100円ショップ業界で最大手のダイソーを猛追するセリア。そのセリアでは毎月500~700アイテムの新商品を投入しているが、商品開発部はたった9名だという。どのようにして開発体制を維持しているのだろうか。セリアの広報部に聞いた。
帝国データバンクの試算によると、100円ショップの国内市場規模は2023年度、前年度比約5%増の1兆200億円前後となり、初めて1兆円を超えたという。2013年度の市場規模から10年で約1.5倍に成長、店舗数も同10年で約1.5倍の約8900店に増えている。
長いデフレから脱却し、ここ数年で急速にインフレが進みつつなか、消費者の財布は固くなり、節約志向が高まっている。100円ショップでは、生活必需品や日用雑貨といった消費財の購入額が増えている。
100円ショップ業界では、大半の商品が海外で生産されているが、原材料費やエネルギーコストの高騰、円安のあおりを受けて、100円ではコストを吸収しきれなくなっており、価格帯を広げる動きが強まっている。最大手のダイソーでは300円、500円、1000円の商品を増やしているほか、「THREEPPY」「Standard Products」といった別ブランドを立ち上げ、高価格帯商品専門の店舗にも注力している。
そんななか、業界で唯一、100円均一を堅持しているのがセリアだ。セリアは常時2万8000点の商品を取り扱い、毎月500~700アイテムの新商品を投入しているという。セリアの商品は女性客を中心に人気が高く、SNS上で話題になることも多い。驚くべきは、セリアの商品部はたった9名で構成されているという点だ。どのような体制で、商品開発を行っているのだろうか。セリアの広報に直接、聞いた。
――毎月500~700アイテムの新商品を投入していらっしゃるなか、商品部はたった9名とのことですが、どのようにしてこれだけ多くの新商品を発売できるのでしょうか。
「弊社の取引先は約150社ございますが、弊社商品部の役割は主に、データ分析に基づき、どの取引先とその商品を開発するか決めることです。そしてその取引先と共同して商品を開発するというように、各社の役割分担を明確にすることで、9名で業務をこなしております」(株式会社セリア経営企画室)
――開発にかかる手間や昨今の原材料費やエネルギーコストの上昇を考慮すると、100円路線を堅持するのは困難が伴うと思いますが、どのようにして低価格を維持しているのでしょうか。
「新商品の投入と同時に売れ筋、市場動向を見ながら、ニーズの少ない商品の廃止や品揃えの構成変更をしております。また、例えばコストのかかる大きなお皿を、デザイン性の高い小さいお皿にするなど、付加価値を付けながら、100円でできるものに仕様変更しております」(同)
物価高が続くなかでは、100円均一を貫くセリアの存在感は増していくだろう。アイテム数では約8万点を取り扱うダイソーには及ばないものの、「付加価値の高い商品・実用性の高い商品」を基調とした商品開発で、根強いファンを獲得している。また、近年はアウトドア商品も展開したことで男性客も増加傾向にある。
2024年3月期決算短信によると、売上高は前期比5.1%増の2232億200万円で過去最高を更新。営業利益は同2.1%の151億2100万円、経常利益は同1.9%減の153億1500万円、当期純利益は同4.2%減の98億2300万円。売上が増加した一方、純利益が減少したことで、売上高営業利益率は前年の7.3%から5ポイントダウンしたが、小売業としては決して低い利益率ではない。
また、直営既存店売上高を見てみると、上期こそ前年比減だったものの、昨年11月以降は100%を超えて推移し、最終的に前期比101%を記録。円安や原材料費の高騰で原価率は上昇したものの、販管費は減少したことで売上高営業利益率は6.8%だった。
「セリア」はイタリア語で「真面目な」という意味。ブランドプロミスは「Color the days – 日常を彩る。」 HPによると、「お客様の心に触れ、お客様の日常を彩るコトやモノとの出会いを、とことんまじめに追求すること」を約束するものとしている。愚直に「100円」を貫くセリアが、今後も成長し続けていけるのか、注目したい。
(文=Business Journal編集部)