インターネット上で、トヨタ自動車内で使用されているカレンダーが大きな話題になっている。そのカレンダーを見ると、多くの日本人は違和感を持つだろう。なぜなら、国民の祝日が一切載っていないからだ。
5月初旬のゴールデンウィーク、8月のお盆、年末年始の年間3回の長期休暇はあるものの、ほかは土日以外に休みがない。つまり、本来は年間16日あるはずの国民の休日がなくなっているのだ。
これがネットの掲示板に掲載されると、「年3回しか連休が取れないのはおかしい」「人間性を奪う」「祝日を全部潰されるとかブラックすぎる」など、トヨタカレンダーの異常性を指摘する声が相次いだ。
また、「トヨタの関連会社や下請けもこのカレンダーに合わせて仕事をしている」「愛知県内の会社は、トヨタ関連でなくても合わせている」「地元の地域行事や学校行事もトヨタに合わせている」といった声も上がっている。
トヨタ自動車の元社員は、トヨタカレンダーは古くからあるとして、そのカレンダーの意義を次のように説明する。
「トヨタの社是ともいえる“無駄のない生産”が根底にあると思います。工場の機械を動かしたり止めたりするのは意外と大変です。一度動かしたら動かし続ける、止める際は長期間止める、というほうが効率が良いのです。また、月の生産量の調整もしやすくなります。そこで、祝日には休まず、年3回の長期休暇を導入しているのだと思います」
トヨタ本体のみならず、関連会社や下請け会社もトヨタカレンダーに合わせているのは事実なのだろうか。
「下請けは少なくとも1次、2次くらいはトヨタカレンダーに合わせないと、部品を納入させてもらえなくなるはず。5次、6次などと進んだ先の下請けになると不明ですが」
地元の行事や学校行事もトヨタに合わせるという話はどうか。
「地域行事などを一私企業の予定に合わせるというのは、おおやけにはやらないと思いますが、市民の多くが参加しやすいと思われる日に行事を開催するということはあり得るでしょう。すると、結果的にトヨタカレンダーに合わせたかたちになるのかもしれません」
一般的には、国民の祝日等にくっつけるかたちで有給休暇を取得すれば、4連休、5連休を取りやすいが、トヨタカレンダーでは複数の休暇を取得しなければならない。また、家族が祝日に休みの場合、一緒に出掛けるなど家族の予定が組みにくいというケースも考えられる。祝日にも操業を止めないことで、効率の良い生産ができるとしても、就業員の立場からすると、デメリットが多いのではないだろうか。
「実は若い人や、地方から期間工として働きに出てきている人にしてみると、ゴールデンウィーク、盆、年末年始に休暇がまとまっていることで、帰省や旅行に行きやすいといったメリットがあります。また、事務職や営業職など、工場勤務の従業員以外は、祝日に有給休暇を取る傾向があるように思います。取引先などが祝日に休んでいるケースも多く、休暇を取っても影響が少ないからです」
普通のカレンダー通りに休みを取っている人にしてみれば、極めて奇異に見えるトヨタ独自のカレンダーだが、経営的なメリットだけではなく、従業員にとってもデメリットばかりではないというわけだ。
(文=Business Journal編集部)