きみはぼくの
CHECK!!
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雑誌に紹介!
日経WOMAN(2008年1月号)に市川拓司インタビュー記事とともに紹介されました! -
新聞に紹介!
著者インタビュー記事が「産経新聞読書面『私の修行時代』」(2007年1月14日付)に掲載されました! -
雑誌に紹介!
「女性セブン」(2007年1月25日号)に紹介されました。 -
雑誌に紹介!
著者インタビュー記事が「編集会議」(2007年2月号)に掲載されました! -
雑誌に紹介!
著者インタビュー記事が「元気がでるからだの本」(オレンジページ/2006-2007冬号)に掲載されました! -
「本の雑誌」に紹介!
「WEB本の雑誌」に現役書店員さんのおすすめ本(成田本店とわだ店/櫻井美怜さん)として紹介されました! -
書店さんPickUP!
原点の書店さんにて
…
“この書店さんこそが、ぼくが初めて自分の小説が平積みになっているのを目撃した場所だったのです”――――(本文P148「目撃」より)
さらに後には市川氏が初めてサイン会を行うこととなった東京は立川市にある「オリオン書房ノルテ店」さんに市川氏とおじゃましてまいりました。
既に文芸担当の白川さんとは懇意である市川氏。サイン本制作のためサインペンを滑らす手と並行して、最近の本や映画の話、そしてお互いに読んでいる本のおおくが共通していると言う「欧米翻訳文学」の話が、こちらも口滑らかに飛び交います。
この「きみはぼくの」のなかに市川氏が繰り返し読んできたという欧米作家のアーヴィングやジョン・ファウルズなどのことが出てきますが、「実はまったく同じような読書体験なんですよ」という白川さん。目の前の作家さんと書店員さんはやはり何か見えない糸で必然的に繋がったんだろうな、と思わず感じさせられました。
市川氏のこのエッセイに対する想い入れは並々ならぬものがあります。自らの小説が狙いや計算ではなく、自分という人間そのままから出てきていることを知って欲しい、ということで病気のことをはじめ、これまで決して順風満帆ではなかった半生をあけっぴろげに、そしてエンターテイメント作家らしく面白おかしく語っています。
「ただ、そんなぼくでも、あがきながらも、とにかくずっと働いて稼いでやってきた」そんなことをこの本から例えばニートの人たちが何か感じてくれるといいな、とも。
そんな話からいつの間にやら
話題はニート問題の本質とは?に。そして最近の携帯小説事情から先日のGoogleのYoutube買収まで、市川氏も白川さんも途切れることなく話は広がり、気づけばお忙しい中、二時間ほどお邪魔してしまうことになりました。とても刺激になる心地よい時間を過ごさせていただきました。
――実は「オリオン書房ノルテ店」さんはアルファポリスにとっても特別な書店さんであります。会社が産声をあげた、初期の初期のころから刊行本を必ず平積みいただき、名の知れない新興の出版社を温かく育てていただきました。
白川さん、オリオン書房の皆様、本当にいつもありがとうございます。
そして今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
(2006年10月/カジ)
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きみはぼくの――まえがき
「だって、きみはぼくの―――――」
「うん」
「きみはぼくの、ただ一人のかけがえのない妻なんだから」
いいなあ、と彼女は言った。
すごくいいよ。
***
これは、ぼくの最初の単行本「Separation」の一節。
インターネットで公開していた当時の原題は「きみはぼくの」でした。
愛する者を失う不安。ぼくは幼い頃からこの思いとともに暮らしてきました。それは決して去ることのない執拗な想念、心に焼き付けられた深憂の回路、オブセッションです。
それが、ぼくにこの小説を書かせました。
結局、書くにせよ、読むにせよ、このオブセッションというものがぼくを突き動かしているんだなって、最近思うようになりました。好んで読む小説は、ほとんどがそのようにして描かれた作品ですし、描く小説もそう。もしかしたら、ぼくは無意識のうちに同類を探し求めているのかも知れません。小説というのは、とても分かりやすいメッセージです。「わたしはここにいます」。同じ思いを抱えて生きている人間はそれを見つけます。そして、安心するんですね。この世界に、こんな生き方をしている人間が他にもいるんだ。わたしひとりだけではないんだ、って。混乱は少しだけおさまります。いままでよりも、少しだけ深く息が吸えるようになる。
仲間は多くありません。だから、そう簡単には出会えない。けれど、出会ったなら、ぼくらは、ぼくら特有のやり方で深く結び付きます。おそらくそこには、記憶と時間、想像力が関与しています。それがぼくらの恋愛の三種の神器です。
