人事業界には「お腹が空いているときに採用してはいけない」という格言(?)があります。「悪くないから、とりあえず採用する」はNG。空腹時には何を食べても美味しく感じますが、あわてて食べてお腹を下すこともあります。採用担当者の皆さんは、自社が「お腹がすいてないか」よく自覚しましょう。
採用はリスクがつきものです。人が足りなくて猫の手も借りたいような状況で採用をすると、たいてい失敗します。特に注意が必要なのは「履歴詐称」。学歴詐称・職歴詐称、病歴詐称など、応募者の「虚偽の申告」は、実は非常に多くあります。
履歴書に「東京大学卒業」と書いてあったが、卒業証明書をよく見ると「東京〇〇大学」という別の学校のハンコが押してある偽造書類だった。「□□大学卒業」と書いてあったが、たまたま同年度卒業の知人に卒業名簿を見せてもらったら、応募者の名前が載っていなかった。前職は「●●新聞社」と書いてあったが、調べてみたらグループ内の広告代理店だった…。
さまざまな会社で、このような履歴詐称が頻発しています。私自身もいろいろな詐称を見てきましたが、自社が採用した人(それなりに偉いポジションの人です)が競合にいたことを隠していた事件もありました(たまたま競合の有価証券書を見た社員がいてその人の名前があったのです)。
履歴詐称は、決して珍しいことではありません。採用担当者の皆さんは「履歴書や職務経歴書は本当なのか」という認識を持って慎重に確認しなくてはいけません。詐称が発覚した場合に解雇をするためには、契約書や就業規則に解雇条件をきちんと記載しておくことが必要です。こうした記載漏れもないよう十分注意してください。
採用リスクといえば、雇用のミスマッチも多く見られます。仕事ができない、社風に合わない、すぐ離職してしまうなど、ミスマッチの事例は多岐に及びますが、特に注意したいのは、採用した社員がモンスター化してしまうこと。私たちの会社にも「モンスター社員をどうしたらいいでしょうか」というご相談がしばしば来ます。
モンスター社員とは、モンスターペアレントなどと同じで、企業や職場をおびやかす、自己中心的かつ理不尽な社員を指す言葉です。
マネージャー経験があるといって応募してきた人を即戦力として採用したら、実際にはそのスキルがまったくないことが発覚。だからといって解雇はできないので、プレイヤーになるように伝えたら逆ギレ。マネージャーとしてはまったく成果をあげないので低評価をしたら「不当だ!訴える!」と騒ぎ出して訴訟問題に発展…。
このような経歴詐称やスキルがない人をはじめとして、遅刻の常習犯、仕事を全然しないサボり魔、協調性が皆無、すぐキレる、何を言っても反抗する、自分の意見が通らないとすぐスネる、「会社が悪い」「上司が悪い」「社会が悪い」と何でも他者のせいにする…など、モンスター社員の事例は枚挙にいとまがありません。
会社には就業規則があり、ルールに違反した社員は懲戒処分にすることが可能です。とはいえ、こうした「困った社員」を入社させるのは極力避けたいもの。周囲に迷惑をかけるモンスター社員を採用すると、他の社員が辞めてしまう人材流出リスクも高まります。どうしたら採用の失敗を、防ぐことができるのでしょうか?