何ちゃって神の望まぬ異世界生活

鳥類

文字の大きさ
15 / 31

監禁という名の快適生活(洗脳付き)

しおりを挟む
 監禁という名の快適生活に入って5日目になります、どうも、アスです。

 監禁部屋ここに連れてこられた翌日、朝ご飯と共に私が着られそうなサイズのお洋服が差し入れられた。
 ちゃんと(?)男の子のモノでした。そして、最初着てたのと同じようなデザインだったけど、どう考えても材質が悪い。肌触りが悪いし伸びないもんね。

 基本的にメイドさんは食事を持ってくるだけで、話しかけられることはない。私も話しかけない。
 いや、3日目辺りまでは話しかけてみたよ。ここがどこか、とか、どうしたらいいのか、とか。返ってくるのは「私からお答えすることはできません」と「私には分かりかねます」だけだったけど。
 無駄な努力はしませんよ。省エネこそサバイバルの極意よ。

「…まぁでも、そろそろ飽きたしなー。どうしよっかなー」

 メイドさんとの会話を諦めた後、机に態とらしく置いてある本を読んでみた。ちなみに何の問題もなく読めた。言語チート万歳!

「それにしても…」

 手にした本はずっしりと重い。紙ではあるが、厚みがあるせいだ。製版の技術はあるのか無いのかわからないが、これは手書きのようだ。

「言語チートって召喚時の標準装備なのかな?」

 よっこいしょ、と椅子に座って本を開く。一度読んで内容は把握しているけど、あまりの暇さに。
 パラパラとめくれるほど薄くも軽くも無いページをえっさほいさと開く。
 2回目の内容は、当たり前だけど変わらない。

「…うぅーーーーん…これは…どう反応したらいいのやら…」





 それは、神話。この世界の、慈悲深き女神のお話。


 昔々、この世界には大地と空しかありませんでした。
 寂しい寂しい世界に、一人の麗しき女神が降り立ち、その嫋やかな右手に握っていたタネを柔らかな息で飛ばしたのです。

 すると、大地は見る間に緑に覆われました。

 次に、女神は左の手に持っていたタネをぽとり、ぽとりと落としました。

 すると、そこから様々なイキモノが生まれました。
 それは、動物であったり、魚であったり、鳥であったり、竜であったり、精霊であったり、そして…ヒトであったり。

 寂しかった世界は、とても賑やかになりました。

 たくさんの種類の動植物。ヒトの数も増え、精霊たちも緑の中で踊っています。
 楽しい楽しい、たくさんの色と光に満ちた世界。
 もう、ちっとも寂しくなんかありません。

 女神はたいそう喜び、世界に尊き加護を与えました。

 その加護のおかげで、さらに緑は萌え、ヒトも動物たちも鳥たちも魚たちもよりいっそう増えました。
 世界の端々までイキモノたちが生を営む、命あふれる大地は幸せに溢れていました。

 しかし…そんな幸せは長く続かなかったのです。

 ある時から、ヒトたちの一部が諍いを始めました。その火種は見る間に飛び火していき、たくさんのヒトたちが醜く争い始めたのです。
 手に手に相手の命を奪う武器をもち、強靭な肉体を繰り、血を流していきます。

 女神は嘆きました。なぜ、何故、争うのでしょう。
 どの命も女神の大切な子どもたちであるのに。

 女神の深い悲しみの涙は、雨となって世界に降り注ぎ、やがて大きな海となるほどでした。
 それでも戦火が消えることは無かったのです。

 そして…女神は…その細い人差し指を振りました。

 すると、諍い争っていたヒトたちに変化が起こりました。
 獣の一部がはえたり、角がはえたり、耳が尖ったり、小さくずんぐりとした身体付きになったり…。
 争う心と同じような、醜い姿に変わっていったのです。
 同時に、争っていなかったり、隠れていたヒトたちは、見た目の変化は無かったけれど、魔法という、格別な加護を授かっていました。

 戦況は、一気にひっくり返りました。

 姿が変わってしまったヒトたちは、その混乱の中、魔法が扱えるようになったヒトたちに下りました。

 こうして、魔法が使えるようになったヒトたちは、姿が変わってしまったヒトたちを退け、力を与えてくださった女神に感謝を忘れず、女神の目指した正しい世界へと皆を導いていったのでしたーーー






「…どこからどうツッコめばいいのやら…」

 コレが『地上』で言い伝えられている神話…。まぁ、コレだけじゃ無いんだろうけど…多分似たり寄ったりなんだろう。
 だからこそ…

「…お兄さんリュドミラードしか残らなかったのかぁ…」

 眷族からの信仰心が力となるなら…こんな『神話』が蔓延した以上、『ヒト』の信仰対象はあのクソ女神のみだ。
 さらに…

「他の『人種』は蔑みの対象となるわけね…」

 精霊に関してはその後が書かれてないからからどう言う扱いになってるのかわからんけども、お兄さんに聞いた話からしたら…碌なことにはなってないだろう。

「…さて、どうするかなぁ…」

 このままここでまったりしていても、どうにもならんし、向こうが動く前にどう言う扱いになるかくらいは探りに行くかぁ…。

 私は、オシャレ鉄格子に視線を合わせた。






 宵闇が色濃く辺りを包み込む時刻。

「え、どっこいせっと…」

 どうも、クライミング界の寵児、アスです。

 オシャレ鉄格子の蔦の一部をひん曲げて窓から抜け出しました。我ながら驚きのバカ力で正直ドン引きです。後でちゃんと直しときます。
 そして、こんなところで崖登りクライミングスキルが役立つとは…人生、何が幸いするかわからないモノですね。

 などと、内心よくわからない解説をしながらセミの如く城(仮)の外壁をクライミングしとるわけですが…

「…どこ目指せばいいんだ…?」

 うーーむ、基本的に偉い人は高いところにいる気がする、という、何の基準にもならない思い込みで登ってるわけだけどね。とりあえず一番天辺まで登るかぁ…。

 私のいた監禁部屋からほぼ真っ直ぐ天辺まで登って、屋根の上から周りを見渡す。
 この段階になって初めて、私は自分の目がおかしいことに気づいた。…見えるのだ。周りが。元いた世界のように街灯やら家の灯りやらがあるわけのない、真っ暗な夜なのに。そう言えば、住処にしていた洞窟に入った時も、火がない状態でも見えてたなぁ…。

 屋根の縁に座って自分の手を見る。小さな…紛れもない子どもの手。なのに…

 垂直クライミングできる身体能力、鉄格子すら易々と曲げられる力、暗視能力。

「……」





 …人間離れ亜神化してる現実を受け入れざるを得ない現状に、ちょっと悲しくなった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

うるせえ私は聖職者だ!

頭フェアリータイプ
ファンタジー
ふとしたときに自分が聖女に断罪される悪役であると気がついた主人公は、、、

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...