その世界は「ラグア」と呼ばれた。近年、大陸の北方に勢力を盛大に伸ばしつつあった大国サーディアは、黒獣(こくじゅう)と呼ばれる魔物から力を貰った者たちが、その先陣を斬り活躍していた。戦火は東西に及び、彼らはかつて人類を蹂躙した北の果ての大山脈の向こう側にいる者たちへの、復讐の機会を図ろうとしていた。
文字数 42,679
最終更新日 2022.06.14
登録日 2021.12.07
その世界には魔法が掛かっていた。何かひとつ願う。もし、その願いと同じことを誰かが望んでいる時、その願望は叶えられるという魔法だ。今よりもっと世界が柔らかく、可変的である時代、人の意識によって世界は変えられ易かった。
一人の少年がいた。彼は魔法によって姿を変えられていた。彼の住む大陸では魔法は禁忌だった。あまりに人の願望が叶えられ易く、悉く人を不幸に陥れる行為だったからである。彼は、故郷を飛び出し、魔法とは何かを知る旅に出る。
※ ※ ※
この物語はまだ完成していません。第七章まで載せて頂こうと思います。このお話は「破滅の町」に続く三作目の長編ですが、「破滅の町」に現れる魔物の、起源及びその正体について迫ろうとする目的がありました。
あのお話を書いていく間は、その世界の背景に切り込むことはできませんでした。ですが「エントランスホール」執筆時に思ったより早くその背景が明確に判ってきたので、「破滅の町」を書き直す際も、逆に輸入する形でその世界観を入れ込んであります。
なお、この作品はまだ未完成なので、二通りの姿に変わる可能性があります。そして完成するのは何年も先の予定です。さらに、ここに載せていただく分は、「破滅の町」のその後の展開も含み、前作品のネタバラシがありますので、申し訳ありませんが、留意をお願いいたします。
文字数 127,536
最終更新日 2022.02.22
登録日 2021.12.29
その町は滅びた街の上にあった。黄金都市と呼ばれたその街で、三百年前自滅の戦争が行われたのである。人々は、その街を隠さなければならなくなった。
かつて十五人の子供たちは、そこで秘密の探険を繰り広げた。しかし、町の地下にはいまだに跋扈する彼らの先祖の霊のほかに、オグという、人間の悪意の集合したいにしえの魔物がいた。
二十二歳の女性ルイーズ=イアリオは、十五人の子供たちの一人だった。彼女はいまだ地下に閉じ込められている膨大な死者たちのために、ひとりで彼らを供養することを思いつく。その墓参りの途中、彼女は膨大な数の光の霊と出会う。「この町は滅びる。滅びなければいけない。」彼女はそう告げられる。
文字数 903,176
最終更新日 2021.12.07
登録日 2020.12.01
女の子はキャンバスに絵の具をぶちまけた。白い画面から色がはみ出た。女の子はそれからそのまま画布の上に押し当てた絵筆を縦横に走らせて色を混ぜどんどん何かを描いていった。
文字数 2,027
最終更新日 2021.01.10
登録日 2021.01.10
朝野夕子(あさの・ゆうこ)は、ゲームをしていた。カチャカチャと鳴るボタンの音だけが、狭い部屋に響いている。
夕子は自分には分別があると思っていた。とりあえず普通のことは分かる。普通でないことは何なのかよく分かる。彼女は放課後の図書館からの帰り、不思議な森を見つけ、森に入る。そこで木のうろを覗き込み、あやまって中に落ちてしまった。
文字数 16,699
最終更新日 2020.11.28
登録日 2020.11.28
小さな男の子が汽車に乗ってお婆ちゃん家へ行くまでを、絵本の原作のように書いています。一行が一ページ分の文章です。
文字数 410
最終更新日 2020.11.28
登録日 2020.11.28
これは「物語は、はじまりと終わりのあるもの」と考えて、意味のわからないような言葉、音韻をつなげて、物語らしきものを表現した実験作です。短いです。
文字数 280
最終更新日 2020.11.28
登録日 2020.11.28
鬼である彼は、邪な心を胸に抱いていた。だが何のことはない、多くの人間を犠牲にする可能性はなく、自分の腹に、穴を空けようとしていたのだ。
文字数 1,896
最終更新日 2020.11.28
登録日 2020.11.28
「仮面には人間の魂が宿っている」という学校できいた噂を確かめるべく、丑三つ時に少年は厠隣の農具小屋にやってきた。
※参考作品 「はてしない物語」ミヒャエル・エンデ著
文字数 11,790
最終更新日 2020.11.25
登録日 2020.11.25
忘却の橋、という名前の橋脚があった。人はその橋を越えると何でも忘れられるということだった。希望の事を忘れられる。例えば、別れた恋人の事や、大きな事故に遭った事、とてつもない哀しい事や、暴力を揮われた事である。
文字数 2,350
最終更新日 2020.11.25
登録日 2020.11.25
私たち兄弟は、巨人を巡る旅をしてきたのだが、まるで、その旅は途中で巨人自身に遮られた恰好で終いになった。
先の冒険の続きで、終幕との間に位置するお話です。
文字数 6,266
最終更新日 2020.11.19
登録日 2020.11.19
私たち兄弟は、二人して巨人を探した。装備はいたって簡素なもので、決して彼らを殺しに行くという出立ちではない。
「巨人の話」及び「巨人の話2」とはパラレルのお話になります。哲学的な雰囲気が強いかもしれません。
文字数 7,298
最終更新日 2020.11.19
登録日 2020.11.19
西空に赤焼けた雲がある。その下に、手を広げて、大きな蜘蛛が陣取っている。すると、馬が走ってきてその蜘蛛を一刀両断、真っ二つにして駆けていった。非常に胸のすくシーンだったが、すぐにそこに訪れた空虚が、決して快感をだけ残したのではないことを示した。
文字数 1,371
最終更新日 2020.11.12
登録日 2020.11.12
それは虫なのだが、私は「妖精霊」とその虫を呼称した。ある青年に不可思議な体験をもたらした、何にでも変わる、妖精らしい、霊的な存在を、私はこの稿に収めた。
文字数 17,218
最終更新日 2020.11.10
登録日 2020.11.10
根本的に、薬とは、何かを直す薬品ではない。それは循環を高め、生物に、その毒の存在を知らしめるために使われる。
文字数 1,364
最終更新日 2020.11.02
登録日 2020.11.02