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46 時は来たれり(ウルド)
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「……以上がご報告になります」
国王陛下の執務室。
私、ウルドは連日の疲れを出さぬよう淡々と陛下へとご報告です。
何の報告かって?
頭の片隅に入れる事自体イライラしますが、例の頭に花が咲き誇る、頭の悪い、ネジが有るのかも不明な、猿より阿呆で節操のないバカ女の報告ですよ。
思い出しただけで鳥肌が全身に立ちそうです。
何なんですかねあの女は。
陛下のご命令でなければ一生お近づきにはなりたくなかったですよ。
こちらが優しく声を掛け始めた瞬間から、毎日のように「決まった時間」に保健室にやって来るようになり、しかも理由が毎回やれ頭痛がだの眩暈がだの。
こちらが「休んで行きますか?」の一言を発しようものなら、満面の笑みですり寄ってくる。
本人は可愛く見せたいようですが、下心が見え見えです。
自意識過剰にもほどがありますよ。
何なんですかね?余程自分に自信があるみたいですが、滑稽すぎてドン引きですよ。
そう言えば、よくイベントが何とか、スチルが何とか、可笑しな事をほざきながらよく陰でニヤニヤしていましたね。
本当に、頭がどうにかなっているとしか思えません。
あぁ、本当にイライラします。
「…隠しきれてないよ?」
陛下の小さな声。
視線はずっと公務の書類へ向けておられたはずです。
それに、私も表情に出していたつもりは無かったのに…。
「ウルド、最近分かりやすくなっているよ?顔に出してはいないけどね」
「………精進します」
「いや…ぷぷっ、君は寧ろもう少し感情を持った方がいいと思っていたから逆に嬉しいよ」
大変おもしろそうに破顔された陛下。
は?
いやいや、確かに私はあのクソ…名前を出すのも嫌な「アレ」のせいで感情を表に出す事はほとんどありませんでしたが…。
「陛下、分かった上でおっしゃってますよね?」
あの花畑女に感情を引き出されたみたいな言い方は、いくら陛下と言えど聞き捨てなりません。
「ん?何がかな?」
「私で遊ばないで頂きたいのですが」
いや、本当、そう言うとこですよ陛下。
その美しい顔を破顔させ、さも楽しいオモチャで遊ぶような様子の陛下。
まぁ、これくらいのご性格でないと国の長など務まらないでしょうが、この方は本当にタチが悪い。
「ふふっ、まぁ、たまにはいいじゃないか。それより話を変えるけど、フィオから君聞いているよね?」
アレ…の話ですね。
「例の薬でしょうか?」
腕を組み、一気に表情を変えられた陛下に、自然と背筋に冷たいものが。
「恐怖」と言う言葉がピッタリはまる瞬間。
この国の王家の存続を揺るがしかねなかった、あの事件を作り出した「禁忌の薬」。
当時、唯一残された幼い姫が次期王位継承をなさらなかったら、この国はどうなっていたか分からなかったと聞きます。
貴族間でのトラブルが大変多かった当時、下手をしたらその時の公爵家に王位を奪われた可能性もあったとか。
今はその家はありませんが、元々王家転覆を企てていた家と言われています。
だからこそ、今回の件、陛下はさぞご立腹でしょうね。
「アシェリー達には今日直接伝えると、フィオラから聞いた。今頃皆んなに報告会で話しているところだと思うよ?」
今朝、フィオラ姫は陛下に直通の魔法便のお手紙をお渡しされたそうですが、私は学園にて姫に直接会う時間があったので話を伺いました。
「本当、楽しみだよ……どう料理してやろうかなぁ…ふふふっ」
「姫より「手出し無用」。始末は任せてもらいたいとありましたが?」
あの姫は、確実に王家の血を色濃く継いでらっしゃる。
陛下の従兄弟殿の娘とは言え、あれは侯爵家に収まる器ではないように思う。
「うん、そこはね。彼女に任すつもりだよ?嫌われたくないしね」
「………は?」
親族だから、か?
