中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

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第七章 俺様、南方へ行く

13、これはやばい

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 次々と襲い来る熊をあっさりと倒しつつ進む俺達。その度に鑑定で欠片の有無を確認して進む。
 度々足止めを喰らうためほとんど進めず、夕方になってしまった。

「夜間はモンスターの力も増しますし、こちらが不利です」
「リージェ様も戦ってばかりですし、そろそろ休まれた方が……」
『仕方ない、そうしよう』

 本当を言うとまだMPは半分くらい残っているのだが、俺よりエミーリオやルシアちゃんに休憩が必要だろう。
 これまでの熊はあっさりやられてくれたが、角つきもそうとは限らないしな。

 いつもの如くルシアちゃんに結界を張ってもらい、野営の準備をする。
 火の明りに熊が寄ってきたが、角無しの熊は結界を破れないらしくて先日と同じよう結界を取り囲むようにしてウロウロとこちらの様子を窺っている。
 これなら角つきが出てきた時だけ警戒していれば大丈夫だな。
 グルグルと低い唸り声を完全に無視しながら、温かい食事に舌鼓を打って眠りについた。


 そして、夜が明けようという頃。

 グォォォォォオオオオオオオ!!

「な、何だ?!」
「わ、わかりません。あっ! 結界を囲んでいたオルソが去っていきます」

 地面を揺らすような音で俺達は飛び起きた。
 ルシアちゃんが示した通り、あれほど俺達を獲物と定め固執していた熊達が去っていく。左右に分かれて慌てたように去っていく姿は、まるで何者かに道を譲るようにも見える。
 いや、実際その通りだった。

 ドッドドッドッドドッとリズミカルに地面が揺れ、索敵を使うまでもなく殺気の塊のような何かが恐るべきスピードで近づいてくるのを感じる。
 もしこれが角つきなら、結界は効果がないかもしれない。

『エミーリオ、ルシア! 横に大きく飛べ!』

 黒い塊が見えたと思うと、どんどんその姿がハッキリする。でかい。まだ距離があるはずなのに、既に去っていった熊と同じくらいの大きさに見える。
 そいつは周囲の熊には目もくれず一直線にこちらに向かってくる。
 一直線にこっちに来るなら! と俺は上空に飛び上がり眼前にウォーターカッターを振り下ろす。
 今までの調子ならこれで一刀両断にできるはずだった。

『何だと?!』

 透き通った黒曜石のような角まで目視できる距離になってから詠唱しギリギリまで引き付けたというにも関わらず、ヒョイ、と軌道を逸らし避けられてしまった。
 さすが角つき。今までの奴らとは動きが違う。

『ルシア、結界を張り自分を守れ! エミーリオ、囲まれても助けてやれん。数が減るまで結界内で待機!』
「は、はい!」

 大声でルシアが返事したからか、角つきがぐる、とルシアの方を向き突進しようとする。
 最初結界を取り囲んでいた熊が子熊に見えてしまうくらいでかい。あの巨体のどこにそんな機敏さが? と驚くほどの身のこなし。
 あの鋭く長い角も脅威だが、あの巨体とスピードで突っ込まれたらルシアちゃんは潰されてしまう。

『チッ!』

 間に合え、と俺は斬撃を飛ばす。
 キャァ、とルシアちゃんの悲鳴が聞こえる。貫通力はウォーターカッター程じゃないとはいえ、かすったかもしれない。いや、熊のどでかい背が壁になってるからきっと大丈夫だ。
 そう信じて二撃三撃と追撃する。

「グォォォォォオオオ!!」

 空気をビリビリと震わせる怒声と共に、傷だらけの背中をくるりと反転させこちらに向き直る熊。
 二足で立ち上がり両腕を広げ、再び威嚇の咆哮を上げた。あまりの音量に耳と頭に激痛が走る。同時にバキ、と爆ぜるように後方の木の枝が落ちた。っこれはやばい……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【レ・オルソ・モルテネーロ】

オルソ種の中でも最凶最悪、死の紫斑と呼ばれるモルテヴィオーラの変異種。暗黒破壊神の大きな欠片を取り込んで進化した模様。欠片によってステータスが特大強化されています。
もともと群れのボスだったようですが、欠片の影響かその知能や慎重さなどは失われたようでただ凶暴性だけが増しているようです。気を付けて。

レベル  : 76 

HP   : 79974/88860
MP   : 31148/38935
Atk  : 83675
Def  : 28325

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 音という情報源が潰されてしまった。
 熊の意識がルシアちゃんから俺に移り、睨み合いながらステータスを鑑定するとHP、MPでは負けていた。
 が、AtkもDefも俺の方が倍以上あるし、ゴリ押しで何とかなる気がする。
 現にさっきの攻撃が通って、残HPも俺の方が高い。よし。

「天罰! 天罰! 天罰! 天罰! くそ、当たらねぇ!」
「グォォォォォ!!」

 チラ、とルシアちゃん達を見るとしっかり結界を張ってくれていたので遠慮なく大技を出す。が、ヒョイヒョイ、と最小限の動きで躱してこちらに接近してきやがる。
 直線的な攻撃は無駄打ちになる、と思った瞬間の咆哮。空気を震わす衝撃波のようなものを浴びてしまってバランスを崩し地面に落ちてしまった。
 熊は?! と顔を上げると、角をこちらに向け突進してくる姿が視界一杯に映る。

「グギャァァァッ!」

 咄嗟にブレスを吐いたらこの至近距離ではさすがに避けられなかったらしく、火に包まれた頭を抱えるようにしてゴロゴロと転がる。火を消そうとしているのだろう。
 チャンスだ! 俺は体勢を立て直し、再び空中へと舞い上がる。

「血飛沫と共に踊れ!」

 一瞬貫通力・切断力に優れたウォーターカッターにしようかとも思ったが、散々避けられまくったせいか今回も避けられる予感しかせず、広範囲攻撃である竜爪斬にした。
 弱いモンスターならそれで細切れにできるのに、固い体毛に阻まれるのか致命傷にはならない。
 風圧で火が消えた熊が、こちらを睨みながらフーフーと荒い息で立ち上がる。
 さぁ、仕切り直しと行こうか!

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