では、墓じまいした後はどういった供養の仕方になるのか。
「近年お墓の種類は多様になってきており、自宅から比較的近い場所に建て直す方や、継承者の必要がない永代供養を選択される方も増えてきています。また、墓石の代わりに樹木を墓標とする樹木葬や、納骨堂を利用するという選択肢もあります。ほかには都市部に限られますが、ビルの中に搬送式の納骨堂があり、受付でブース番号をアナウンスされた後、そのブース内でお参りするという形式のものもあります」(同)
どのような形で供養したいのか、さらに納める遺骨の数によっても選択肢はさまざまだという。ではそれぞれ供養の仕方は、現在どのぐらいの割合で選択されているのだろうか。
「弊社の調査によると、2018年頃までは全体の50%弱の方が墓石を立てる一般墓を選んでいましたが、ここ3年で一般墓の割合は25%程度で定着しています。代わりに樹木葬を選ぶ方が増えており、今では全体の40~45%を占めています。あとは、納骨堂が20~25%ほどで、樹木葬と納骨堂を合わせると60%強といったところでしょうか。直近では永代供養の認知度も上がってきている印象ですが、まだ急激に増えてきているということはありません」(同)
では最後に、リモート墓参りのような新しい供養の形が今後普及していくのか、また供養の仕方がどのように変化していくのかについて伺おう。
「最近はメタバース空間でお墓参りをするというサービスもあるようですが、確かにこれだけネット社会になってきている現状を考えれば、そういった新しい供養の形が生まれるのもわかります。とはいえ、供養は弔うという気持ちの部分が大きいものですから、そういったメタバースでのお墓参りが急激に普及するということはないと思われます。
今年弊社で葬儀に関する調査を実施したところ、今までは家族・親族をはじめ友人・知人、地域の方、職場の方など幅広い関係性の方が参列する一般葬が主流だったのですが、現在はコロナ禍ということもあり主に家族・親族、近親者などが参列する家族葬が最も多いという結果になりました。ただ、この調査内でコロナ禍でなかったらどういった葬儀を希望していたかという質問があったのですが、本当は一般葬を望んでいたという回答が一番多かったんです。ですから、お亡くなりになられた方をしっかり弔って供養したいというお気持ちは、今も変わらずあり続けているのだと実感しました」(同)
墓じまいを検討する人々の背景には、コロナ禍といった突発的な問題よりも、少子高齢化などの社会背景の影響が大きいようだ。しかし、今後供養の形が緩やかに変化していくことはあっても、逝去した方をきちんと弔いたいと思う気持ちは不変的なものなのではないだろうか。
(文=A4studio)