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約500年前。悪魔テスカトリポカは、メシカ王国には金銀財宝が眠っていると侵略者達を煽った。そのため正義の神ケツアルコアトル神は悪魔の全知全能の能力を奪った。それを恨んだテスカトリポカは4アウン3カンキン(西暦20✖️✖️年12年23日)までに、人間自身の手でこの世を破壊させるよう仕向けてやると言って消え去った。海を渡って来た侵略者達の暴虐によりメシカ帝国は滅亡したが、破壊された建造物と累々たる屍の中から一匹の小動物テチチが現れた。このままでは彼も餌食にされてしまうとケツアルコアトルは、食卓にも供されるテチチを神の使いチワワに変貌させた。
そして現代。太平洋に突然九州より大きな島が出現した。トナテイウ国と自ら名乗り、諸国に移民を募ったが、日本から最も多くの人々が応募し、太平洋を渡ったが、始祖テチチの血を継ぐチワワも多数含まれていた。チワワ達は、トナテイウは悪魔テスカトリポカが人類破滅の為に作ったことを見抜き、奇妙な毒花龍頭蘭中毒から覚醒した移民達や、テスカトリポカに奴隷のごとく使い捨てられていた目覚めた分身達と共に軍団を結成した。一方日本ではたった一匹残されたタロウが、テスカトリポカが撒いた欲望の種を飲んでしまったために、分身の中でも最も凶暴なジャガーに射殺された育ての親田中夫妻の仇を撃たんと、人間の協力者を得て一味と対決していた。
テスカトリポカの言う人類破滅の日4アウン3カンキンは直ぐそこまで迫っている。
文字数 156,603
最終更新日 2024.05.06
登録日 2024.04.30
駿河国由比ヶ浜にかつての住人弥右衛門と息子の喜平次がやって来て、私の命の恩人だと吉岡次郎之介と妻の早苗を紹介し、ここで染め物屋をすることになったのでよろしくと言った。あばら屋となっていた弥右衛門の旧家は建て直され、翌年には女の子が生まれ夕と名付け、11年後には男子が誕生し、治三郎と命名した。だが夏の終わり、地震と津波が襲って来て大きな被害を被った。夕も津波に飲み込まれる寸前だったが、次郎之介の機敏な動きに助けられ危難を逃れ、父は尊敬の対象になった。そして翌年、大阪の陣が切って落とされ、かつては石田三成の家臣だった次郎之介は夕に後を託し、大阪に向かった。だが豊臣は滅亡し、次郎之介は戻って来なかった。
男の子二人が三歳になると、夕による教育が始まった。基底は徳川憎しと大義の確立である。だが治三郎にはその気が全くない。ホラを平気で振りまく。対して久米之介は真面目そのものである。だが祖父の命の恩人の孫だから忠義を尽くせと言う親の方針には疑念を持っていた。彼の悩みは治三郎に対する忠義は虚であり、優しく接してくれる夕に対する思いは実であることだった。治三郎の虚言癖は止まることを知らず、遂には時の最高権力者徳川家光に対する誹謗となり逮捕されたが、喜平次の工作で釈放された。夕は修行を命じ久米介という家来付きで仏門に入った。だが坊主見習いとなって得たものは悪所通いだけであった。
三年後、寺を辞したが、久米之介は自称楠木正成の血を引く者だという楠木大膳なる怪しげな老人と知り合い、家に連れ帰った。夕は胡乱なやつと危ぶんだが、幕府を倒すためには江戸に行かなければならない、その時がやって来たのだと思い江戸行きを許した。大善の持つ楠木正成の兵法書と幟を我が物にせんと狙う治三郎、二人まとめて有り金全てを奪おうと企む大膳、治三郎では夕様の言う大義は確立出来ない。ならば私が成り代わって実現させようと思う久米之介、それぞれの思惑を秘めて三人は江戸に旅立った。
二百六十余年もの幕政の基礎を築いた知恵伊豆こと松平信綱は累々たるキリシタン信者の屍を見ながら、次なる標的に的を絞っていた。キリシタンはこれで闇の中に潜むであろう。外様大名は牙を削ぎ落とすであろう。残るは武人派南海の龍こと徳川頼宣、たとえ御三家だろうとも安寧を脅かす者は許さない。
知恵伊豆は『楠木流軍学 張孔堂』の門を潜り、由比正雪の登場を待った。やがて三十代半ば総髪の人物が出てきた。静かな出だしである。だが次第に激してくる。
客も高揚し、「然り!」などと声を挙げている。「虚に生きるべきではない。虚に走るはたやすく、実に止まるは困難を要する。だが恐れてはならぬ。それが誠の武士道である。大義に生きよう」
知恵伊豆の射るような視線を浴びながら正雪は自らも陶酔していた。
戦いの幕はまだ切られたばかりである。
文字数 122,961
最終更新日 2024.04.24
登録日 2024.04.14
時は幕末。日本を植民地にと企む欧米列強の戦艦が黒光りする大砲を陸地へ向け押し寄せていた。攘夷(異人排斥)では一致していたが、国内では体制を維持し外敵に備えるというそ佐幕派と天皇を中心とする体制を築く尊皇派が厳しい対立をしていた。
将軍家茂が上洛するためのせ先遣隊が募られ二百を超える浪士が参集したが後に新選組を結成する近藤勇や土方歳三もいた。上野国(福島)からやってきたのは中澤貞祇と男装の妹琴。史上初の女性剣士誕生である。
父の孫右衛門は法神流剣道の創始で、琴は竹刀を玩具にして育ってきた。
先遣隊は将軍の一行より一日早くし出発し、奥州街道から中山道へと移動した。道中、富士を見ながら土方は言った。
「富士は大きいが人は努力すれば富士より大きくなれる。」と。
琴はそんな土方に心を魅かれた。
京に着くと隊長の清川が皆を集めて偏列を始めいきなり切り出した。
「我々が目指すのは尊皇攘夷である。江戸に戻り徳川幕府を倒す。」
正体を表したのである。
芹沢鴨や近藤・土方などが席を蹴り退場した。
琴は土方と行動を共にしたかったが兄が動かないので自重した。入隊を誘った佐々木只三郎が言った。
「清川は江戸を火の海にするつもりだ。そうはさせん。我らが江戸を守る。京は近藤さん、土方さんに任せよう。」
夜、宿にやってきた土方が琴に言った。「必ず会える日が来る。」と。
江戸に戻った清川は資金を得るため夜中に商家に押し入り大枚をせしめたが只三郎・中澤兄妹に斬り倒され一派は壊滅した。
琴たち徳川派は江戸を守る新徴組を設立し、昼夜を問わず奮闘した。
天狗党事件など幕府から追われていた相楽総三は薩摩邸に匿われ、鹿児島から送られてくる西郷吉之助(隆盛)の指示に煽られ配下達に火付や暴行を指示していたがそれも露見し新徴組を預かる米沢藩は薩摩邸を急襲した。琴に斬られじ重傷を負った相楽は妻の命乞いで一命を取り留めた。
そうして、戊辰戦争の幕が切って落とされた。
戦いに敗れた新選組が引き上げてきて琴は土方と再開した。土方は夢を語った。
「北の大地で牛や馬を育て、琴を迎えに来る。」
江戸城は無血開城され、琴は故郷の利根村に戻ったが土方が参戦している箱館戦争は終わらない。
琴は再び旅立った。蝦夷には凶暴な獣達が牙を剥いている。
文字数 48,753
最終更新日 2024.04.04
登録日 2024.04.04
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