嫌われたくないとは。
「あの子はアシェリーにもらう予定だからね。義理の父親としては嫌われたくないじゃない?」
「陛下?」
……この方は。
「これで晴れてあのクズのクズ息子との縁を切らす事が出来るね。ホント、待った甲斐あったよ。表向きにアシェリーの婚約者は吟味中と貴族連中に言っておいて正解だった。あの子は王家がもらう。運良くアシェリーも昔から彼女に好意を持っていたしね」
幼少期からアシェリー様と同じ神童と言われて来たフィオラ様。
……陛下はいつからお考えだったのだろうか。
「ん?あの子とウチの妃の交流が始まった辺りかな?」
「何も言っておりませんが」
「一瞬顔に出てたよ?」
全く、恐ろしすぎませんか?
「と言う訳だからさ?後は引き続き報告お願いね?手は出さないけど何かあったらウルドを使っていいって、フィオラには言ってあるから…それともう一つ」
とても悪そうなお顔で陛下が微笑まれました。
「影からの報告だけど、マーシャルが裏で「人身取引」をしているみたいだよ?」
………陛下が言う「マーシャル」とは、トーリア・マーシャル子爵。
名前を出すのも嫌な「アレ」の事だ。
「君の父…おっと、失礼。「アレ」の事なんだけどね、新薬の実験用に「ある商会」を介して他国から人間を買っているらしい」
ある……商会、まさか!
「いやぁ、タイミング本当に良かったよ。君なら分かるよね?その商会。それに、ある「魔法師」の家の者がその手助けをしているらしいんだ」
巡り合わせですか?
なんて素晴らしい。
「私が動いてよろしいので?」
「そうだね。個人的にやりたい事もあるだろうし、君との「約束」だから、いいよ?ただし、ちゃんと報告はするように。それから、最終の刑罰は王家に委ねる事」
陛下ではないが、私も待った甲斐がありましたね。
ずっと願っていた事。「アレ」へやっと手を出すこが出来ます。
「………本当に、感謝致します」
「ふふっ。まぁ気持ちは分かるけど「やり過ぎないように」ね?私は君を気に入ってるんだから」
国王陛下の執務室。
私、ウルドは連日の疲れを出さぬよう淡々と陛下へとご報告です。
何の報告かって?
頭の片隅に入れる事自体イライラしますが、例の頭に花が咲き誇る、頭の悪い、ネジが有るのかも不明な、猿より阿呆で節操のないバカ女の報告ですよ。
思い出しただけで鳥肌が全身に立ちそうです。
何なんですかねあの女は。
陛下のご命令でなければ一生お近づきにはなりたくなかったですよ。
こちらが優しく声を掛け始めた瞬間から、毎日のように「決まった時間」に保健室にやって来るようになり、しかも理由が毎回やれ頭痛がだの眩暈がだの。
こちらが「休んで行きますか?」の一言を発しようものなら、満面の笑みですり寄ってくる。
本人は可愛く見せたいようですが、下心が見え見えです。
自意識過剰にもほどがありますよ。
何なんですかね?余程自分に自信があるみたいですが、滑稽すぎてドン引きですよ。
そう言えば、よくイベントが何とか、スチルが何とか、可笑しな事をほざきながらよく陰でニヤニヤしていましたね。
本当に、頭がどうにかなっているとしか思えません。
あぁ、本当にイライラします。
「…隠しきれてないよ?」
陛下の小さな声。
視線はずっと公務の書類へ向けておられたはずです。
それに、私も表情に出していたつもりは無かったのに…。
「ウルド、最近分かりやすくなっているよ?顔に出してはいないけどね」
「………精進します」
「いや…ぷぷっ、君は寧ろもう少し感情を持った方がいいと思っていたから逆に嬉しいよ」
大変おもしろそうに破顔された陛下。
は?