時間がじっくりと関係を深めていく。そして、ぼくらはつねに出会いの瞬間に立ち帰ります。出会えてよかった。離れずにいてよかった。
あったかもしれない別の人生を思い、ぼくらはおののきます。ぼくらはいまを愛し、それ以上にいままでの日々を愛します。
一方で、ぼくらは未来を恐れます。心気症的展望。ここでは過剰な想像力が、逆にぼくらを苦しめます。
かけがえのない相手。そう思った瞬間から不安は始まる。相手が実際以上に脆く儚い存在に思えて仕方ない。小さな咳も、何気ない溜息も、触れた手の冷たさも、すべてがなにかのシグナルのように思えてならない。だから、一秒たりとも無駄にできない。愛を惜しんでいるひまはない。だって、次の瞬間には、相手がいなくなってしまうかもしれないんだから。
そう思わずに生きることができたら、どんなに楽だろうと思うこともあります。でも、これはオブセッションです。自分の意思で変えることはできない。脳の構造に組み込まれた宿命です。
だから、ぼくらは相手を慈しみます。愛は、長く生きて欲しいという願いと同義になります。つねに身体を気遣い、心が曇らないように気を配ります。
近くにいれば、いつも無意識のうちに、相手の身体をさすっています。幼い頃から、ぼくは母親にそうしてきたし、いまは、同じように奥さんの背中や足をさすります。
こういった体験や思いが、そのままぼくの小説になっているわけです。
そして、このエッセイ。
読まれれば分かると思いますが、実際のぼくらは、エネルギーに満ちあふれ、行動だけを見ればひどく陽性な人間です。けっして、悲しい顔なんかしていない。どちらかといえば、剽軽でおっちょこちょい。軽率で饒舌。ぼくは、一日中冗談ばかり言っているし、隣家に響くぐらいの大きな声で笑います。笑うことが大好きだし、笑わせることも大好きです。
だから、取材や顔合わせで、ぼくと初めて会う出版社の方たちは、ほぼみなさん同じような驚き方をされます。
「こんなに、饒舌で快活なひとだとは思わなかった」
小説だけを読めば、物静かで、ちょっと憂いのある人間がやってくると思ってしまいますもんね。
もしかしたら、陽気に振る舞うことが、相手の命を長らえさせる、ってことに本能的に気付いていたのかもしれません。寛容であること。相手をつねに褒め、無意識のうちに欠点ではなく長所を見る。いつも笑わせて、暗い顔なんかさせない。最近になって、そういったことが、人間の免疫力を高めるのだと言われるようになってきました。逆に、叱責されたり、欠点ばかり指摘され続けると、そのストレスが、免疫力を低下させていく。
その記事をどこかで読んだとき、「ああ」ってぼくは思いました。
「身体をさすることも、冗談言って笑わせることも、同じ思いの現れだったんだ」
愛する人間のために必死になって生きている。でも、それをあらためて俯瞰してみると、けっこう滑稽なこともやっていますね。そんなときは、読みながら、くすりと笑っていただければ幸いです。なにせ、ぼくは笑ってもらいたがりなので。
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目次
六歳のぼくが書いた別離のおはなし 10
小さい頃から筋金入りの不眠症 14
あだ名が「宇宙人」 19
SFっ子 24
実はあまり本を読んでいない 30
彼女との出会い 36
突然襲ったパニック障害…… 41
周回遅れの就職活動 45
就職、しかし三ヶ月で退社 50
鉄騎兵部隊 55
日本一周したけれど…… 59
旅先に会いに来てくれた彼女、そして結婚 65
最初の小説 72
ミステリー作家を目指す 76
クリスマスの夜の彼女 81
再びミステリー作家を目指す 88
またまた落選 93
ネットデビュー 97
「VOICE」 101
家族が幸せだった頃 104
よくできた偶然 111
紙媒体への挑戦 116
崖っぷち 120
出版化決定 125
出版に向けて進む 130
営業活動開始 134
本屋に並ぶ 139
暗雲…… 143
目撃! 148
三つの書評 153
運命の一投 157
金八先生 161
スーツを買う 166
待ち合わせ 171
「いまあい」誕生秘話 176
話が通じる悦び 182
ネット小説「いまあい」 187
TVドラマ化! 193
初めてのインタビュー 198
退社、専業作家へ 203
「いまあい」映画化へ 208
幸運と違和感 213
未成熟な作家 217
あとがき 222
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市川拓司原作「ただ、君を愛してる」10月28日公開
市川拓司著「恋愛寫眞―もうひとつの物語」原作の映画「ただ、君を愛してる」(主演:宮崎あおい/玉木宏)が10月28日より全国東映系にて公開されます。