堂本光一が語る「才能がなくても輝く人」の特徴

堂本光一
堂本光一さんが後輩たちの活躍に見る、「アイドルのバカ力」とは?(写真:東宝演劇部)
1997年、堂本剛さんとのデュオ「KinKi Kids」として『硝子の少年』でCDデビュー以降、多くの記録を打ち立ててきた堂本光一さん。昨年末には、「2025年夏頃にグループ名を改名する」と発表し、世間を驚かせました。
 
個人でも、昨年は自身が脚本・演出を手がけた主演ミュージカル『Endless SHOCK』で演劇界の大記録を樹立し(※)、24年間の歴史に幕を下ろしました。2025年はさまざまな意味で“新幕”の年となります。
 
アイドルとして長年のキャリアを積んできた光一さんが改めて考える、「アイドル」とはどのような存在なのでしょうか。
 
月刊誌『日経エンタテインメント!』で連載中のコラム「エンタテイナーの条件」がまとめられた2巻同時発売の書籍『エンタテイナーの条件3』より一部抜粋、編集のうえ、お届けします。
 
※日本演劇における代役なし単独主演記録。通算回数は2128回。
 

(本文は、2021年5月時点の内容となります)

才能に恵まれなくても人を輝かせるもの

NEWSの加藤シゲアキが文学賞(吉川英治文学新人賞)を取ったそうですね。今年は他にも後輩が名誉ある賞を受賞し、注目していただいているようです。それを受けて今月のテーマは「アイドルのバカ力」ですか。

確かに、うちの事務所に入ってくる子の多くは何者でもない少年で、入所してから潜在能力を引き出してもらいました。その秘訣は何かと言われると正直、はっきりしたことは分からないけれど、僕がこの世界でやってきて思うことは多少あるので、今回はそれをお話しします。

いきなり夢を壊すことを言うようですが、努力は必ずしも本人の望む結果を連れてくるわけではありません。ただ、努力は決して無駄にはならない。それは自信を持って言えます。

例えば――やっぱりそれぞれ、持って生まれた才能に差があるのは事実だと思います。いわゆる向き/不向き。加えて、小さいときどんな作品に触れたか、どんな経験をしたかなど、育ってきた環境というのも大きい。もともとの天才が環境にも恵まれ、さらに人の何倍も努力したなら、それは誰も太刀打ちできない、追い付けない。そういう人も世の中にはいます。

だけど、それに当てはまらない人を輝かせるもの、それが“努力”です。周りのいろんな人たちを見てきて思うことですが、例えばダンスにしても、与えられた課題に対しすぐコツをつかんでクリアできる子もいれば、一生懸命やってもすご~く時間のかかる子もいる。

これを短絡的に見れば、前者は「才能ある子」、後者は「才能ない子」とされてしまうわけですが、時間をかけて練習し、何とかできるようになった子というのが後々、味わいのある魅力的なダンサーになったりする。あるいはそういう歩み方をしてきた人にしか表現できないものが見つかったり。長い目で見ないと分からないことが山ほどあるんです。

無茶振りで養われる集中力

「これだけやってるのに芽が出ない」「こんなに頑張ってるのにライバルに勝てない」――そういうふうに思っているうちは、僕に言わせればまだまだ。努力は人と比べたり測ったりできるものではありません。

もし必死で努力することを苦に思うなら、努力の仕方を間違えているのかも。「これでダメならもう、仕方ねえよな!」と思えるぐらいまでやらないと。本当に頑張れば、おのずとそういう気持ちになってきます。

集中することで引き出される力があるとすれば、うちの事務所の場合、特にジュニアのころは、とにかく無茶振りをされることが関係しているかもしれません。

経験の浅い子が、本番まであと何日とか、もっと言えばあと何時間しかないとか、信じられないような短時間で「ここまで形にしなきゃいけない」というのは日常茶飯事。やりたい/やりたくないはお構いなし。その無理難題に何が何でも対応することで、集中力が養われていきます。