"管理職にはNGな人"見抜く4つの「パワハラ特性」

「パワハラ上長」は相手に与える影響が認識できないという(写真:metamorworks/PIXTA)
パワーハラスメントが行なわれる背景には、個人に共通のある特徴や、職場の構造があると、神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授の津野香奈美氏は指摘しますが、具体的にどのような性格特性の上長がパワハラをしやすいのでしょうか。
 
パワハラが起こるメカニズムの研究をしてきた津野氏が、パワハラを防ぐ方法、パワハラおよびパワハラ上長に対して会社として講ずべき対策などを、前後編の2回にわたって解説します。(前編記事はこちら
 
※本稿は『企業実務』12月号のインタビュー記事を再構成したものです。
 

パワハラをしやすい上長の性格特性とは

──パワハラ行為者になりやすい上長の特徴はありますか。

さまざまな性格特性のなかでも特に邪悪とされる「ダークトライアド」を持つ上長は、最もハラスメント(図表)のリスク要因になりやすいと言われています。

(出所:『企業実務』12月号より)

※外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

ダークトライアドとは、マキャベリアニズム(マキャベリ主義)、サイコパシー(精神病質)、ナルシシズム(自己愛性傾向)からなる三つ組の性格特性のことです。

これらの特性は、いずれも共感性の欠如、他者の苦しみへの無理解、冷淡さ、罪悪感のなさ、自己中心性といった共通の特徴を備えています。

──いかにもパワハラをしやすそうな特性ですね……。

実際に、私がパワハラ上長の方と面談をしていても感じるのですが、自分の言動が相手に対してどのような影響を与えるのかということを認識できていません。

「あなたからそう言われた部下は、どのように感じると思いますか」と尋ねても、あまりピンときていないのです。

パワハラ上長には「部下を成長させている」という自負があると語る津野氏

また、社会的には自分の言動は駄目だということになっているが、部下を成長させているのは自分だという自負がある。だからこそ、戦略的に自らの言動を認識・直面化させないと自覚や改善は促せないと思っています。

また、物事を自己流にしか理解しない、自分の考えを言語化して周囲に伝えたり、相談したりしようとしないのも、パワハラ行為者に多く見られる特徴です。

そうした特徴のある上長は、「部下はこういう風に考えているはずだ」と、本人に直接尋ねることなく自分のなかだけで思い込み、その思い込みに基づいて指示を出します。

そして、自分のなかにある正解に合致した行動を部下が取らないと、パワハラ行為に及んでしまいがちです。

自分の考えや求めていることを、明確に言語化して他者に伝えようとしない人は、パワハラ行為者に多く見られます。

これに関しては、行為者が男性の場合は少なからず男性性も影響しています。「男なら人に相談せずに自分で解決すべき」とか「自分の弱さを認めたくない」といった気持ちも関係していると思われます。

上長によるパワハラを防ぐには

──パワハラを防ぐには、どのような方法がありますか。

管理職への登用時に、パワハラ特性の有無を確認するのが一手です。

少なくとも明らかな有害性がないかどうかは確認すべきです。この有害性には、主に4つあると考えています。

1つ目は、「嗜虐性(しぎゃくせい)」です。人をいじめて楽しむタイプ。これはもう絶対に管理職にしてはなりません。過去にそのような行為をした人は、極めて高確率でパワハラ上長になります。

2つ目は、「良心や共感性の欠如」です。相手が辛そうにしているから、いまはこれを言うのはやめようといった配慮ができるかどうかです。過去の言動からして、相手の痛みがわからなそうな人や、共感性に大きく欠ける人を管理職にするのは避けるべきでしょう。