世界初ドラゴンボールのテーマパーク、なぜ日本ではなくサウジアラビアで開業

ドラゴンボールのテーマパーク
公開されたテーマパークのイメージ図(東映アニメーション公式サイトより)

 東映アニメーションが漫画『ドラゴンボール』のテーマパークをサウジアラビアに建設すると発表し、大きな話題になっている。だが、なぜサウジなのか。そこに勝算はあるのか。日本や他の国にも第2弾、第3弾を建設する可能性はあるのか。専門家とともに考察する。

 東映アニメは3月22日、漫画やアニメで世界的な人気を誇る『ドラゴンボール』のテーマパークをサウジに建設すると発表。同作品のテーマパークは世界初で、サウジの投資会社Qiddiya Investment Companyが進めるプロジェクトの一環として建設するという。

 開園の日時などは公表されていないが、テーマパークは敷地面積50万平方メートル(東京ドーム10個分)を超える広さになる。7つのエリアによって構成され、アトラクションの数は計30以上に上る。さらに、ランドマークとして物語の中心となる「神龍」が置かれる。パーク中央に全高約70mの神龍が鎮座し、その内部を大型ジェットコースターが通る予定だという。

 ドラゴンボールの世界観にどっぷりと入り込めるテーマパークとなる構想で、ファンにとっては、すでに必ず訪れてみたいという思いに駆られるところだろう。

 その一方で、なぜ日本ではなくサウジなのかと訝しがられる方も多いのではないだろうか。テーマパーク経営に詳しい明治大学経営学部兼任講師の中島恵氏は、次のように分析する。

「サウジアラビアは石油立国です。石油埋蔵量世界2位で世界最大級の石油輸出国ですが、反対に石油以外の産業が乏しいのが現状です。そのため、例えば世界のエネルギーがシェールガスなどに取って代わられれば、たちまち国家の危機になります。そこで、石油に代わる国家収益の柱として、観光・コンテンツでの収益を目指しているのです。

 サウジは王様の権力が強く、鶴の一声で政治的決定が行われることが多い国ですが、王様と皇太子は親日家で有名です。特に首相でもあるムハンマド・ビン・サルマーン皇太子は日本アニメのファンであることを公言しています」

 つまり、サウジが観光立国を目指すうえで、主要コンテンツのひとつとして日本の人気アニメである『ドラゴンボール』に白羽の矢を立てたのは、ある意味で必然ともいえるわけだ。

「サウジでは日本のアニメを教育に活用するなど、日本のアニメを高く評価しています。また、サウジ国民の80%以上がアニメを見たことがあるとの調査もあるほど、中東でも最大のアニメ視聴国といえます」

 サウジが日本のアニメで観光客を呼び込むためのテーマパークを設立する狙いはわかったが、どれほどの集客が見込めるのだろうか。

「報道によると、サウジでは新しく60万人規模の都市をつくる計画が進んでおり、その中にドラゴンボールのテーマパークをつくるようです。テーマパークとしては年間100万人の来場者があればすごいことですが、計画通り60万人規模の都市がつくられれば、200万人の来場者も見込めると思います」

 サウジで成功を収めた暁には、日本への“逆輸入”や、ドラゴンボール人気の高い中国でもドラゴンボールのテーマパークがつくられる可能性はあるだろうか。

「中国ではバブル経済が崩壊の兆しがあるので、現状では難しいと思います。仮に経済が持ち直すようであれば、可能性は十分あるでしょう。むしろ、東南アジアのほうが可能性は高いかもしれません。マレーシアやベトナム、タイ、インドネシアなどはテーマパーク建設の候補に頻繁に出ているようです。

 一方、日本ではディズニーリゾートとユニバーサルスタジオジャパン(USJ)が強すぎるので、ドラゴンボール単体のテーマパークは太刀打ちできないのではないでしょうか。2016年から2017年にUSJのなかでドラゴンボールのアトラクションが設置されたことがありますが、それと同様に、既存のテーマパークの一アトラクションとして、しかも期間限定であれば採算が取れるのではないかと思います」

『ドラゴンボール』の原作者である鳥山明氏が今年3月1日に逝去されたことで、同氏の作品の数々にあらためて脚光が当たっている。特に同作は世界的に人気が高く、熱狂的なファンも多い。テーマパークが世界中から多くの観光客を集める存在となれば、日本でも建設を求める声は強くなるだろう。サウジでの動向から目が離せない。

(文=Business Journal編集部、協力=中島恵/明治大学兼任講師)