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第十二章 婚活と雪女
南国皇太子の前に戦神が来臨しました
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そして、翌日になった。
中庭に出された丸テーブルを挟んで、クリスはチャドウィックと向かい合って座っていた。
その側には侍女のミアのみ控えていた。
それをはるか遠巻きにして、クリスの騎士のウィルらがイライラしながら見ていた。
クリスから昨日魔力が暴発してチャドウィックを巻き込んだ件について謝罪したいという申し出に対して、昨日、クリスの騎士らに地獄を見せられたチャドウィックは、クリスと二人きりなら良いと言ってきたのだ。
クリスの騎士達はいきり立ったが、、クリス自身がそれで良いと受けたのだった。
止むを得ずクリスの騎士達は遠くから二人の様子を見守っていた。
「あいつ、昨日は手加減してやったのに、こんな事だったら二度と立てないようにしてやれば良かった」
「本当に人前に出れないように、顔をもっと腫れさせればよかったわ」
アルバートの言葉にナタリーがかぶせる。
「もし姉さまにふらちなことをしでかしたら、今度こそ再起不能にしてやる」
ウィルが歯ぎしりして誓っていた。
その横でハラハラして見ているオコトはチャドウィックが無事に済むとは到底思えなかった。
「オコト様。殿下は大丈夫でしょうか」
皇太子の護衛騎士の一人が心配そうに訊いてきた。
護衛騎士たちは傷だらけだった。チャドウィックをボロボロにするわけにもいかず、4人の怒りを受け止めるべく護衛騎士たちもボロボロにされたのだ。クリスの騎士の4人と対峙した護衛達は瞬間的にのされていた。
そのあまりの戦闘力の差の違いに、鬱憤を晴らすのを諦めた彼らはお互いに戦闘訓練を始めたのだ。その自分らとはあまりにレベルの違う戦闘訓練の凄まじさに、護衛達はその様子をただただ呆然と見ていたのだ。
そして、心に誓ったのだ。絶対にこの4人は怒らせないようにしようと。
そして、そこに乱入してきたジャンヌとアレクがクリスの騎士よりも強いことを知って彼らはもはや恐怖しか感じなかった。さすが暴風王女と赤い死神と呼ばれることだけはある。
そして、その二人以上に強いやつがいると聞いて、護衛騎士たちは絶対に皇太子をボフミエには逆らわないようにしようと心に刻んだのだ。
なのに、その象徴のクリスとぼんくら皇太子を二人きりで会わせるなど愚行以外の何物でもなく、それを許したオコトに対しても護衛騎士たちは恨めしい目で見ていた。
「おいっ、そこのボケナス皇太子の側近ども。もし、ボケナス皇太子がまた変なことをしたら貴様らも同類だからな」
「えっ」
アルバートの言葉に彼らは固まった。
「当然だろう。貴様らは一蓮托生であろうが」
当然のようにアルバートが言い切った。
「・・・・・」
オコトは自分もただではすまないだろうと呆然とした。
「皇太子殿下。昨日は色々ご迷惑をおかけいたしました」
クリスが頭を下げる。
「いや、クリスティーナ様。私こそ酷いことをしてしまって申し訳なかった」
チャドウィックが頭を下げた。
その様子を遠くから見ていた護衛達は驚いた。
あの傲慢な皇太子が頭を下げている。これは画期的なことだ。昨日の事で少しは皇太子も反省したのたろうと・・・・。
「ドラフォードの皇太子があなたのように聡明で美しい方の婚約者だということに嫉妬してしまったのだ」
苦笑いをしてチャドウィックは言った。
「えっ、何をおっしゃるのですか。オーウェン殿下は私の婚約者ではございませんわ」
「それは本当か。ならば私にもまだチャンスは残っているのだろうか」
身を乗り出してチャドウィックは聞いた。
「あの野郎」
それを見てウィルらが拳を握りしめる。
「殿下。余計なことは止めて」
護衛達は神に祈りたくなった。
