無想無冠のミーザ

はらわた

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第二章 「深十島〇〇一作戦」

二章 義憤と復讐の女神達(3)

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 それからはデブ先輩に聞こえず、会話ができる距離まで扉から離れた。その後、ネメシスはため息をついて結っていた髪を解く。

 結んでいた青いシュシュは左手首に掛け、髪をほぐす。

 そうすれば、ネメシスはフリアエとかなり似た感じになって、やはりエリニュスなのだと俺は思った。

「ネメシスさ、どうしてフリアと分離してんだ?」

 まず普通に訊きたかったことを言うと、ネメシスはんーと唸る。

「しぃちゃん、わたしとしぃちゃんがタイムスリップしたこと覚えてます?」

「ああ。まぁ」

 俺はあまり詳しく知らないのだが、賊に狙われた際にフリアエのタイムスリップにより避難したのだが、なにやらおかしなことが起きたせいで色々な経験をした。

 ネメシスはそれで何が言いたいのだろう。

「ええと……タイムスリップには二つの可能性があるんですが、異なる時間に移動した際、そこに『自分』がいるか、いないかというものです」

「ああ、だから?」

「タイムスリップでは『自分』は居ました。わたしは異なる自分と接触したわけです」

「……ん?」

 それを聞くとどうしてか、何が言いたいのか理解できるのだが、それは果たして本物なのかと考えてしまう。

「そうです。他のフリアとメリアスは異なる『自分』なんです」

「いや、だとしたら、どうしてフリアエは別人格を別の体に……」

「んー……完成された『自分』が異なる時間に一人、今の時間にわたしと全く同じ『自分』が一人居たわけで……合計三人の器があるんですね。それで完成された『自分』にフリアエが移ってもらって性能をわたしと同じくらいに上げて、わたしと全く同じ『自分』には少し弄ってはありますが、そのままで居てもらってるんですよ」

 ネメシスは結構発音をしっかりしてゆっくり喋るので、俺はこんがらがず一応理解ができた。空想話に聞こえはするが、人造人間も言ってしまえば空想のような存在な訳で、声を上げるほど驚くことはない。

 シュシュを弄りながら話は続く。

「……俺の知らないところで、一体今まで何があったのか教えて欲しい」

「それはもちろんです! 今からそれを説明するところだったんです」






「う……いったぁーいですねぇ……」

 ガブリエル達から逃れるためタイムスリップをしたわたしはまず、戦闘の際に骨が折れてしまった右手首をどうにかしなければならなかった。

 着いた場所は寮のわたしの部屋だ。

 しかしわたしの能力は感知であり、五感が周囲の状況を知らせて、ここは別世界なのだと理解はしていた。それに怪我を負ったままでは後に支障をきたす。

「ここは一旦、魔法を使うしかないですね」

 わたしは感知以外にもう一つの能力を持っている。それはエンドシリーズの世界に散らばる魔素を利用して発動するという魔法を研究し、開発されたエルフシリーズと同等の力だ。

 ゴッドシリーズは一応世界平和の為に能力開発がされているのでエルフシリーズの能力は必要ないのだが、わたしは政府にとって触れてはならない領域の研究を済ませる汚れ役を押し付けられている為に所有している。

 これはゴッドシリーズとして、その存在意義の気高さを保つ為に絶対にバレてはならないこと。なのでこの魔法は下手におおやけで扱えない。

 わたしの魔法は『治癒』能力に長けている。主に怪我を治すのに使えるため、わたしの顔を知らない他人の怪我を見掛けた時には使っていた。

 わたし自身に治癒魔法を使えば、不安定な精神を治せるし、二重人格にならずに済む。しかしなのだ、わたしの魔法は極秘のものであり、しかもわたしはエウメニデスシリーズの欠陥を見つけるために壊れることを前提として造られた実験人形。これを行ってしまえば、わたしは問題なしと判断され、後に続くエウメニデスの量産型として生まれる妹達を苦しめることになり、さらにはエウメニデスシリーズの目的である犯罪者の撲滅がより効果を出し、犯罪を犯さねば飢え死にをする人々を理不尽な力で殺してしまうことになる。

 だからわたしが今治癒魔法を使うのは、この世界が別世界だからなのだ。

「……よしです」

 不自然な形だった手首に紫の光で包み、人間の数倍も多い神経の切れた部分を繋ぎ治しながら、手首の骨を元に戻した。

 後は嗣虎さんだ。

「……」

 嗣虎さんは特に怪我はなく、タイムスリップの成功もあり異常もない。

 ただガブリエルの能力によって意識が麻痺しているので、起きることは当分ないだろう。

 ここで意識を治癒魔法で目覚めさせてもいい。しかしわたしは感知型のミーザ……もう一人のわたしくらいすぐに気付いている。

 わたしはもう一人の自分に話をするために立ち上がった。
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