相次ぐ不正をモノともしない好調決算だった。
トヨタ自動車が8月1日に発表した2025年3月期第1四半期(2024年4~6月)決算は売上高に当たる連結営業収益が前年同期比12.2%増の11兆8378億円、営業利益は同16.7%増の1兆3084億円だった。
第1四半期の営業利益として過去最高となる(以下、増減は前年同期比)。
一方、連結販売台数(主に中国を除くトヨタ・ダイハツ工業、日野自動車)は225.2万台と3.2%減少した。認証不正によるダイハツの生産停止などが響いた。中国を含むグループ総販売台数は263.6万台と4.2%減だった。
ただ、高価格帯が多いハイブリッド車(HV)の販売台数は海外中心に好調で99.8万台と過去最高を記録した。
販売が振るわなかったにもかかわらず、最高益更新の要因となったのが為替だ。トヨタの場合、年間で1ドル1円円安に振れると500億円の増益効果がある。超円安が進んだ4~6月はドルだけで前年同期より19円の円安となった。他通貨も合わせて為替による営業利益の押し上げ効果が3700億円あった。
さらに原価改善効果とサービスなどバリューチェーン売り上げの増加を含む「営業面の努力」が約1250億円プラスに働いた。認証不正による国内生産台数の減少や賃上げなどによる労務費増加、部品メーカーへの支援費用増を補った。
ただし、円安効果を除外すれば16.3%減益だったともいえる。
通期業績予想については「まだ3カ月で見直す段階にない」として、営業利益で19.7%減益の期初計画を据え置いた。足元では1ドル145円前後と急速に円安が修正されているが、トヨタの期初計画はもともと1ドル145円が前提である。
販売面で課題となっているのが中国だ。
4~6月の中国事業におけるトヨタ・レクサス販売台数は18%減の41.1万台だった。テスラに加えて、BYDを筆頭に中国メーカーがEVやプラグインHVを次々と投入しており、「値下げ合戦になっている」(トヨタ系部品メーカー幹部)。
トヨタの中国事業における連結子会社の営業利益は17%減の446億円、持ち分法による投資損益は73%減の149億円と苦戦を強いられている。
トヨタも体制再編や開発強化で対抗しようとしている。
昨年夏には中国事業で1000人の期間契約従業員の契約を満了前に終了した。中国の開発組織についても、BYDや第一汽車、広州汽車などの合弁会社の人材が参画する体制に改めた。トヨタ幹部は「基本的に中国は現地での開発を強化しないと競合企業に追いつけない」と危機感を示す。
今年4月には、中国ネット大手の騰訊控股(テンセント)とAI(人工知能)やビッグデータ、クラウドの3領域の開発で提携すると発表。6月には、中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)とも、次世代EVの車内コックピットである「スマートコックピット」の開発で協業することを公表した。
今後はこうした施策が中国市場での販売増に結びつくかが焦点となる。
トヨタグループでは2021年以降、商用車の日野自動車や小型車が主力のダイハツ工業、トヨタの祖業である豊田自動織機といったトヨタグループ各社で認証不正が相次いだ。
トヨタ自身も今年6月に計7車種で、虚偽データの提出や安全試験における試験車両の不正加工などが発覚。国土交通省の立ち入り検査の結果、7月31日には新たにミニバン「ノア」「ヴォクシー」やSUV「RAV4」など計7車種で不正が判明した。