「まあ、殿下もお上手ですこと。このような辺境の地の筆頭魔導師にお世辞を言われても何も得する事などございませんでしょう」
「何をおっしゃいますやら。私、こう見えても嘘がつけない性分でして、クリスティーナ様のように美しい方は見たこともございません」
そう言って手を伸ばそうとした時に、クリスが手を引っ込めた。
代わりにミアがドンと飲み物を差し出す。
それは白濁した飲み物だった。
「これは?」
「皇太子殿下より頂いた飲み物で、サウス王国の方々はこれをお茶代わりに飲まれているのだとか」
クリスの問にミアが答えた。
「そうなのです。クリスティーナ様。この飲み物はナムと申してサウス王国では子供から大人まで飲んでいるのです。ぜひとも美しいあなたにも飲んでいただきたくて故国よりお持ちしたものなのです」
ニコッと笑ってチャドウィックは微笑んだ。
黒い肌に白い歯がキラリと光る。女達を落とすキラキラスマイルだ。チャドウィックはこの笑みで落とせなかった女はいなかった。
更にこのナムは滋養強壮から媚薬成分まで含んでいて、更にチャドウィックが提供するこのナムは、女の子が好みそうな甘さにしてあった。
まず、チャドウィックが一口飲む。
「うーん、相変わらず、美味しいです。女性向けに少し甘くしているのですが、クリスティーナ様のお口にあうとは思うのですが」
ニコニコしながらチャドウィックはクリスに飲むように促す。
クリスがその飲み物に口をつけた。
チャドウィックはニヤリとした。
いつの間にか椅子を横にずらしてクリスの近くに座る。
「いかがですか」
そう言ってクリスの飲み物を持っている手の上からその手を握ろうとした時だ。
ダンッ
凄まじい殺気がクリスに宿った。
「愚か者!」
そして、チャドウィックのにやけた顔にシャラザールの鉄拳が炸裂した・・・・
*********************************************************
ナンパ大好き南国皇太子の前に怒りの戦神来臨。
チャドウィックは無事に済む・・・・訳はなく・・・・
中庭に出された丸テーブルを挟んで、クリスはチャドウィックと向かい合って座っていた。
その側には侍女のミアのみ控えていた。
それをはるか遠巻きにして、クリスの騎士のウィルらがイライラしながら見ていた。
クリスから昨日魔力が暴発してチャドウィックを巻き込んだ件について謝罪したいという申し出に対して、昨日、クリスの騎士らに地獄を見せられたチャドウィックは、クリスと二人きりなら良いと言ってきたのだ。
クリスの騎士達はいきり立ったが、、クリス自身がそれで良いと受けたのだった。
止むを得ずクリスの騎士達は遠くから二人の様子を見守っていた。
「あいつ、昨日は手加減してやったのに、こんな事だったら二度と立てないようにしてやれば良かった」
「本当に人前に出れないように、顔をもっと腫れさせればよかったわ」
アルバートの言葉にナタリーがかぶせる。
「もし姉さまにふらちなことをしでかしたら、今度こそ再起不能にしてやる」
ウィルが歯ぎしりして誓っていた。
その横でハラハラして見ているオコトはチャドウィックが無事に済むとは到底思えなかった。
「オコト様。殿下は大丈夫でしょうか」
皇太子の護衛騎士の一人が心配そうに訊いてきた。
護衛騎士たちは傷だらけだった。チャドウィックをボロボロにするわけにもいかず、4人の怒りを受け止めるべく護衛騎士たちもボロボロにされたのだ。クリスの騎士の4人と対峙した護衛達は瞬間的にのされていた。
そのあまりの戦闘力の差の違いに、鬱憤を晴らすのを諦めた彼らはお互いに戦闘訓練を始めたのだ。その自分らとはあまりにレベルの違う戦闘訓練の凄まじさに、護衛達はその様子をただただ呆然と見ていたのだ。
そして、心に誓ったのだ。絶対にこの4人は怒らせないようにしようと。
