また、鉄道事業者のeスポーツ部門、クラブ同士の交流戦も開催されている。2023年3月に京王電鉄、JR東日本スポーツ、東京メトロ、南海電鉄の4社は、「トレインマッチ」と題して「Fortnite(フォートナイト)」のeスポーツ施設対抗戦を実施した。
また、社会人eスポーツリーグ「AFTER 6 LEAGUE」には4つの競技で延べ103チームが参加しており、東京メトロ、JR九州もリストアップされている。企業内、企業間、異業種交流のツールとしてもeスポーツが活用されている。
永らく日本のeスポーツ活性化に取り組んできた人々は、企業や鉄道事業者の参入をどう捉えているのだろうか。
2002年に開設されたeスポーツ情報サイト「Negitaku.org」は、私がeスポーツライターを名乗っていた頃に、もっとも頼りにした情報源だ。管理人のYossy氏に聞いた。
「近年は、鉄道各社と並んで教育事業者、高齢者福祉の取り組みが印象的です。eスポーツ上達を目的としたスクール、eスポーツを通じた英会話、コミュニケーション促進などの事業が展開されています。小学生から大学生世代まで、幅広い層に需要があります。高齢者施設では、eスポーツが導入され、頭や手の運動、施設の仲間や孫たちとのコミュニケーション促進に一役買っています。これからの高齢化社会では、ゲームに親しみのある世代が増えていきますから、シニア向けのeスポーツサービスはさらに需要が増してくるのではないでしょうか」
鉄道事業とeスポーツの関わりはどうみているか。
「eスポーツの一般認知が促進されることに期待しています。近年では駅構内にeスポーツ施設ができたり、鉄道主催のeスポーツイベント告知ポスターが掲示されたりするようになってきました。多数の乗降客がある駅周辺におけるこのような流れは、不特定多数のeスポーツの存在を認知してもらえることにつながるので、eスポーツ業界には前向きであると捉えています」
大手私鉄は鉄道事業だけではなく、多数のグループ会社を持つ。ほとんどが沿線の人々の生活に関連しており、eスポーツの窓口として有望だろう。
もう1人、18年前の電通勤務時代にeスポーツの可能性を知り、その後独立してeスポーツ団体代表として大学や高校の講師を務めるなど、興行・教育の両面からeスポーツの普及に取り組んできた筧誠一郎氏に聞いた。鉄道事業者の取り組みの中では南海電鉄に注目しているという。
「鉄道業界は新規事業のひとつとしてエキチカのeスポーツ施設を作ることが増えてきています。これらの動向によっては数多くの鉄道業界が参加してくる可能性があると言えます。そのような中で南海電鉄は『eスタジアム株式会社』を設立し、eスポーツに関する『施設運営事業』『大会イベント事業』『オンラインサービス』の運営を行うということで本格的な事業参入をしたと言えます。特に泉佐野市の『eスポーツMICEコンテンツ実証事業』の受託者として、全国の子どもを対象とした職業体験イベント『eスポーツゲームクリエイターアカデミー2024春』などを行っており、さまざまな展開に注目しています」
鉄道事業者にとってeスポーツは「異分野・異業種」だ。イベント会場として施設を提供するだけではなく、eスポーツを理解した、あるいは体験した担当者と、運営ノウハウを持ったパートナー企業が不可欠だ。