もう一つ、重要なポイントがあります。
移動時間のインプットを効率化させるためには、テキスト選びが重要です。理想は1科目につき1冊です。そして、平易な言葉で書かれており、薄いながらも試験範囲を網羅している優秀なものを選びましょう。
社会人の独学受験生が避けるべきなのは、分量が多く、難しい言葉で書かれている本です。具体的には、大学の研究で使うような、ハードカバーの分厚い本です。このような本は学問研究には必須だと思いますが、時間のない受験生には向いていません。
理由は単純で、読むのに時間がかかるからです。テキスト選びは試験の合否を分けるほど重要なので、情報収集を怠らないようにしましょう。
これを踏まえて、合格までに必要なテキストを整えたら、あとは徹底的にそれを読みこみます。ルーティンをつくり、毎日同じ分量を読み進めていければ望ましいです。最初は内容がわからないため読み終えるのに苦労しますが、二周、三周と繰り返すうちに、読むスピードが自然に上がっていきます。
「速く読む」ということはとても重要です。なぜなら、速く読めば読むほど、周回のスピードが上がり、同じ論点に触れる機会が多くなるからです。多くなれば、必然的に理解が進みます。
社会人の独学受験生は、専業受験生に絶対的な勉強時間ではかないませんので、スピードを重視して学習効率を高める方向性を目指しましょう。
私が受験していたときは、司法書士試験と公認会計士試験は、インプットとアウトプットを並行して行い、10日ほどで試験範囲を一周するペースで勉強していました。行政書士試験も同様の条件で、5~6日で一周していたように記憶しています。
続いて、移動時間にアウトプットの学習を行う方法についてです。
こちらも、基本的なことはインプットと同様です。事前に試験本番で求められるレベルを把握します。そのうえで、問題集は過去問を中心に、コンパクトに収まった1冊を選ぶとよいでしょう。
解くべき問題は、圧倒的に過去問を重視すべきです。過去10年分ほどの過去問をマスターできれば、合格にはそう遠くないはずです。
もちろん、未出題の論点が出ることもあります。しかし、過去問と頻出の論点を理解しているのにまったくわからない問題が出たとしたら、ほかの受験生も大半は解けないはずです。従って、合否には影響しません。
過去問は出題実績のある重要論点なので、まずは一定期間の過去問を完璧に理解し、余裕があれば未出題の論点についても、手を出すことをすすめます。
ただし、例外もあります。法令や会計基準などが変わり、新たなルールに沿って試験範囲が変更された場合です。重要な新論点は出題可能性が高いので、過去問になくても漏らさず理解しておく必要があるでしょう。
アウトプットの学習も、インプットと同じくスピードを重視しましょう。同じ問題であっても、解くたびに、より内容がわかるようになります。
注意すべきは、「わからない問題があったらすぐに解答を見ること」です。ちょっと考えてもわからない問題は、時間をかけて考えてもわかりません。時間をかけると学習効率が落ちてしまうので、すぐに解答を見て、時間を節約しましょう。
そのうえで、二周目以降に解答を見なくても答えを導けるように、内容を記憶に留められる努力をしましょう。二周、三周、と繰り返しても同じ問題を間違えるようであれば、重点的にその論点を学習すべきです。
このように、移動時間に工夫をすれば、充実した学習時間を確保できます。
私の経験でも、TOEICや行政書士試験については、ほぼ移動時間のみで学習していたように思います。まずはテキストをカバンにしまうことから始め、移動時間を有意義な時間に変えることをおすすめします。