
料理雑誌などを手掛ける出版社「オレンジページ」は、3月10日、同社ホームページに性的な広告が表示されていたことに対して、公式X上で謝罪文を投稿した。
SNS上では、「誠実だ」「よい対応」「これからも安心して利用できそう」といった賞賛の声が飛び交っている。
同じく料理レシピサイト「クラシル」でも同様のことが起こっており、運営会社のdelyは3月12日、公式サイトに事象の説明とともに、「該当広告の掲載停止を要請するとともに、より厳格な審査体制の確立と再発防止策の強化を求めております」と対応策を発表した。
両者ともに、迅速かつ的確な対応により炎上は免れ、むしろ好意的な評価を得ることができた。
どうして意図しない不適切な広告が表示されてしまうのだろうか。さらに、今回の対応が賞賛を集めたのはなぜだろうか。
インターネットの広告は、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアの広告、あるいは屋外広告や交通広告とは、運用の仕組みが大きく異なっている。
“アナログメディア”の広告では、掲載する広告が適正なものかを審査する“考査”が行われる。その基準はメディアによって異なるが、人の目のチェックが入っている点が共通している。もちろん、アナログメディアでも不適切な表現の広告が出稿され、炎上が起きることはあるが、人的な要因による。
”デジタルメディア“、つまりインターネットの広告の運用方法は多種多様だ。アナログメディアと同じような運用方式を取ることも多いが、最近では「アドネットワーク」が活用されることが多い。このたびの不適切広告の表示は、delyのサイトでも説明された通り、このアドネットワークによって生じたトラブルである。
アドネットワークとは、複数のインターネットサイトを束ねて、広告主(広告を出す企業や団体)が出稿(掲載)したい広告素材を各サイトに配信する仕組みのことだ。
このシステムの特徴は、工程の多くが自動化されており、それによってコスト削減と作業時間の短縮を図ることが可能になる点である。
メディアによってユーザー層も異なるし、表示してもよい広告の基準も異なる。そうした広告配信の最適化も、アルゴリズムによって自動化されている。
しかしながら、どうしてもそこに「抜け道」ができてしまい、不適切な広告が配信されてしまうという事態が起きてしまう。
対応を強化しても、悪質な広告主はそれをすり抜けるやり方を取ってくるため、不適切な広告を完全に排除することが難しくなってしまうのだ。
また、SNSには「不適切広告は、普段エロを検索しているからアルゴリズムで出てくる」「エロ検索しているのが悪い」といった意見も見られる。
メディアの特性だけでなく、ユーザーのコンテンツや広告への過去のアクセス履歴、検索履歴に基づいて広告の表示が最適化されているというのは確かにある。
ただ、現在の広告表示のアルゴリズムは複雑で、過去の履歴にかかわらず、不適切な広告が表示されることは十分に起こりうる。
いずれにしても、
いまや、インターネット広告費は、マスメディア4媒体(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)の広告費を合わせたものよりも大きくなっている。