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監禁という名の快適生活(洗脳付き)
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監禁という名の快適生活に入って5日目になります、どうも、私です。
監禁部屋に連れてこられた翌日、朝ご飯と共に私が着られそうなサイズのお洋服が差し入れられた。
ちゃんと(?)男の子のモノでした。そして、最初着てたのと同じようなデザインだったけど、どう考えても材質が悪い。肌触りが悪いし伸びないもんね。
基本的にメイドさんは食事を持ってくるだけで、話しかけられることはない。私も話しかけない。
いや、3日目辺りまでは話しかけてみたよ。ここがどこか、とか、どうしたらいいのか、とか。返ってくるのは「私からお答えすることはできません」と「私には分かりかねます」だけだったけど。
無駄な努力はしませんよ。省エネこそサバイバルの極意よ。
「…まぁでも、そろそろ飽きたしなー。どうしよっかなー」
メイドさんとの会話を諦めた後、机に態とらしく置いてある本を読んでみた。ちなみに何の問題もなく読めた。言語チート万歳!
「それにしても…」
手にした本はずっしりと重い。紙ではあるが、厚みがあるせいだ。製版の技術はあるのか無いのかわからないが、これは手書きのようだ。
「言語チートって召喚時の標準装備なのかな?」
よっこいしょ、と椅子に座って本を開く。一度読んで内容は把握しているけど、あまりの暇さに。
パラパラとめくれるほど薄くも軽くも無いページをえっさほいさと開く。
2回目の内容は、当たり前だけど変わらない。
「…うぅーーーーん…これは…どう反応したらいいのやら…」
それは、神話。この世界の、慈悲深き女神のお話。
昔々、この世界には大地と空しかありませんでした。
寂しい寂しい世界に、一人の麗しき女神が降り立ち、その嫋やかな右手に握っていたタネを柔らかな息で飛ばしたのです。
すると、大地は見る間に緑に覆われました。
次に、女神は左の手に持っていたタネをぽとり、ぽとりと落としました。
すると、そこから様々なイキモノが生まれました。
それは、動物であったり、魚であったり、鳥であったり、竜であったり、精霊であったり、そして…ヒトであったり。
寂しかった世界は、とても賑やかになりました。
たくさんの種類の動植物。ヒトの数も増え、精霊たちも緑の中で踊っています。
楽しい楽しい、たくさんの色と光に満ちた世界。
もう、ちっとも寂しくなんかありません。
女神はたいそう喜び、世界に尊き加護を与えました。
その加護のおかげで、さらに緑は萌え、ヒトも動物たちも鳥たちも魚たちもよりいっそう増えました。
世界の端々までイキモノたちが生を営む、命あふれる大地は幸せに溢れていました。
しかし…そんな幸せは長く続かなかったのです。
ある時から、ヒトたちの一部が諍いを始めました。その火種は見る間に飛び火していき、たくさんのヒトたちが醜く争い始めたのです。
手に手に相手の命を奪う武器をもち、強靭な肉体を繰り、血を流していきます。
女神は嘆きました。なぜ、何故、争うのでしょう。
どの命も女神の大切な子どもたちであるのに。
女神の深い悲しみの涙は、雨となって世界に降り注ぎ、やがて大きな海となるほどでした。
それでも戦火が消えることは無かったのです。
そして…女神は…その細い人差し指を振りました。
すると、諍い争っていたヒトたちに変化が起こりました。
獣の一部がはえたり、角がはえたり、耳が尖ったり、小さくずんぐりとした身体付きになったり…。
