![](https://biz-journal.jp/wp-content/uploads/2024/07/post_382203_marugameseimen.jpg)
他大学でも同様のケースはみられるのか。
「国立大学の医学・理工系学部では、いまだに教授の権限が強いため、追い出し部屋がつくられている可能性は高いです。北大の件は氷山の一角とみるべきでしょう。私立大学でも、名古屋女子大学の教授や職員が『教職員研修室』という名の追い出し部屋配属となり、解雇される事例もありました。配属された教職員はいずれも、名古屋女子大学教職員組合に参加した教職員です。
このうち、副委員長の教授は教職員研修室配属となり、漢字検定の過去問を解くなどの『学長特命プログラム』への参加を命じられました。その後、教授から助手に降格、さらに事情をブログに書くと名誉棄損を理由に解雇されました。元教授は不当解雇だとして訴訟を起こし、14年に1審で勝訴(解雇無効)。16年に最高裁は大学側の上告申し立てを受け付けず、判決が確定しました」
また、大学関係者はいう。
「法改正によって2004年度から国立大学が法人化され、国から各大学へ渡される国立大学法人運営費交付金等はトレンドとしては右肩下がり。文科省は大学運営全般の費用という意味合いが強い運営費交付金を抑える一方、研究者から応募してきた内容を審査して支給する科研費や補助金を増やすことで、“より質の高い研究をする大学により手厚く資金を充てる”という大学間の競争を促す方針を示している。こうした大きな背景のなかで、財政的に余裕がない大学側に人員削減などのリストラ圧力がかかり、“お金にならない研究”と判断した研究室や研究者を極力減らそうとし、その歪みが今回の北大のような事例を生んでいる。民間企業では辞めさせたい社員を閑職に追いやるという手法が存在するが、北大もまさに同じ感覚でこうした行為をやっているのでは」
ここ数年、北大は不祥事に揺れている。19年、北大の総長選考会議は名和豊春総長(当時)による部下への威圧的な言動など不適切な行為が確認されたとして、文部科学相に名和氏の解任を申し出。20年に文科省は名和氏を解任したが、名和氏は事実誤認と解任の手続きの違法性を主張して、国と大学に処分の取り消しと賠償を求めて提訴。今年3月に札幌地裁は名和氏の訴えを退ける判決を言い渡したが、名和氏は17年から自身の総長室や総長車に隠しマイクが設置されて盗聴されるなど組織的な工作を受けていたと主張している(21年5月20日付「デイリー新潮」記事より)。
また、昨年には北大の創成研究機構・化学反応創成研究拠点(ICReDD)の教授の研究グループが米科学誌に発表した論文を含む計4本の論文に、データの捏造や改ざんが合計836件確認されたと発表。論文が取り下げられるという事案が起きた。
「北大はノーベル化学賞受賞者を輩出しましたが、その後、経営をめぐり不祥事が続いています。背景には財政難があり、それがさまざまな不祥事につながっています。今回の追い出し部屋についても同様です」(石渡氏)
現在、化学部門の准教授に対する行為の理由について北大に問い合わせ中であり、返答があり次第、追記する。
(文=Business Journal編集部、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)