ジョーの仕事ぶりは、ダメなシステムの典型です。
顧客の満足度という観点から見ても、仕事の効率が悪く、評判もよくありません。お客さんを怒らせることも多く、せっかくの修理の腕が高い評価につながりません。
「ダメなシステムの特徴」を挙げてみましょう。あなたに当てはまることがないか、考えてみてください。
一方、ミックの仕事のシステムはまったく違います。修理の腕はジョーに一歩譲るものの、顧客からの評価は抜群です。
「評価されるシステムの特徴」を挙げてみましょう。
修理の技術はジョーの方が高いのですが、ミックの方がジョーの店より早く修理が終わります。ミックは仕事の整理ができているので、結果的にたくさんの車の仕事が可能になるのです。
チェック・リストのおかげでミックの店では修理モレもありません。顧客の評価も高く、整備の腕を超えた収入を得られることになります。
2人の仕事ぶりの決定的な違いを一言で言えば「場当たり的かどうか」ということに尽きます。
ジョーの仕事はすべてが場当たり的です。「1日に何台修理するか」「今日、どんな修理をするのか」「このクルマの修理はいつ完了するか」。すべては状況次第です。
ミックの場合も、お客さんからの依頼がいつ来るかわからない点は同じですが、依頼が来たら、すぐに仕事を整理します。それで場当たり的な要素をなくしているのです。
不測の事態があっても、即座に仕事のシステムに組み込んで対応するようにしているということになります。
では、ミックは、いつ来るかわからない仕事をどうやって整理しているのでしょうか。
答えは、ミックは「自分自身と仕事との間に距離を置いている」です。別の言い方をすれば、次々に来る仕事を入れる「バッファー・ゾーン」を設け、そこで一度整理しているのです。
ジョーには、このバッファー・ゾーンがありません。だからジョーは、仕事が来たらその都度、反応するしかないのです。
バッファー・ゾーンを持っているミックは、新しい仕事との距離を置くだけではなく、そこで仕事を整理しています。
距離を置くだけなら仕事を「先送り」してため込むだけになります。実は、この「距離を置くこと」そして、そこで「仕事の整理をすること」が優れたシステムの基本になるのです。
夕方、今日1日を振り返り、発生した仕事にすぐ反応したことがなかったか、考えてみてください。
このようにすぐに仕事に反応するような状況はいろいろあります。思いつくものをすべて書き出してみてください。