
2025年もまだ序盤だが、すでに今年のゲーム・オブ・ザ・イヤー候補になるのではと噂されている作品がある。それが2月に発売された『キングダムカム・デリバランス II』だ。
前作は800万本以上も売り上げたヒット作品で、新作となる『キングダムカム・デリバランス II』も発売初日の24時間で100万本、発売から12日で200万本を突破。かなり勢いがあるゲームといえよう。
レビュー集積サイト「Metacritic」による評価は100点88点(記事執筆時点)と高評価で、評価も売り上げも伴っている。なぜここまで注目されているのかといえば、本作がファンタジーではないリアルすぎる中世ヨーロッパRPGだからだ。
『キングダムカム・デリバランス II』を開発したのはチェコのゲーム開発会社「Warhorse Studios」だ。ジャンルとしてはオープンワールドRPGで、本連載でも過去に取り上げた『The Elder Scrolls V: Skyrim』が近いといえる。
舞台は15世紀のボヘミア(現在のチェコにあたる)で、主人公は鍛冶屋の息子の「ヘンリー」。彼は故郷の村を焼かれ、それをきっかけに貴族の従者となる。ヘンリーはさまざまな任務をこなしつつ、両親の敵を討つための冒険を繰り広げていく。
物語としては復讐を中心に据えた英雄譚で、プレイヤーにはさまざまな選択肢が用意されている。ひとつの問題を解決するにしても話術でうまく乗り切ることもあれば、あるいは暴力や金で解決することもできる。そして、とった行動に応じたスキルが成長していく。
オープンワールドRPGだけあって、冒険の舞台はかなり広め。どのような形で世界を巡っていくかは自由だし、サブクエストもたくさんあるので好きなものを触って、気に入らないものは無視してもよいだろう。ただし、メインストーリーが強いタイプの作品で、冒険の大筋は変わらない。
この手のRPGはファンタジー要素、つまり魔法の概念があったりドラゴンが出てきたりしがちだが、本シリーズにそういうものは一切ない。当然ながら手から炎が出ることもないし、現実離れした恐ろしいモンスターも登場しない。リアリティを重視した中世ヨーロッパRPGなのだ。
そして、このリアリティに対するこだわりがとにかく異常といえる。
筆者が『キングダムカム・デリバランス II』をプレイしてまず驚いたのは、鎧の装着方法に対してうるさいことだった。
通常のRPGであれば兜・鎧などをそのまま装備すればいいものの、本作はそんなフィクションらしいことはさせてくれない。兜をかぶる前には頭巾をつける必要があり、胸防具の下にはギャンベゾンというパッド入りシャツを着なければならず、脚防具をつける前にはホーズというインナーを装着しなければならないのだ。
当然ながら15世紀なので明かりは松明やろうそく頼りであり、屋内はかなり暗い。調理場にはネズミがうろちょろしており、道には馬車の車輪の跡が残っており、馬の落とし物もたくさん落ちている。