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どうも、召喚された地元民(仮)です

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 幾本もの白い柱が支える広い、広い空間。天井付近には綺麗なステンドグラスが嵌められており、外からの光で白い床に彩りを添えている。
 同じ空間内ではあれど、その光が届かない奥まった場所に、幾つもの人影がある。

 白く滑らかな肌の彫像は、美しい女神を模して造られたものだ。
 金の装飾は、彫られた物ではなく、宝石も嵌められた豪華なパリュールで、薄暗いこの場でもまるで光を灯したかのような輝きを放っている。

 そして、その女神像が見下ろす場所に彫られた複雑な紋様。

 その紋様を囲むように立つ6人の人間。誰もが黒いローブをすっぽりと頭から被っているため、年齢や性別すらもわからない。
 その輪から少し離れた、女神像の足元に置かれた石造りの豪奢な椅子に腰掛けるのは、これまた立派な衣服を纏った壮年の男。その男性の左右には、騎士と見られる屈強な体躯の男性と、神経質そうな男性。そして白を基調とした衣装を身に纏った者が3人。
 さらに同じような豪華な衣装を纏った若い男性と少女がおり、その周りにも騎士と見られる男たちが数人。

 彼ら全員の視線が黒いローブを被った6人と、彼らが囲む紋様に集中する。
 6人がブツブツと呪文を唱えると、床に彫られた紋様が輝き始めた。見物者達から小さな声がもれる。
 紋様はさらに光を増し…最終的に誰も目を開けていられないほどの強烈な光を放ち…

 その光がおさまった場所には…小さな影が蹲っていたーーー






(…あぁあぁぁぁぁ…)

 正に頭を抱えた状態で召喚陣のど真ん中に蹲るは…

 どうも、アスです。

 …じゃねぇんだよなぁ!!!

 顔は上げられない。だって何か周りがざわざわしてるんだよ…。某ギャンブル漫画かな?

 くっそぉぉぉあの駄女神マジも一回ぶん殴った上で今度は意識を保ったまま燃やしてやりてぇぇぇ!!


 こっそり伺った周囲の状況は、肩で息をしている黒フード数人、何か豪華な人数人、武力勢力的な人多数、後白い服の人。
 …チラッとしか見えなかったけどど真ん中の豪華すぎるオッサンが王さま的存在やろ。そのちょいと手前にいる、武力勢力に囲まれた、やっぱり豪華なお兄さんとお嬢さんが…王子と姫的な…?
 その他大勢はよくわからんが騎士とかだろうな。

 …あーもぅ、本当どうしよ…。って、どうしようもないけど。

 召喚されたことは間違いない。そして周りの面々が召喚者であることも把握した。だが、それを把握したからと言って、どうしようもない。ここはやはりお子ちゃまである事を前面に押し出して…とつらつら考えていたら、向こうの復活が思いの外早かったらしい。

「…面を上げよ」

 威厳があるかと言われるとちょっとよくわからないが、それなりによく通る声がかかった。思わずビクッとなった。
 恐る恐る顔を上げると…あちらも皆さま困惑気味。

 …デスヨネー。

 何のためかはわからんけど、何らかの要求を叶える為にわざわざ異世界から呼び出したのが…お子ちゃまだもんね。そら困る。私でもわかる。
 でもな? 私も困ってるんや。

 普通の人生歩んでたと思ったら、いきなりハードモードサバイバル生活に落とされて、今度は『亜神』がどーのと言われて、何とか混乱を落ち着かせていざ新生活! と思った途端の召喚コレやねん。

 ほんま、あのクソ女神碌なことせんな!!

「…そなたは…その…異世界からの…ゆ…勇…うぅむ…」
「………」

 『勇者』とか言っちゃう? 言っちゃう? 言えないよねー! だってお子ちゃまだもん! それに中身はともかくガワは地元産(笑)ですよ☆

「こ…ここどこですか…?」

 こうなったら『ワタシナンニモワカリマセン』でいこう、そうしよう!
 小動物感を出す為にぷるぷるしてみる。うふふイタイわー。アラサーにはツライわー(笑)

 横にいた黒ローブのうちの一人が、集まってコソコソ相談してるらしい王さま(仮)のところにヨロヨロしながら合流し、またコソコソしてる…。なんだなんだ。何でもいいが私はどうしたらいいんだ。帰っていい? 帰るところ無いけど。ついでにそろそろ小動物感を出すのに疲れたんだけど(笑)

「…と…とりあえず…そなたも混乱しておるだろう。今日のところはゆっくり休んで、また説明の機会を設けよう」


 いや、このまま放流してもらえるのが一番なんですけど…。言えないけどね!






「………うぅーーーーむ…」

 そこそこ広くてそこそこ豪華な部屋に通された後、小動物ムーブを再び発動したところ、案内してくれたメイドさん(?)がそこそこ量のあるご飯を置いて去っていった。
 現在お部屋に一人。

 で、こっちの世界で初めての『まともなご飯』をもぐもぐしてます。

 わーい、美味しいよぅ! 味があるよぅ!

 冷めたコンソメスープとロールパン的なパン、そしてちょっと固いけど、やっぱり冷めた塩胡椒で炒められた肉野菜炒め。
 多分今いるところはいわゆる『王宮』と呼ばれるところなんだと思う。違うとしても結構な地位の貴族宅だろう。
 そんな所で出される割には質素なご飯だが、味があるだけでご馳走だわ、と思うあたりサバイバルに毒されすぎている。

「冷遇というほどの対応では無いが、諸手を挙げての待遇でも無いと見た」

 引き続きもぐもぐしながら現状の把握に努める私。
 ご飯に何か入ってる可能性もチラッと考えたけど、お兄さん曰く『ヤバい果実』を食べてもお腹壊す程度で抑えられるらしいマイボディ強い内臓なら大丈夫だろう、と割と楽観視してもぐもぐしてます。

 出されたご飯を完食してからお部屋を探索…と言うほど見る場所があるわけじゃ無い。
 基本一部屋で、奥にベッド、小さなチェストと机が並び、左側にあるドアはトイレと簡易なお風呂がある。お風呂といっても、すのこのようなモノが敷いてある部分の上にシャワーヘッドがついているだけだが。シャワーがあるところに『元の世界』を感じる…。
 シャワーカーテンで仕切られた部分にトイレ。この便器も元の(以下略)。
 窓は一つ。ベランダとかでは無い普通のヤツ。そして…

「うーん…何と言うか…」

 蔦を模され、オシャレ感はあるが素材が金属製の時点でコレはいわゆる『鉄格子』というヤツだろう。ちなみに出入り口の扉にも外側から鍵がかけられている。


「……監禁されちゃってるよねー」



 サバイバルの次は監禁生活かぁ…。
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