
ソニーグループの株価が上場来高値を更新し続けている。2000年3月につけた3390円(分割調整後ベース)を昨年12月に上回った後、2月13日に公表した2025年3月期第3四半期決算を受けて、直近は3800円前後で推移している。
株価上昇には2つの理由がある。1つは足元の業績が投資家の期待を上回ったことだ。とくに業績の柱であるゲーム事業の好調が好感されている。
ゲーム事業には、計画していた大型タイトルが予定どおりに発売できなかったり、発売したゲームの売れ行きが想定を下回ったりと課題が多かった。そこで2023年秋以降は、十時裕樹社長が自らソニー・インタラクティブエンタテインメントで大ナタを振るい、人員や拠点の削減、組織体制の見直しなどの立て直しを進めてきた。
今2025年3月期はそうした経営改善の効果が表れ、ゲーム事業は前年同期と比べて売上高が約8%、営業利益は約30%それぞれ改善を見込む。好調を牽引しているのは有料会員サービスの「プレイステーションプラス(PSプラス)」だ。
3つあるPSプラスの会員プランの中で、月額料金がより高いプランへの移行が進んでいるという。昨年11月からは月額1550円の最上位プラン加入者向けに、新しいサービスも開始した。
据え置き型ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」には、画面とコントローラを一体にした「プレイステーションポータル(PSポータル)」という周辺機器がある。これは本来自宅にあるPS5とネットワーク経由で接続し、PS5にインストールしたゲームをリモートで遊ぶための機器だ。
ところが、ソニーは昨年11月に「クラウドストリーミング」という新しい機能のベータ版を公開。これはソニーが管理するクラウドサーバーにPSポータルを直接接続して、ゲームを遊べるようになるというもの。この機能が進化すればゲームコンソールを自宅に置かなくても、ネット経由でゲームをプレイできるようになる。
PSポータルは北米を中心に売り上げを伸ばしており、この新たなクラウドサービスはゲーマーの間で広く支持を集めているという。こうした施策が奏功し、高額プランへの加入者が増えてゲーム事業の利益率は大幅に改善した。
来2026年3月期には、ソニーが傘下のスタジオと開発を手がける大型タイトルのほか、サードパーティーの大人気シリーズ「グランド・セフト・オート」の新作発売が控えている。こうしたことも踏まえて、ゲーム事業の業績がさらによくなると見込んだ投資家がソニーの株を買っている。
株価上昇のもう1つの要因は、ソニーが1月29日に公表した経営陣交代への期待感だ。現在は社長でCOO(最高執行責任者)とCFO(最高財務責任者)を兼務する十時氏が、4月に社長CEOに就任。現CEOの吉田憲一郎氏は代表権のある会長職となる。
「順当すぎるほど順当」(ソニー関係者)という人事だが、トップ交代の背後で大幅な変更があったのが、グループの屋台骨ともいえる事業会社2社の経営体制変更だ。
半導体事業会社のソニーセミコンダクタソリューションズでは、2020年6月から社長CEOを務めてきた清水照士氏が会長となり、モバイル事業を手がけてきた指田慎二副社長が昇格する。ゲーム事業のソニー・インタラクティブエンタテインメントでは、共同CEOだった西野秀明氏が社長CEOとなる。十時氏は同社の会長職から退任する。