いやいや、確かに私はあのクソ…名前を出すのも嫌な「アレ」のせいで感情を表に出す事はほとんどありませんでしたが…。
「陛下、分かった上でおっしゃってますよね?」
あの花畑女に感情を引き出されたみたいな言い方は、いくら陛下と言えど聞き捨てなりません。
「ん?何がかな?」
「私で遊ばないで頂きたいのですが」
いや、本当、そう言うとこですよ陛下。
その美しい顔を破顔させ、さも楽しいオモチャで遊ぶような様子の陛下。
まぁ、これくらいのご性格でないと国の長など務まらないでしょうが、この方は本当にタチが悪い。
「ふふっ、まぁ、たまにはいいじゃないか。それより話を変えるけど、フィオから君聞いているよね?」
アレ…の話ですね。
「例の薬でしょうか?」
腕を組み、一気に表情を変えられた陛下に、自然と背筋に冷たいものが。
「恐怖」と言う言葉がピッタリはまる瞬間。
この国の王家の存続を揺るがしかねなかった、あの事件を作り出した「禁忌の薬」。
当時、唯一残された幼い姫が次期王位継承をなさらなかったら、この国はどうなっていたか分からなかったと聞きます。
貴族間でのトラブルが大変多かった当時、下手をしたらその時の公爵家に王位を奪われた可能性もあったとか。
今はその家はありませんが、元々王家転覆を企てていた家と言われています。
だからこそ、今回の件、陛下はさぞご立腹でしょうね。
「アシェリー達には今日直接伝えると、フィオラから聞いた。今頃皆んなに報告会で話しているところだと思うよ?」
今朝、フィオラ姫は陛下に直通の魔法便のお手紙をお渡しされたそうですが、私は学園にて姫に直接会う時間があったので話を伺いました。
「本当、楽しみだよ……どう料理してやろうかなぁ…ふふふっ」
「姫より「手出し無用」。始末は任せてもらいたいとありましたが?」
あの姫は、確実に王家の血を色濃く継いでらっしゃる。
陛下の従兄弟殿の娘とは言え、あれは侯爵家に収まる器ではないように思う。
「うん、そこはね。彼女に任すつもりだよ?嫌われたくないしね」
「………は?」
親族だから、か?
嫌われたくないとは。
「あの子はアシェリーにもらう予定だからね。義理の父親としては嫌われたくないじゃない?」
「陛下?」
……この方は。
「これで晴れてあのクズのクズ息子との縁を切らす事が出来るね。ホント、待った甲斐あったよ。表向きにアシェリーの婚約者は吟味中と貴族連中に言っておいて正解だった。あの子は王家がもらう。運良くアシェリーも昔から彼女に好意を持っていたしね」
幼少期からアシェリー様と同じ神童と言われて来たフィオラ様。
……陛下はいつからお考えだったのだろうか。
「ん?あの子とウチの妃の交流が始まった辺りかな?」
「何も言っておりませんが」
「一瞬顔に出てたよ?」
全く、恐ろしすぎませんか?
「と言う訳だからさ?後は引き続き報告お願いね?手は出さないけど何かあったらウルドを使っていいって、フィオラには言ってあるから…それともう一つ」
とても悪そうなお顔で陛下が微笑まれました。
「影からの報告だけど、マーシャルが裏で「人身取引」をしているみたいだよ?」
………陛下が言う「マーシャル」とは、トーリア・マーシャル子爵。
名前を出すのも嫌な「アレ」の事だ。
「君の父…おっと、失礼。「アレ」の事なんだけどね、新薬の実験用に「ある商会」を介して他国から人間を買っているらしい」
ある……商会、まさか!
「いやぁ、タイミング本当に良かったよ。君なら分かるよね?その商会。それに、ある「魔法師」の家の者がその手助けをしているらしいんだ」
巡り合わせですか?
なんて素晴らしい。
「私が動いてよろしいので?」
「そうだね。個人的にやりたい事もあるだろうし、君との「約束」だから、いいよ?ただし、ちゃんと報告はするように。それから、最終の刑罰は王家に委ねる事」
陛下ではないが、私も待った甲斐がありましたね。
ずっと願っていた事。「アレ」へやっと手を出すこが出来ます。
「………本当に、感謝致します」
「ふふっ。まぁ気持ちは分かるけど「やり過ぎないように」ね?私は君を気に入ってるんだから」
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