争う心と同じような、醜い姿に変わっていったのです。
同時に、争っていなかったり、隠れていたヒトたちは、見た目の変化は無かったけれど、魔法という、格別な加護を授かっていました。
戦況は、一気にひっくり返りました。
姿が変わってしまったヒトたちは、その混乱の中、魔法が扱えるようになったヒトたちに下りました。
こうして、魔法が使えるようになったヒトたちは、姿が変わってしまったヒトたちを退け、力を与えてくださった女神に感謝を忘れず、女神の目指した正しい世界へと皆を導いていったのでしたーーー
「…どこからどうツッコめばいいのやら…」
コレが『地上』で言い伝えられている神話…。まぁ、コレだけじゃ無いんだろうけど…多分似たり寄ったりなんだろう。
だからこそ…
「…お兄さんしか残らなかったのかぁ…」
眷族からの信仰心が力となるなら…こんな『神話』が蔓延した以上、『ヒト』の信仰対象はあのクソ女神のみだ。
さらに…
「他の『人種』は蔑みの対象となるわけね…」
精霊に関してはその後が書かれてないからからどう言う扱いになってるのかわからんけども、お兄さんに聞いた話からしたら…碌なことにはなってないだろう。
「…さて、どうするかなぁ…」
このままここでまったりしていても、どうにもならんし、向こうが動く前にどう言う扱いになるかくらいは探りに行くかぁ…。
私は、オシャレ鉄格子に視線を合わせた。
宵闇が色濃く辺りを包み込む時刻。
「え、どっこいせっと…」
どうも、クライミング界の寵児、私です。
オシャレ鉄格子の蔦の一部をひん曲げて窓から抜け出しました。我ながら驚きのバカ力で正直ドン引きです。後でちゃんと直しときます。
そして、こんなところで崖登りスキルが役立つとは…人生、何が幸いするかわからないモノですね。
などと、内心よくわからない解説をしながらセミの如く城(仮)の外壁をクライミングしとるわけですが…
「…どこ目指せばいいんだ…?」
うーーむ、基本的に偉い人は高いところにいる気がする、という、何の基準にもならない思い込みで登ってるわけだけどね。とりあえず一番天辺まで登るかぁ…。
私のいた監禁部屋からほぼ真っ直ぐ天辺まで登って、屋根の上から周りを見渡す。
この段階になって初めて、私は自分の目がおかしいことに気づいた。…見えるのだ。周りが。元いた世界のように街灯やら家の灯りやらがあるわけのない、真っ暗な夜なのに。そう言えば、住処にしていた洞窟に入った時も、火がない状態でも見えてたなぁ…。
屋根の縁に座って自分の手を見る。小さな…紛れもない子どもの手。なのに…
垂直クライミングできる身体能力、鉄格子すら易々と曲げられる力、暗視能力。
「……」
…人間離れしてる現実を受け入れざるを得ない現状に、ちょっと悲しくなった。
監禁部屋に連れてこられた翌日、朝ご飯と共に私が着られそうなサイズのお洋服が差し入れられた。
ちゃんと(?)男の子のモノでした。そして、最初着てたのと同じようなデザインだったけど、どう考えても材質が悪い。肌触りが悪いし伸びないもんね。
基本的にメイドさんは食事を持ってくるだけで、話しかけられることはない。私も話しかけない。
いや、3日目辺りまでは話しかけてみたよ。ここがどこか、とか、どうしたらいいのか、とか。返ってくるのは「私からお答えすることはできません」と「私には分かりかねます」だけだったけど。
無駄な努力はしませんよ。省エネこそサバイバルの極意よ。
「…まぁでも、そろそろ飽きたしなー。どうしよっかなー」
メイドさんとの会話を諦めた後、机に態とらしく置いてある本を読んでみた。ちなみに何の問題もなく読めた。言語チート万歳!