そして、そこに乱入してきたジャンヌとアレクがクリスの騎士よりも強いことを知って彼らはもはや恐怖しか感じなかった。さすが暴風王女と赤い死神と呼ばれることだけはある。
そして、その二人以上に強いやつがいると聞いて、護衛騎士たちは絶対に皇太子をボフミエには逆らわないようにしようと心に刻んだのだ。
なのに、その象徴のクリスとぼんくら皇太子を二人きりで会わせるなど愚行以外の何物でもなく、それを許したオコトに対しても護衛騎士たちは恨めしい目で見ていた。
「おいっ、そこのボケナス皇太子の側近ども。もし、ボケナス皇太子がまた変なことをしたら貴様らも同類だからな」
「えっ」
アルバートの言葉に彼らは固まった。
「当然だろう。貴様らは一蓮托生であろうが」
当然のようにアルバートが言い切った。
「・・・・・」
オコトは自分もただではすまないだろうと呆然とした。
「皇太子殿下。昨日は色々ご迷惑をおかけいたしました」
クリスが頭を下げる。
「いや、クリスティーナ様。私こそ酷いことをしてしまって申し訳なかった」
チャドウィックが頭を下げた。
その様子を遠くから見ていた護衛達は驚いた。
あの傲慢な皇太子が頭を下げている。これは画期的なことだ。昨日の事で少しは皇太子も反省したのたろうと・・・・。
「ドラフォードの皇太子があなたのように聡明で美しい方の婚約者だということに嫉妬してしまったのだ」
苦笑いをしてチャドウィックは言った。
「えっ、何をおっしゃるのですか。オーウェン殿下は私の婚約者ではございませんわ」
「それは本当か。ならば私にもまだチャンスは残っているのだろうか」
身を乗り出してチャドウィックは聞いた。
「あの野郎」
それを見てウィルらが拳を握りしめる。
「殿下。余計なことは止めて」
護衛達は神に祈りたくなった。
「まあ、殿下もお上手ですこと。このような辺境の地の筆頭魔導師にお世辞を言われても何も得する事などございませんでしょう」
「何をおっしゃいますやら。私、こう見えても嘘がつけない性分でして、クリスティーナ様のように美しい方は見たこともございません」
そう言って手を伸ばそうとした時に、クリスが手を引っ込めた。
代わりにミアがドンと飲み物を差し出す。
それは白濁した飲み物だった。
「これは?」
「皇太子殿下より頂いた飲み物で、サウス王国の方々はこれをお茶代わりに飲まれているのだとか」
クリスの問にミアが答えた。
「そうなのです。クリスティーナ様。この飲み物はナムと申してサウス王国では子供から大人まで飲んでいるのです。ぜひとも美しいあなたにも飲んでいただきたくて故国よりお持ちしたものなのです」
ニコッと笑ってチャドウィックは微笑んだ。
黒い肌に白い歯がキラリと光る。女達を落とすキラキラスマイルだ。チャドウィックはこの笑みで落とせなかった女はいなかった。
更にこのナムは滋養強壮から媚薬成分まで含んでいて、更にチャドウィックが提供するこのナムは、女の子が好みそうな甘さにしてあった。
まず、チャドウィックが一口飲む。
「うーん、相変わらず、美味しいです。女性向けに少し甘くしているのですが、クリスティーナ様のお口にあうとは思うのですが」
ニコニコしながらチャドウィックはクリスに飲むように促す。
クリスがその飲み物に口をつけた。
チャドウィックはニヤリとした。
いつの間にか椅子を横にずらしてクリスの近くに座る。
「いかがですか」
そう言ってクリスの飲み物を持っている手の上からその手を握ろうとした時だ。
ダンッ
凄まじい殺気がクリスに宿った。
「愚か者!」
そして、チャドウィックのにやけた顔にシャラザールの鉄拳が炸裂した・・・・
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ナンパ大好き南国皇太子の前に怒りの戦神来臨。
チャドウィックは無事に済む・・・・訳はなく・・・・
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