新型コロナウイルスが1つの契機となり、食の多様化が進む一方、飲食店の廃業も少なくない。選択肢が減った消費者の受け皿の1つが弁当やスイーツのメニューを充実させてきたコンビニエンスストアだろう。
コンビニ各社は店内で調理した「できたて」メニューに力を入れる。ローソンは「まちかど厨房」、セブン-イレブンは「セブンカフェベーカリー」、ファミリーマートの「ホットスナック」と、それぞれ取り組みや狙う市場は違うようだ。狙いについて、コンビニ各社の担当者に話を聞いた。
店内調理によるできたて弁当の全国的な提供を早い段階から始めていたのが、ローソンの「まちかど厨房」だ。2011年の東日本大震災の時、ライフラインが使用できなくなった人に対して温かい料理を提供するという考えから始めている。
コミュニケーション本部広報部の塚田賢太郎マネジャーは「当初は新店を中心に導入しましたが、新型コロナを機に拡大のスピードを上げ、現在は全店舗1万4000店舗のうち約7割の9400店舗まで広がっています」と現状を語る。
購入のピークは、まずは朝の6、7時台から始まり、昼の12時台が最も多く、2番目に18時台と続く。「店舗数が増えた影響で売上は伸びていますが、1店舗当たりの売上も前年を上回っており、一定の評価は得たと感じています」と塚田マネジャーは話す。
商品本部デリカ・厨房部の吉田祐子シニアマネジャーは「売れ筋は、カツサンドやカレーで、一定期間に繰り返し購入するリピーターも多い。客層は40~50代の男性が中心ですが、働く女性にも好評で、たまごやカツのサンドイッチを購入しています。子育て世帯を含めて家の台所を支えていると考えています」指摘する。
この取り組みは10年以上が過ぎ、定着した感がある。例えば、ランチをする時、飲食店ではなく、まちかど厨房の弁当を選んでもらえる立場に近づいたという実感はあるのか?「飲食店、弁当屋と選択肢がある中で、わざわざ食べに行かなくても外食の味に近いものを楽しんでもらえるようになってきたと感じています」(吉田シニアマネジャー)
帝国データバンクが2024年10月8日に発表した「飲食店」倒産動向によると、2024年1~9月の倒産件数は前年同期比16.5%増の650件。このペースで推移すると通年の倒産件数は新型コロナによる外出自粛が直撃した過去最多20年の780件を上回るペースとしている。
事業規模でみると、10億円以上の倒産はわずか5件だが、1億円未満の小規模倒産が562件に達した。飲食店は「夫婦で1店舗を経営」という小規模な事業者が多く、今後も食材・光熱費の高騰といったあおりを受けての倒産が増えていくとみられる。そうした中で、飲食店に近い味をリーズナブルな価格で楽しめるまちかど厨房は好機となりそうだ。
ローソンは今後、厨房設備を持つという武器を生かしてデリバリー専用メニューであるゴーストレストラン事業の可能性を探っている。「現在、100店舗弱で行っていますが、ウーバーイーツなどのデリバリーサービスと連携し、注文を受けてから作るサービスです。また、マチカフェプラスというカフェ需要を狙うサービスもあり、注文を受けてからフレッシュなバナナなどのスムージーの販売に力を入れています」(塚田マネジャー)。