空夜 喜雨

空夜 喜雨

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人生において、必要なものは金である。 人の縁よりも先に必要である。どんなに自分が頑張っても、お金は消えていく。 金がないことに諦めて、天井を見上げれば家賃の催促の電話で我に帰らされる。最低限の生活でも、消えてくんだ。 「あたたかいご飯を食べて、ゆっくりお風呂にはいって、少し重めの布団で寝ればいいさ。疲れた心は癒さないとね。」 バイト先。 住宅街のすみにある、小さなカフェ。 穏やかな笑顔で彼は何度も繰り返してた。 そんなことできるのは、今じゃ贅沢なのに。 お金に疲れ諦めた元大学生と小さなカフェの店主が出会う、なにかを抱えた人たち。 疲れた体を、心を。 諦めた明日を、認められたかった今日を。 「穏やかな夜になりますように」 抱えたなにかを、少しだけ。 ほんの少しだけ置いていけるカフェで起こる小さな出来事。
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文字数 12,407 最終更新日 2024.10.12 登録日 2024.09.23
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