「それにしても…」
手にした本はずっしりと重い。紙ではあるが、厚みがあるせいだ。製版の技術はあるのか無いのかわからないが、これは手書きのようだ。
「言語チートって召喚時の標準装備なのかな?」
よっこいしょ、と椅子に座って本を開く。一度読んで内容は把握しているけど、あまりの暇さに。
パラパラとめくれるほど薄くも軽くも無いページをえっさほいさと開く。
2回目の内容は、当たり前だけど変わらない。
「…うぅーーーーん…これは…どう反応したらいいのやら…」
それは、神話。この世界の、慈悲深き女神のお話。
昔々、この世界には大地と空しかありませんでした。
寂しい寂しい世界に、一人の麗しき女神が降り立ち、その嫋やかな右手に握っていたタネを柔らかな息で飛ばしたのです。
すると、大地は見る間に緑に覆われました。
次に、女神は左の手に持っていたタネをぽとり、ぽとりと落としました。
すると、そこから様々なイキモノが生まれました。
それは、動物であったり、魚であったり、鳥であったり、竜であったり、精霊であったり、そして…ヒトであったり。
寂しかった世界は、とても賑やかになりました。
たくさんの種類の動植物。ヒトの数も増え、精霊たちも緑の中で踊っています。
楽しい楽しい、たくさんの色と光に満ちた世界。
もう、ちっとも寂しくなんかありません。
女神はたいそう喜び、世界に尊き加護を与えました。
その加護のおかげで、さらに緑は萌え、ヒトも動物たちも鳥たちも魚たちもよりいっそう増えました。
世界の端々までイキモノたちが生を営む、命あふれる大地は幸せに溢れていました。
しかし…そんな幸せは長く続かなかったのです。
ある時から、ヒトたちの一部が諍いを始めました。その火種は見る間に飛び火していき、たくさんのヒトたちが醜く争い始めたのです。
手に手に相手の命を奪う武器をもち、強靭な肉体を繰り、血を流していきます。
女神は嘆きました。なぜ、何故、争うのでしょう。
どの命も女神の大切な子どもたちであるのに。
女神の深い悲しみの涙は、雨となって世界に降り注ぎ、やがて大きな海となるほどでした。
それでも戦火が消えることは無かったのです。
そして…女神は…その細い人差し指を振りました。
すると、諍い争っていたヒトたちに変化が起こりました。
獣の一部がはえたり、角がはえたり、耳が尖ったり、小さくずんぐりとした身体付きになったり…。
争う心と同じような、醜い姿に変わっていったのです。
同時に、争っていなかったり、隠れていたヒトたちは、見た目の変化は無かったけれど、魔法という、格別な加護を授かっていました。
戦況は、一気にひっくり返りました。
姿が変わってしまったヒトたちは、その混乱の中、魔法が扱えるようになったヒトたちに下りました。
こうして、魔法が使えるようになったヒトたちは、姿が変わってしまったヒトたちを退け、力を与えてくださった女神に感謝を忘れず、女神の目指した正しい世界へと皆を導いていったのでしたーーー
「…どこからどうツッコめばいいのやら…」
コレが『地上』で言い伝えられている神話…。まぁ、コレだけじゃ無いんだろうけど…多分似たり寄ったりなんだろう。
だからこそ…
「…お兄さんしか残らなかったのかぁ…」
眷族からの信仰心が力となるなら…こんな『神話』が蔓延した以上、『ヒト』の信仰対象はあのクソ女神のみだ。
さらに…
「他の『人種』は蔑みの対象となるわけね…」
精霊に関してはその後が書かれてないからからどう言う扱いになってるのかわからんけども、お兄さんに聞いた話からしたら…碌なことにはなってないだろう。
「…さて、どうするかなぁ…」
このままここでまったりしていても、どうにもならんし、向こうが動く前にどう言う扱いになるかくらいは探りに行くかぁ…。
私は、オシャレ鉄格子に視線を合わせた。
宵闇が色濃く辺りを包み込む時刻。
「え、どっこいせっと…」
どうも、クライミング界の寵児、私です。
オシャレ鉄格子の蔦の一部をひん曲げて窓から抜け出しました。我ながら驚きのバカ力で正直ドン引きです。後でちゃんと直しときます。
そして、こんなところで崖登りスキルが役立つとは…人生、何が幸いするかわからないモノですね。
などと、内心よくわからない解説をしながらセミの如く城(仮)の外壁をクライミングしとるわけですが…
「…どこ目指せばいいんだ…?」
うーーむ、基本的に偉い人は高いところにいる気がする、という、何の基準にもならない思い込みで登ってるわけだけどね。とりあえず一番天辺まで登るかぁ…。
私のいた監禁部屋からほぼ真っ直ぐ天辺まで登って、屋根の上から周りを見渡す。
この段階になって初めて、私は自分の目がおかしいことに気づいた。…見えるのだ。周りが。元いた世界のように街灯やら家の灯りやらがあるわけのない、真っ暗な夜なのに。そう言えば、住処にしていた洞窟に入った時も、火がない状態でも見えてたなぁ…。
屋根の縁に座って自分の手を見る。小さな…紛れもない子どもの手。なのに…
垂直クライミングできる身体能力、鉄格子すら易々と曲げられる力、暗視能力。
「……」
…人間離れしてる現実を受け入れざるを得ない現状に、ちょっと悲しくなった。
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