京セラの賭け、1.3兆円投資の勝算…同社のセラミック技術の重要度が世界で高まる

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京セラのHPより

 京セラは、今後、最先端の半導体関連や電子部品の生産能力増強のため1.3兆円程度を投じるという。具体的には、半導体の製造装置に用いられるセラミック部品や電子部品に使われるセラミックのパッケージなどの設備投資に最大9000億円、関連する研究開発に4000億円を投じる予定だ。

 背景にはいくつかの要因がある。一つの要因として、世界の半導体産業の構図の急速な変化は大きい。世界各国にとって、戦略物資としての半導体の重要性は一段と高まっている。それに加えて、台湾、特に台湾積体電路製造(TSMC)に集中してきた最新、最先端の半導体製造能力が日本、米国、さらには欧州などへ加速度的に分散し始めた。世界全体で高速通信システムの利用などデジタル化も加速するだろう。それに伴い、半導体関連部材などとしての超高純度のセラミック需要は増えると予想される。

 京セラは、そうした変化に対応し、稼ぎ頭である半導体関連部品事業の成長力をさらに高めようとしている。今後、設備投資計画がさらに積み増される可能性もある。同社がどのようにより多くの資金を調達し、成長期待の高い分野に再配分するか、多くの注目が集まろうとしている。

セラミック製造技術の向上による業績拡大

 2023年3月期の上期、京セラの連結決算は増収増益だった。それを支えている要素の一つは、セラミック製造技術だ。売上高は前年同期の876,337百万円から1,012,172百万円に15.5%増加した。営業利益は前年同期比1.1%増の76,488百万円だった。事業セグメント別の利益は、産業や車載用部品、半導体関連部品を手掛けるコアコンポーネント事業の利益が同65.6%増加した。特に、半導体関連の利益は同96.2%と大きく伸びた。一方、コンデンサなどを生産する電子部品の増益率は16.9%、機械工具やドキュメントソリューション、スマホ・携帯電話端末などから構成されるソリューション事業は前年同期の実績を下回った。

 京セラの成長力の源泉(コアコンピタンス)は、より微細なセラミックというモノ(素材)を生み出すことにある。例えば、半導体の分野ではロジック半導体の回路の線幅をより小さくする微細化の競争が激化している。現在、世界トップのファウンドリであるTSMCは回路線幅4ナノメートル(ナノは10億分の1)の半導体の生産体制を確立し、3ナノ、さらに次世代のチップ生産にも取り組んでいる。そうしたより微細なチップ製造のために、より細やか、かつ不純物が混ざっていない素材の供給は欠かせない。京セラはセラミックの製造技術を強化し、TSMCなど世界の半導体メーカーや日米欧などの半導体製造装置メーカーなどの高い要求にこたえ、収益を獲得した。

 新しい半導体の供給によって、高性能のスマホなど新しい最終製品も生み出される。その結果として、京セラが生産するコンデンサなどのより形の大きな電子部品の需要も獲得されるという好循環が浮かび上がる。半導体関連の分野での収益増加ペースの高さは、より純度の高い、かつ、より微細な製造技術の求められる半導体関連の部材分野における、京セラの世界的な競争力の高さを示している。メモリ半導体を中心に汎用型の(旧世代の製造ラインを用いて生産される)半導体の市況は軟化している。そうした不安定感高まる事業環境にあっても、京セラはセラミック製造技術を強みに業績拡大を実現した。

投資を積み増す京セラの勝算

 2024年3月期から2026年3月期の3年間で、京セラは設備投資額を8,000~9,000億円程度、研究開発費3,000~4,000億円程度を積み増す方針だ。それは、2022年11月25日に行われたIR説明会(Kyocera IR Day)の資料に明記された。また、京セラは配当金額の積み増しやM&A、自社株買いなども強化する方針を示した。一連の投資や株主への価値還元の強化の原資は、今後創出されると予想される営業キャッシュフローとKDDI株を担保にした資金調達によってカバーされる。