「Slackをパソコンで使う」は古い感覚?20代は圧倒的にスマホで見る派が多い現実

「Zoom」は無料プラン縮小で失速する?

日影 世代の話からは横道にそれますが、コロナ禍が始まった2020年に大きく伸びたアプリに「Zoom」があります。現在、Slackも画面でミーティングを共有できますし、Zoomとは機能的に差がなくなってきていますね。また、ウェブ会議サービスのZoomに比べ、テキストのコミュニケーションはSlackに一日の長があります。

――テキストでのやり取りはナレッジが蓄積されていき、動画と違って後から検索することもできますからね。Zoomはテレワークが普及した2020年に席巻しましたが、無料プランの時間制限が始まり、今後は失墜も懸念されますね。「Microsoft Teams」や「Google Meet」などもありますし。

30~40代は子育て関連アプリが台頭

日影 世代別の話に戻ると、10代はzenly、20代はSlackと「友達、仲間、同僚とつながるアプリ」を紹介してきました。30~40代になると、ライフステージが変化する方も多く、「家族とつながる」アプリの比率が上がってきます。30代ユーザーの比率が高い「家族アルバム みてね」は家族間を想定した写真共有アプリです。お孫さんの写真をおじいちゃん、おばあちゃんと共有するため、30代の父母が利用するという使われ方ですね。

――「孫の写真見たさ」は、高齢層にスマホ技術を習得させる大きなモチベーションになっていますよね。

日影 続いて、40代ユーザーの比率が高いのは「Nintendo みまもり Switch」です。任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」と連動して、各種使用制御をかけるアプリです。「家族アルバム みてね」で写真を共有していた子どもが大きくなり、Switchで遊ぶようになって……という時間の流れが想像できますね。

――そして、その子どもが年頃になり、zenlyで友達とつながるようになり……と、アプリは生活や人生に密着していますね。

50代は「イトーヨーカドー」「WAON」が上位に

日影 50代になると、子どもが手を離れることもあってか「買い物系」「電子マネー」「ポイントカード系」の利用率が他の世代より目立ちますね。「イトーヨーカドーアプリ」「WAONアプリ」などがトップ10に入っています。

 今の50代はデジタルネイティブ世代ではないので、「それまでオフラインで使っていたものがアプリに切り替わる」形で使われていることがわかります。現金が電子マネーに、ポイントカードや紙のクーポンがお店のアプリに切り替わる、という流れですね。

――中高年以降になると、それまで染みついた生活様式もあり、抜本的に新しいものを入れるというよりは、今までアナログであったものが電子化するという、いわば「枝葉」の変化になりがちなのでしょうね。

日影 最後は60代以上ですが、ニュースアプリが目立ちますね。「NHK ニュース・防災」「dmenuニュース」などがトップ10にランクインしています。これも、紙の新聞がアプリに置き換わったという感覚ですね。

 前編では10~20代女性に人気の中国系ECアプリ「SHEIN(シーイン)」について触れましたが、こうして世代別に見ていくと、10~20代のデジタルネイティブ世代と中高年の非デジタルネイティブ世代では、ネットの使い方や購買行動に明確な差があることがわかります。

――DX(デジタルトランスフォーメーション)は今までの仕組みを単にデジタルに置き換えるだけでは意味がなく、デジタルを活用し仕組みから抜本的により良いものにしていく、というのが理念ですが、世代別に見ると、年齢が上になるほど「旧来の仕組みを電子化しただけ」のアプリが並びましたね。それでも便利にはなっているのでしょうけれど、変化としては小さいですよね。ユーザーの意識ひとつとっても、アプリの世界に変化をもたらすのは、やはり若年層なのかなと思える結果でした。

日影 この違いは、今後デジタルネイティブ世代の台頭によって、より鮮明になっていくのかもしれませんね。