないだろううな」
顔をひきつらせて焦ったようにアルバートが訊いた。

「さあ少しくらいは含まれているかもしれませんが、大した量ではない・・・・」
「すぐに止めさせろ!」
慌てて4人はクリスのもとに行こうとした。

皇太子の側近たちはアルバートらが何をそんなに慌てふためいているのか判らなかった。
こんな状況で毒なんか混ぜていないのに。

オコトは事の重大さが判っていなかった。

ダンっ

そこに凄まじい気配がクリスのもとに来臨した。

そして、現れたシャラザールから鉄拳パンチをモロに食らってチャドウィックは吹っ飛ばされてた。


そうそこには無敵の戦神シャラザールが仁王立ちしていた。


慌ててアルバートらは跪いた。

「き、貴様。何奴だ」
殴られて腫らした顎を押さえながらチャドウィックは立ち上がった。

「貴様、余の子孫のくせに余のことを知らぬのか」
荒ぶれる金の髪に鋭い鷹のような青い目、それは・・・・

「貴様、白人の邪神シャラザール!」

その言葉に怒ったシャラザールは何も言わずもう一発チャドウィックを殴り飛ばしていた。

チャドウィックは勢いのあまりアルバートらのすぐ傍まで飛んできた。

「貴様、ご先祖様に邪神とはどういう事だ」
「何を言う。俺は正当な黒人の戦士、チャドウィック。貴様のような白人の邪神の血など一滴も入ってはおらんわ」
「まだ言うか。愚か者」
シャラザールは立ち上がったチャドウィックの頭からげんこつをお見舞いしていた。
地面にチャドウィックは叩きつけられる。

「貴様らの教育はどうなっておるのか。そこの側近」
シャラザールは一番まともそうなオコトを指差した。

「貴様余に似て優秀そうな顔つきをしておる。その方は余の血を継いでおるかどうか知っておろうな」
「そのような。私のような者がシャラザール様の血をひいておるなど」
「愚か者」
シャラザールはそう言うオコトの頭を叩いていた。

「貴様はどうじゃ」
横の騎士に聞く。

「滅相もご座・・・・」
その騎士もシャラザールに張り倒されていた。

護衛騎士3人に聞いたところでシャラザールは切れていた。

「サウス王国の教科書には書かれておらんのか。初代国王チャドウィックの事も知らんのか」
「始祖様のことは知っておる」
チャドウィックが言う。

「その娘、アリーヤ姫の事は」
「・・・・・」
答えられなかったチャドウィックをシャラザールは張り倒す。

「それは存じ上げております」
オコトが答えた。

「そうじゃろう。その母が余じゃ」
当然のごとくシャラザールは言った。

それに周りは唖然とする。

黒人たちは驚いた。

チャドウィックは呆然としている。

「サウス王国の国民の多くは当然ながら余の子孫となるのじゃ」
皇太子の側近たちは呆然としていた。白人の戦神シャラザールがシャラザール3国の先祖だとは知っていたが、自分たち黒人もその子孫だとは知らなかったのだ。


「おい待てよ。シャラザール様の子供がいっぱいいるんだけど」
アルバートが呆然としている。
「たしか、シャラザール3国の始祖の姫君の母は全てシャラザール様だよな」
「俺の家の始祖の妻の母もシャラザール様だと思う」
「インディオの王の娘の母もシャラザール様では」
「子供の数も多いけれど父親も全部違うぞ」
アルバートらは顔を見合わせた。

「そこ、何か言いたいことがあるのか」
「いえ、何もございません」
シャラザールの指摘に慌ててアルバートが頭を下げる。

「1000年も経てば、子孫の数も莫大になる。この世界で余の子孫でないものなどほとんどおらんわ」
自慢してシャラザールは言った。

「なるほど。ということはシャラザール様の血を引いていない私は希少価値があるということですね」
気配に驚いて飛んできたアレクが思わず言っていた。

「愚か者!」
次の瞬間シャラザールの怒りの鉄拳を受けてアレクは地面に激突していた。

「どいつもこいつも貴様らの教育はどうなっておるのじゃ。そもそも、ノルディン帝国の始祖ステバンは余の部下であって、その娘は当然余の娘じゃ」
「えっ、しかし、そのような記載はどこにもありませんが」
「それはなにをトチ狂ったかイアンのボケナスが、すべての記載を歴史書から削除したのじゃ。なんでも、女の戦神が先祖など恥ずかしいとか訳の判らん理由でな。シャラザール3国とも先祖が同じなのが気に食わんかったらしいが」
吐き捨てるようにシャラザールは言った。

「イアンと言うとイアン大帝ですか」
中興の祖と言われたイアンがそんな事をやっていたなんて。

「そもそもノルデインの帝政を整えたのは、余とそのステバンの娘エカチェリーナであるからな。本来はエカチェリーナが始祖と呼ばれておったのじゃ」
「しかし、シャラザール様。シャラザール3国の姫君方もシャラザール様の実の娘御とお伺いしておりますが」
「左様じゃ。余は史上最強の皇帝として一夫多妻制ならぬ一妻多夫制をとっておったからの」
自慢してシャラザールは言った。

「左様でございますか」
毒気を抜かれてアレクは言った。
力が有り余っている戦神シャラザールだ。精力も絶倫で一人の夫では耐えられなかったのだろうとアレクは不敬なことを思った。

次の瞬間パカーンと思いっきり頭をしばかれる。

「な、何をなさるのですか」
「貴様また碌でもないことを考えていただろうが」
シャラザールはムッとして言った。

たしかに不敬だったかもしれないが、事実ではないか。しばくことではないのではないかとアレクは思った。
シャラザールはそのアレクの様子にもう一発しばこうとした時だ。

凄まじい殺気を感じて避けた。

シャラザールの今までいたところには鉄製のハリセンが地面に突き刺さっていた。

「シャラザール様!あなた様はまた健全な若者たちに何をふしだらなことを教えようとしておるのですか」
そこにはマーマレードの王妃で前世はシャラザールの礼儀作法の師のエリザベスが立っていた。

「エリザベス。余は何も不健全なことなど」
「だまらっしゃい。この世界は一夫一妻制なのです。あなたのような一妻多夫の淫乱皇帝などとは違うのてす」
怒りに震えながらエリザベスが立っていた。

「余は昔の古き良き時代のことをだな。若者たちに教えようと」
「ええいだまらっしゃい。そう言って前世でも我が夫を毒牙にかけたのですね」
「いや、違うぞ。あれはそちの夫に襲われて」
「キーーーもう許しません。シャラザール様が男などに襲われるわけはないではないですか」
そのエリザヘスの言葉にはそこにいた全員が頷いた。シャラザールに勝てる男がいるなど到底思いつかなかった。絶対にシャラザールが夫を手篭めにしたに違いない。
ここにいる全員が心の中でエリザベスに同意した。

「もう許しません」
いつの間にか、エリザベスは護身用の短剣を抜いていた。

「ええい、そこに直りなさい。今こそその性根を叩き直して差し上げます」
「待て、エリザベス。話せばわかる」
「ええい、男らしくないおとなしく切られなさい」
「いや、待て」
シャラザールはエリザベスの剣を避けながら必死に逃げていった。

それを周りの者は呆然と見送っていた。


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英雄色を好む。逆もしかりなんでしょうか・・・・
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