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第八章 郷に入っては郷に従え
6 郷に入っては郷に従え 成人
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「そうだなあ。やる気の無え者は、時間をかけてもできるようにゃならねえ。俺らも暇じゃねえしな。よし、なる坊。言ってきてくれるか」
「いいよー」
「な、な、何を……」
「何をってそりゃあ、人員交代だな。陛下の頼みを無下にはできねえ。緋色殿下も受け入れたお頼みだろ?それならってんで、こっちだって、気合い入れて受け入れてんだ。うちの品とおんなじに作れるようにしてやろう、ってな。ところが、そちらさんに覚える気がねえならどうにもしようがねえ。もうちいと、覚える気のあるお人に来てもらうしかねえや」
広末が、偉そうな料理人に教えている。この人、覚える気になっても、覚えるのに時間かかりそうだな。
お茶を飲んだら、行ってこよう。緋色に言う?それとも、お城の厨房に言いに行く?お城の厨房に知ってる人はいないから、父さまに聞いてみる?
お茶がまだ熱いから、少し時間かかるけど。
「プリン、食べてからでええよ」
「そう?」
お茶をふーふーしていたら、壱臣が笑う。
「お、お待ちください、成人殿下!」
「私は!」
急に大きな声を出されると、びくってするよね。しかも、二人一緒に大きな声。壱臣も、びくってしたから、半助が俺たちの側に出てきた。
はあ、と広末が溜め息をつく。
「声を落としてくれるか?なる坊も壱臣さんも、大きい声は苦手なんだ。俺だって、いい気はしねえ」
「くっ……」
「申し訳ございません!」
さっきまで、ずっと黙っていたもう一人の料理人は、もともと声が大きいのかもしれない。
「私は、研修を続けさせて頂きたい!」
「お、おう。やる気があるんなら、俺は別に構わねえよ?」
だよね。それならいいんだよ。早く覚えてくれたら、もっといい。
広末と壱臣が、お茶をすすった。俺は、そおっと口をつける。まだ熱い……。
「あ、お二人もお茶どうぞ。半助も飲むか?」
「い、いただきます!」
壱臣の言葉に、半助は頭を横に振ったけど、声の大きい人は慌てて机に近寄ってお茶を飲んだ。
あち、って言った。
おお。料理人が皆、熱い食べ物や飲み物、平気な訳じゃないんだな。
「成人殿下はご存知ないでしょうが、料理を習う手順というものがございます」
「ん?」
偉そうな料理人が、何か我慢してるみたいに低い声で話し始めた。それはそれで聞こえにくいなー。
「その手順を守っておらぬから、親切に教えてやっておるのです」
「そんな手順とか、俺は知らねえよ。うちではずっと、このやり方だ」
「決まりというものがある。育ちが悪いから知らぬのだろう。であるから、」
「あのさ」
確かに俺は、料理人の手順なんて知らないけれども。俺が口を挟んだら、偉そうな人がむっと口を閉じた。
「うちの手順とお城の手順が違うってこと?」
「左様でございます」
左様でございます、はよく分からなかったけど、偉そうな人が首を縦に振ったから、そうだって事だな。
「じゃ、うちに合わせないと」
「は?」
「郷に入っては郷に従え、だからね!」
ふふん、と俺は顔を上に上げた。さっき聞いたんだよ、さっき。これ、ばっちりじゃない?
「は、あ……。いや……」
「おお。難しい言葉、知ってんな」
「おお。難しい言葉、知っとるねえ」
広末と壱臣の声が揃う。
合ってた。やったー。
「いいよー」
「な、な、何を……」
「何をってそりゃあ、人員交代だな。陛下の頼みを無下にはできねえ。緋色殿下も受け入れたお頼みだろ?それならってんで、こっちだって、気合い入れて受け入れてんだ。うちの品とおんなじに作れるようにしてやろう、ってな。ところが、そちらさんに覚える気がねえならどうにもしようがねえ。もうちいと、覚える気のあるお人に来てもらうしかねえや」
広末が、偉そうな料理人に教えている。この人、覚える気になっても、覚えるのに時間かかりそうだな。
お茶を飲んだら、行ってこよう。緋色に言う?それとも、お城の厨房に言いに行く?お城の厨房に知ってる人はいないから、父さまに聞いてみる?
お茶がまだ熱いから、少し時間かかるけど。
「プリン、食べてからでええよ」
「そう?」
お茶をふーふーしていたら、壱臣が笑う。
「お、お待ちください、成人殿下!」
「私は!」
急に大きな声を出されると、びくってするよね。しかも、二人一緒に大きな声。壱臣も、びくってしたから、半助が俺たちの側に出てきた。
はあ、と広末が溜め息をつく。
「声を落としてくれるか?なる坊も壱臣さんも、大きい声は苦手なんだ。俺だって、いい気はしねえ」
「くっ……」
「申し訳ございません!」
さっきまで、ずっと黙っていたもう一人の料理人は、もともと声が大きいのかもしれない。
「私は、研修を続けさせて頂きたい!」
「お、おう。やる気があるんなら、俺は別に構わねえよ?」
だよね。それならいいんだよ。早く覚えてくれたら、もっといい。
広末と壱臣が、お茶をすすった。俺は、そおっと口をつける。まだ熱い……。
「あ、お二人もお茶どうぞ。半助も飲むか?」
「い、いただきます!」
壱臣の言葉に、半助は頭を横に振ったけど、声の大きい人は慌てて机に近寄ってお茶を飲んだ。
あち、って言った。
おお。料理人が皆、熱い食べ物や飲み物、平気な訳じゃないんだな。
「成人殿下はご存知ないでしょうが、料理を習う手順というものがございます」
「ん?」
偉そうな料理人が、何か我慢してるみたいに低い声で話し始めた。それはそれで聞こえにくいなー。
「その手順を守っておらぬから、親切に教えてやっておるのです」
「そんな手順とか、俺は知らねえよ。うちではずっと、このやり方だ」
「決まりというものがある。育ちが悪いから知らぬのだろう。であるから、」
「あのさ」
確かに俺は、料理人の手順なんて知らないけれども。俺が口を挟んだら、偉そうな人がむっと口を閉じた。
「うちの手順とお城の手順が違うってこと?」
「左様でございます」
左様でございます、はよく分からなかったけど、偉そうな人が首を縦に振ったから、そうだって事だな。
「じゃ、うちに合わせないと」
「は?」
「郷に入っては郷に従え、だからね!」
ふふん、と俺は顔を上に上げた。さっき聞いたんだよ、さっき。これ、ばっちりじゃない?
「は、あ……。いや……」
「おお。難しい言葉、知ってんな」
「おお。難しい言葉、知っとるねえ」
広末と壱臣の声が揃う。
合ってた。やったー。
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