「採用面接で、リーダーシップのある人材、マネジメント力のある人材を見分けるポイントは何ですか?」そんな質問をいただくことがあります。面接だけで応募者の適性を見極めるのは非常に難しいですが、どんな話を聞き出すべきか、どんな点に着目すべきか、いくつかのポイントをお伝えしたいと思います。
まず知っておきたいのは、リーダーシップとマネジメントは似て異なる概念ということ。リーダーシップは「動きをつくるもの」、マネジメントは「無駄を減らすもの」ですから、企業ステージによって求めるべき人材が異なります。
企業の創業期や変革期は、新しいものを生み出さなくてはいけません。変わらなくてはいけません。そのため、リーダーシップが重要になります。
リーダーシップに長けているのは、一言でいうと「非常識な人」。世間の常識や過去の慣習にとらわれず、自由にいろいろな発想ができる人でなければ、本当に新しいものをつくったり、会社を変えることはできません。
一方、新しい事業が立ち上がり、ビジネスが軌道に乗り始める安定期になると、マネジメントが重要になってきます。マネジメントに長けているのは、仕組みをつくり、きっちり回していく人。いわゆる「しっかりした人」です。
新しい事業を生み出したり、現状を変えていくためには、トライアンドエラーを繰り返していくことになるので「無駄」はつきもの。無駄を生み出すリーダーシップと無駄を減らすマネジメントは、相反する能力といえます。
リーダーシップとマネジメント、両方とも得意な人はそう多くないでしょう。ほとんどの人はどちらかが苦手だったりするので、「いま自社に必要なのはどちらなのか?」という認識を持って採用面接にのぞむことが重要になります。
では、どのようにして応募者の適性を見分けたらいいのでしょうか。マネジメントにも「タスクマネジメント」と「ヒューマンマネジメント」の2つのベクトルがあり、それぞれ求められる能力が異なります。
タスクマネジメントとは、目標達成に向け、計画を立案し、進捗を管理し、計数も管理しながら、成果を上げていくこと。チームのPDCAを回し、段取りよくタスクを実行していくことが求められます。
一方、ヒューマンマネジメントとは、コミュニケーション力に加え、メンバー1人ひとりのキャリアビジョンやライフビジョンを把握し、適切なアドバイスをして、人を育てることです。
タスクマネジメントに長けているのは、いわゆる「仕事ができる人」。そのため、
「できない人」の気持ちがわからず、人に教えたり、人を育てたりするヒューマンマネジメントが苦手な傾向があります。
一方、ヒューマンマネジメントに長けているのは、「人の気持ちがわかる人」。傾聴力があり、メンバーから信頼されますが、その反面、情に流されてしまい、タスクマネジメントが苦手だったり、疎かになったりする傾向があります。
タスクマネジメントとヒューマンマネジメント、どちらもできる人はいますが、基本的にはどちらかに偏っていると考えたほうがいいでしょう。採用面接では次のような質問をして、どちらのタイプなのかを見分けていきます。
■タスクマネジメントに関する質問
「これまでのチーム目標を達成したときの経験を聞かせてください」
「計画を立てるときに気をつけたのは、どんなところですか?」
「計画通りに行かないときは、どのように対応しますか?」
「目標を達成しなかったことはありますか?」
「目標を達成できなかった理由は何だったのでしょうか?」
■ヒューマンマネジメントに関する質問
「あなたが育てた人は、何人くらいいますか?」
「その人たちは、今は何をしていますか?」
「人を育てるのに失敗したことはありますか?」
「失敗したのは何がいけなかったと思います?」
「人を育てるとき、どんなところに苦労しますか?」
適性を見極めるポイントは、上記のような質問に対して「具体的な経験」を話せるかどうか。自身が経験したことを、その情景がありありと思い浮かぶようなエピソードとして話せる人は、タスクマネジメント人材、あるいはヒューマンマネジメント人材として期待できるでしょう。
逆に、自身の経験をうまく話すことができない人や、抽象的な答えしか返ってこない人は、マネジメントに適していない、と判断していいでしょう。
タスクマネジメントもヒューマンマネジメントも「人に伝える」ことが重要な仕事なので、一定のコミュニケーションスキルは不可欠です。自身が経験したことを簡潔にまとめ、3〜5分くらいでわかりやすく話すことができるか、それが興味深い話として聞けるか、といったポイントにも注目してみてください。
また、「人を育てるのは好きですか?」と聞かれて「好きです」と答える人ほど、実はヒューマンマネジメントが得意ではないケースが多く見られます。人はなかなか育ちません。実際に部下やメンバーを育てた経験があり、その難しさを実感している人は、簡単に「好き」とは言えないはずです。
「とても得意とは言えません。何とかしたいと思っているんですけど、なかなかうまくいかないですね」などと言いながらも、人材育成の経験についてイキイキと話せる人のほうがヒューマンマネジメント人材として期待できます。
タスクマネジメントにしてもヒューマンマネジメントにしても、自身の得意・不得意を客観的に見極めているかどうか。これも大事なポイントです。