おでん、中華まん、ホットスナック、ドーナツ、ピザ、カレーパンに加え、パンやクッキーまで店内調理商品を拡充する方針を示している大手コンビニエンスストアチェーン「セブン-イレブン」。商品の品出し・陳列、レジといった通常業務に加えて各種公共料金の支払いや宅配便の受付など、ただでさえ業務が多い店舗にとっては、揚げる必要があるものも含めて店内調理品がここまで増えると、大きな負担になり“悲鳴”も出ているのではないか――。だが実際には、店舗の現場では意外にも歓迎の向きが多いというが、なぜなのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
全国に2万1615店舗(2024年9月末現在)を展開し国内コンビニ業界1位のセブン-イレブン。レジ横販売の食品としては、おでん、中華まん、ホットスナックが定番商品だったが、21年に発売した「お店で揚げたカレーパン」が大ヒットし、今年8月には店内で焼いたピザを最短20分で宅配するサービス、ならびに店頭販売を開始し、徐々に取り扱い店舗を増やしている。今年9月に首都圏の約5000店で発売した「お店で揚げたドーナツ」が2週間で約240万個売れるなど好調で、来年2月までに全国販売することとなった。さらに先月には、現在一部店舗で販売中の店内焼きたてパン「セブンカフェ ベーカリー」の取り扱いを全国3000店舗に拡大すると発表した。
気になるのは店員の負荷だ。たとえばホットスナックだけでも「揚げ鶏」「ななチキ」「北海道産じゃがいもの牛肉コロッケ」「アメリカンドッグ」「ジューシー粗挽きソーセージ」「BIGポークフランク」「炭火焼き鳥」「スパイスチキン」「スパイスチキンレッド」の9種類(エリアによって異なる/以下同)、ドーナツは「メープル」「チョコ」「カスタード」の3種類が販売されており、これに以下5種類の「セブンカフェ ベーカリー」が加わることになる。
「お店で焼いたふんわりメロンパン」
「お店で焼いたサクサククロワッサン」
「お店で焼いたチョコクロワッサン」
「お店で焼いたチョコクッキー」
「お店で焼いたバター香るフィナンシェ」
店長を含めて2~4人程度の店員でレジや品出し、イレギュラーな顧客対応などを行うなかで、これだけの量の店内調理をこなすというのは、かなり負荷がかかるようにも思えるが、小売業などへのコンサルティングを手掛けるBelieve-UP代表取締役の信田洋二氏はいう。
「意外に思われるかもしれませんが、実際にFC(フランチャイズ)店舗に話を聞くと、ドーナツに関していうと調理の手間がかからない割に売上があがるということで、現場からは概ね好評のようです。冷凍状態で届いた生地をフライヤーのカゴに並べてボタンを押すだけで、揚げるところから油切りまですべて自動で行われ、店員は出来上がったドーナツをカゴから取り出して棚に並べるだけで済みます。それで一日あたり1万円前後の売上があがるので、店舗としては“おいしい商品”と感じているようです。メロンパンとピザも一部店舗での試行販売では多く売れており、これらも冷凍で届けられたものを店内のオーブンに入れてボタンを押すだけで自動で完成品まで仕上がるため、手間は少ないと聞きます。ちなみにカレーパンは『ななチキ』などホットスナックと同じ油で揚げていますが、ドーナツは油を分ける必要があります。
セブンは店舗業務の追加・変更に関する取り組みを導入する際には、何カ月も一部店舗でのテストと改良を繰り返し、絶対に店舗のオペレーションが過度に煩雑になったりして負荷や支障が生じないことを確認してからではないと、導入には踏み切りません。いくらお金と時間をかけて検討しても、その点がクリアできない限りは見送りとなります。その点は、他のコンビニ大手2社と比較して非常に徹底しています。店舗の手間を大きく煩わせて反発を買うような施策は必ず失敗します。店舗オペレーションの混乱や無理は事故につながります。今はたった1店舗で生じた事故が全国2万店に影響をおよぼす時代であり、多額のコストをかけて全国の店舗に導入した後に中止となれば、その損失は大きなものになります」