なぜ今、コオロギをごり押し?ゴキブリはダメ?食料危機の救世主となるのか

「コオロギは繁殖力があり雑食だから選ばれるのでしょうね」(50代男性、群馬県在住、狩猟家)

 コオロギは雑食性であるため、世界中で発生しているフードロスを餌として活用することも可能だ。つまり、コオロギは持続可能な社会に必要となる”サーキュラーフード”といえる。

 しかし、コオロギ含めた昆虫食に不満を持つ人の意見として、「いずれもっとヤバイものを食べさせられるのではないか」という、漠然とした未来への不安がある。

「昆虫食を推進したら、いずれゴキブリやハエにいきつくのではないか。実際に、気がついたらハエの幼虫をマゴットなんてオシャレな名前で呼んでますし」(前出狩猟家)

 昆虫食の「コオロギが良くてゴキブリがダメ」という線引きは難しいところだが、衛生面・生産時の安全性やアレルギー商品表示に関する綿密なガイドラインの策定が必要だろう。

 昆虫ビジネス研究開発プラットホームは、去年7月より「コオロギの食品および飼料原料としての利用におたける安全確保のための生産ガイドライン」を取りまとめ、「コオロギの種類や生産施設・設備などの定義」「生産者が守るべき注意事項」「生産管理のマニュアルや衛生・安全管理の策定基準」を取り決めしている。

 特に懸念されている衛生面に関しては、以下のように規定している。

「生産施設及び生産設備を清潔に保ち、生産物、生産者及び消費者に健康被害を与えない衛生状態を維持すること。病害虫又は病原微生物の発生を未然に防ぐために、生産者や訪問者の入室前の消毒を徹底すること。入退室記録を残すことにより、病害虫又は病原微生物の発生時の原因究明に資する体制を整備するとともに、徹底した再発防止を図ること。病害虫又は病原微生物や臭気の発生を抑制するため、コオロギの飼育環境はできる限り低湿度を維持することが望ましい。衛生管理のために薬剤を使用する場合は、関連する法令等を遵守し、当該製品を通常使用する上での指示に従うこと」

 徳島県の給食も、あくまで「自由な試食」だったが、義務化するのではなく「一つの食材の選択肢として消費者に選ばせる」なら、メリットも多いだろう。すでに複数の企業がコオロギ市場に参画しているが、コオロギが食料危機の救世主となる魅力的な食材になる可能性も否めないだろう。
(文=深月ユリア/ジャーナリスト:外部執筆者)