上 下
105 / 132
ムーン大陸でも国造り

外の世界が少し騒がしくなってきたようですね

しおりを挟む
このムーン大陸に国ごと転移してきてから中の世界の時間で既に7年ほど経っている。

外の世界は中の約80倍速だから、600年ほど経っていることになる。

魔人の一部はまだ転移前から生きている人もいるようだが、人間の王家でいえば転移時の王族から既に10数代目になり、転移前の記憶なんて伝説や古文書レベルでしか残っていないのが実情だ。

転移した当時はお互いに助け合いながら国を作って生活基盤を作っていたんだけど、それらが十分に整ってきて年月が過ぎると、人間の悪い部分が出てくる。


そう、国同士で諍いが起き出したのだ。

元々そうならないように中の世界に各国の王族を置いて、各国の王族から選ばれる巫女を介して外の世界を上手く運営してきたんだけど、人間の欲望って奴はどうしようもないね。

まずはフェイクお告げ事件。

巫女を篭絡して自分達に都合の良いお告げをでっち上げようとした王族が出てきたのだ。

最初は自分の名声をあげるためとか、そんなレベルだったんだけど、少しづつ過激になってきて、ちょっとヤバいかなって思っていた頃に、ちょうどオシンさんの『女神クルステのファッション騒動』が起きた。

結局お告げを聞くためにたくさんの人が集まったからフェイクお告げがうやむやに終わったんで事なきを得たんだけどね。

オシンさんがお告げを出すたびにそれを聞こうとたくさんの人が集まるようになってからは、巫女さんの存在意義も薄くなっちゃった。

だって、元々はオシンさん声だけの出演の予定だったのに、洋服を見せたいからって顕在化しちゃったんだから、誰でも見れるようになるよね。

まあ結果オーライだからいいけどさ。




フェイクお告げ事件の次に起きたのは領土問題。

野盗対策に村々を繋げて大きな街をいくつも作ったんだけど、この時に国をまたがった村同士を繋いだ場所がいくつかあったんだ。

当時は国同士の中も良く、治安対策の方が最優先だったんで仕方なかったんだけど、古文書を引っ張り出して「この街の一部はウチの物だから税金の一部をよこせ」って言いだす王族が現れだした。

これに反応したのはその街を管轄する国の王家。

元々廃村寸前の貧しい村を吸収して発展させたのに、今更そんなことを言われても...だよね。

結局、紛争直前に『女神クルステ』が仲介に入り、問題になっている場所の住民を街の別の場所に移転させ、元の村に相当する部分を街から切り離した。

街とその村の間にあった街道は廃止し、何もなくなった村を孤立させた後、問題を起こした王族のいる国の王がその王族の領地をその村に移動させたんだ。

もちろん、今までの領地は全て没収だよ。

その後の処置はその王に任せたんだけど騒動が終息したから上手く収めたんじゃないかな。

同じような問題が出ていたところも、その処置を見て騒ぎを止めてしまった。

まあ、これも結果オーライって奴かな。



その次に起こったのが、王家同士の輿入れ問題。

転移時にクルステさんが、出来るだけ均等になるように国を分割してくれたんだけど、600年も経つと王家の統治能力の差によってどうしても貧富の差は出てくる。

そうなると、豊かな国と姻戚関係を結んで国を立て直そうとするのが王家の常だよね。

とはいっても魔国を入れて4国しかないから、その関係は非常に複雑になってくる。

だから出来るだけ輿入れさせる人数を増やして力関係を強くしようとするんだ。


結局、各国の王族内でもいくつもの派閥が出来て、それが国間で複雑に絡み合いややこしいことになっている。

これについては、どうしようも無くなって4国の王が連名で『女神クルステ』に相談に来たんだ。

俺達は集まって数日会議を行い、結果として今の4国制度を廃止して1国にまとめることに決定した。

そう、複数の国があるから利害関係が発生するわけで1つにしてしまえば問題ないということだ。

ただ、問題も残っている。

今の王家をどうするのかということ。

4人いる王から1人を選んだら、仮に3人の王が納得しても、その3王の国の王族は黙っていないだろう。

だから国をまとめる際に、全ての王家の廃止を決めた。

王政から共和主義に変えるのだ。

このあたりは顕在化しているノアさんに全員に教育してもらった。

最初は俺もよく知っている民主主義にしようとしたんだけど、王族をいきなり一般市民と同列にしてしまうのはいくら何でも危険すぎるというのがノアさんの考え。

共和主義と民主主義の大きな違いは、共和主義が特権階級による議会政治であり、民主主義は一般に開かれた議会政治であることにある。

王政から民主主義への過程に共和主義があると考えても差し支えないんじゃないだろうか。

とりあえず、全体王政を止めて各王族の中から王族による選挙で選ばれた人達を議員として政治を取り仕切ってもらう事になった。

そして魔人の中から数名の監督者を置き、彼らが議会の正当性を監視することにしたんだ。

なぜ魔人かって。

1つ目は長命であること。1人が何世代にもわたって監視できるので議会の世代交代に対しても不正を見抜きやすいから。

2つ目は人族よりも達観しているから。長命ゆえに欲が少なく全てに達観している魔人の方が監督者に向いているから。

魔人は元々魔法も使えるし人族よりも能力が高いから、もし魔国に征服欲があったら、とっくに魔国が世界を統一しているはずだからね。

それをしていないんだから魔人を信用するのがベターでしょ。

転移から600年。こうしてムーン大陸に新しい国『ムーン共和国』が誕生したんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

処理中です...