ワークマン「ユニクロの半額」宣言→すでに半額以下だった…あえて宣言の思惑

価格だけではなく機能性などでも対抗できるのか

 ユニクロの半額にする、という発言は単なるリップサービスや大風呂敷を広げたわけではなく、実現性は高いといえるわけだ。ただ、機能性やデザイン性などでユニクロに対抗できるのだろうか。

「先ほど例に出したスウェットシャツで見ると、ユニクロは綿100%、ワークマンは綿95%・ポリエステル5%といった具合で成分が違いますし、目付(織物や編地の単位当たりの重量)や生産拠点なども異なるので、厳密には比較しにくいですが、仮にワークマンがユニクロと同じ商品をつくった場合に、半額以下にするというのは難しいでしょう」(同)

 では、ワークマンはある程度、用途が近い商品において、ユニクロの半額にすることで、戦っていこうという戦略とみることができるだろうか。

「ワークマンは固定客を獲得する、という面で苦戦しています。ワークマンの決算を見ると、表向きは前年比増を実現しています。しかし、売上高が前年より伸びている理由は、新規出店分が上乗せされたものです。ワークマンは昨年度33店舗増やし、2024年3月末で国内に1011店舗となりましたが、ワークマンの既存店(401店舗)の売上高は前年比98.2%でした。WORKMAN Plus(135店舗)は同96.6%、ワークマン女子(25店舗)は同88.9%となっており、いずれも前年比をクリアしていません。

 さらに、ワークマンをWORKMAN Plusに全面改装すると1年目は前年比114.5%ですが、2年目は同96%にまで落ちるというデータがあります。部分改装した店舗でも、1年目は同108.2%、2年目は同97.9%に落ち込んでいます。しかも、これらは新規出店の数字には含まれていないので、純粋にワークマンの既存店で見た場合に、売上を維持することに苦慮している様子がうかがえます。

 それらを考慮してみると、来期ワークマンが計画している新規出店は47店舗で、同じように来期の決算上の売上高は前年比増を達成すると考えられますが、今後、新規出店が止まったときにどうなるのかという懸念は、ワークマンも持っているはずです。

 ワークマンは来期末で1056店舗となる予定で、ユニクロの国内807店舗よりは多いものの、しまむらの1415店舗には及びません。ワークマンの中長期計画を見ると1500店舗ほどまで増やすことを見込んでいるようですが、実際にどこまで増やせるのか、新規出店で売上を伸ばせなくなったときに既存店の改革に着手できるのか、といったところが今後のワークマンの課題になってくると思います」(同)

既存店の売上が伸びない理由

 既存店の売上が伸びない理由としては、どのようなことが考えられるだろうか。

「ひとつにはフランチャイズ(FC)運営が挙げられます。直営店が多いユニクロやしまむらより運営が難しいのは間違いないでしょう。FCビジネスは衣料品チェーンよりもコンビニエンスストアなどのほうがマネジメントには長けているはずなので、そういった他業種からノウハウを学ぶなど、全国の加盟店などと協力して運営を変えていく必要はあるでしょう。

 ユニクロはかつてはFC店も多くありましたが、現在は10店舗しかありません。残りの797店舗は直営です。しかしワークマンは94%ほどがFC店で、割合は長らく変わっていません。つまり、FCビジネスは今後も続けていくと考えられるので、その運営になんらかのメスを入れていかないと苦戦する可能性はあります」(同)

 固定客を獲得するためには、現在の体制のままではなく、なんらかの改革をしなければならないということだ。また、大ヒット商品の欠如も要因として挙げられる。

「ワークマンは作業服がライダーたちに受け入れられたり、ワークマン女子がアウトドアで重宝されたり、業態が注目されがちですが、商品が常に注目されるようにならないと固定客はつきにくいと思います。過去には、妊婦用の『滑らない靴』などヒットした商品もあるのですが、コンスタントにヒット商品をだしていかないと世間に注目されるようにならないのではないでしょうか」(同)

 ユニクロに宣戦布告するかのような発言が注目され、その翌日には株価が上昇する効果が見られたが、そもそもユニクロより安いと認識されているワークマンが、“ユニクロよりコスパがよい”との評価で、世間から注目されるようになるのか、しばらく動向を注視したい。

(文=Business Journal編集部、協力=磯部孝/ファッションビジネス・コンサルタント)